幼い少女の冒険譚15【怪物の足】
「ふっ、はぁぁぁぁぁぁっ!!」
「……!」
火花を散らしながら激しい攻防を繰り広げるギルドマスターは、渾身の一撃を何度も披露していた。
幾度となる全力の攻撃に滝のように汗を流すギルドマスターは、くだらねぇと自分の疲労に舌打ちをする。
「俺が目を覚まさせてやる! それがこの街のギルドマスターの仕事だからなぁ、歯ぁぁ食いしばれ若造ぉぉぉ! 行くぞッ! はぁぁぁぁぁぁぁっ!!! インパクトォォォクエイクゥゥゥァッ!!」
「……!」
体を詰り後方に構えた大剣を真上に振り上げた後、ギルドマスターの気迫と地精霊を纏った斬撃は地面を貫き、ゴォォォォッ! と真っ直ぐにマインの元へ向かっていく。
とてつもない威力が地面を抉っていく中、マインは紫紺の短剣を空高く投げ、体勢を低くした。
「何をする気だ」
「………………」
奇妙な動きに動揺するギルドマスターを置き去りに、マインは右腕を深々と引く。
「……! ギルドマスター逃げてくださいっ!!!」
「な、なんだ嬢ちゃん! って、聞いてる場合じゃねぇなぁ?」
「ふぅぅぅぅ――」
息を吐き、目の前に来る攻撃をマインは、右手の拳一つで受け止めようとしていた。
「ギルドマスター! マインのカウンター技です! 早くこっちに!!!」
「くそ、嬢ちゃんはあっちに逃げろ! 俺はコイツで受け止める!!」
そう言って大剣を輝かせたギルドマスターは、早く行けぇ! と不安な顔を浮かべるリナに向け、まかせろと親指を立てる。
刹那――
到達した攻撃に対しマインは、全力で拳を突き出す。
全ての力をそこに収束させるかのように。
拮抗する――
「くっ、ぐあぁぁぁぁぁぁッ!!!」
「な、なんだあの化け物みてぇな威力……。まさか倍、いや数十倍にして返す技か……」
目の前で放たれる眩い光が視界を奪う中、ギルドマスターは大剣を深く地面に突きつけ、腰を深く折りながら構える。
耐えれるかの問題じゃねぇ、耐えねぇと後ろの街ごと吹き飛ぶなこりゃ、と冷や汗を流しながら、遠くにいる住民の笑顔を思い浮かべ、更に力を入れる。
「ぐ、ぐぁぁぁぁぁぁッッ!!!」
マインの叫びは逃げるリナにも届いていた。
聞きたくない好きな人の悲痛の叫びにリナは逃げない。
「私に出来ることなんてこれくらいしかない!!」
バックから取り出した緑の玉を至る所に投げるリナは、汗を流しながら必死にアイテムを放り続ける。
「誰も……死なせない!!」
回復の霧、緩衝の霧、防御力向上の霧、その他もろもろ命を助ける事の出来そうなアイテムをこれでもかとばかりに消費する。
これでも私だって役にたつんだから!
と次のアイテムをとバックに手を突っ込んだ、
直後だった――
「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッッ!!!!!!!」
「……!」
「お前、何をしてやが――」
それはリナ、そしてギルドマスターが絶句する程の異様な光景だった。
スパンッ!
そんな音と共に切り降ろされたのは、先程まで突き出していたマインの右腕。
大量の血を流すマインは、ゆっくりと立ち上がり、全ての攻撃を溜めた右腕と、地面に突き刺さった紫紺の短剣を足で蹴り上げ、腰に着けた鞘に戻す。
「ごめんなさい――」
眩く輝く右腕は今すぐにでも暴発してしまいそうな勢いを放っている。
そんな危険物を片手にそう呟いたマインの目に光は戻っており、そして、冒険者としの熱い光も戻っていた。
「待て! お前何をする気だ!」
意識を取り戻したのか! と大剣を引き抜いたギルドマスターは、マインに近づこうとするが、マインは優しく微笑みながらそれを拒んだ。
「ギルドマスター……。ごめんなさい。リナとエデン、街の人の事……よろしくお願いします――」
「お前、まっ――」
そんなギルドマスターの声を最後にマインは、今も空を飛ぶガンドレアクの元へ、その赤く変色した怪物の足で跳躍をし――
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