幼い少女の冒険譚11【マインドシハイ】
次話で10万文字突破予定です!!!
轟音が鳴り響く街の前、魔法班は全力で詠唱を行っていた――
「魔法台出来上がりました!」
「分かりました! では水魔法を得意とする冒険者はこの魔法台にお願いします!!」
魔法台――
それは大砲と原理は似ており、ある程度の魔法を蓄積させ一気に放つことの出来るアイテムだ。しかしこれを作るのにはサンモルと呼ばれる魔法陣を作り上げ、魔力に対する適性を上げなければならない為、相当な時間を要する。
「エンドレスウォーター!!」
「アイスファイア!!!」
「ウインドウォーター!!!」
複数の魔道士が魔法台に魔法を放つ中、リナは右耳に着けたイヤリングを気にしていた。
「マイン……頑張って…………!」
随時聞こえる冒険者達の悲鳴とマインの声に苦い表情を浮かべるリナは、もう少しで魔法を撃てるからとただ手を組み祈ることしか出来ない。
「魔法台準備出来ました!!! リナさん指示を剣士班に!」
「はい!」
よし! と喜んだリナはイヤリングに手を当て、マインに向かって魔法台の準備が完了したことを伝える。
「マイン! 準備出来たから! そこから離れ――」
その直後だった。
ドゴォォォォォォォンッッ!!
鳴り響いた音はガンドレアクの最大とも言える攻撃。
「流星落とし……?」
今までガンドレアクによって潰された街はみんなその技でやられてきた。
超巨大岩石を得意の強風と掛け合わせた魔法――
エンドドロップ――
「リナさん! 剣士班は!!」
「っ!」
はっと、指揮官の声に意識を戻したリナは、直ぐにイヤリングに手を当て、マイン! マイン! と声をかけるが、ザザザとノイズの走った音しか聞こえない。
「嘘……でしょ…………?」
あまりにも絶望すぎる状況にリナは膝から崩れ落ちた――
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「くっ……そぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
『ガァァァァァァァッッ!!!』
気づけばマインの体はボロボロになっていた。
「マインさん!!」
「ダメだ! みんな逃げろ! 魔法が撃たれれば少しは変わるはずだから!!」
一人でずっと対峙していたマインは後方への攻撃まで受けきり、みんなを守っていたのだが、いよいよ鎧の限界も迎え、インナーを血で赤く染めた。
「くっそリナから貰ったポーションもきれちまった……」
それは緑色の液体をした敏捷性を上げるポーション。
ガバガバと飲んでいたつけが周り、リナから貰ったアイテムは閃光玉含め全て枯渇した。
愛剣と紫紺の短剣二本となったマインに出来ることはもうあれしか残っていなかった。
「マインドリンクをここで使うか……」
『ガァァァァァッッッッッッッ!!!』
失敗すれば怒りを買う可能性もある己のスキルに悩んだマインは、剣を両手に構え、飛んでくる岩石を両剣で受け止め、すかさず切り払う。
もう既に腕力の限界を迎えているマインに迷っている暇はなかった。
「くっそ、一か八かだ!!! マインドリンクッッ!!!!」
『ガァァァァァ!?!?』
エデンの時同様紫色の光をあびせたマインは、頼む! と手に力を込める。
『ガァァァ! ガァァァ!! ガァァァァァァァァァァァァァァァァッッッッッッッ!!!!』
「おいおい! まさかいけるのか!!」
悶え苦しみ体躯を揺らすガンドレアクは、光を払うように空高くまで飛び上がる。
「マインさん! 大体の冒険者は他のところに移しました! マインさんも早く!!」
ギルド長の息子である大柄な男冒険者がマインに声掛けをするが、それどころじゃ……! と少しづつ言うことの聞かなくなっていく手に力を込める。
「くっそ……負けられねぇんだよ!!!!!」
『ガァァァァァァァァァァァァッ!!!!!』
そしてしばらくして、ガンドレアクは何事も無かったように暴れるのを辞めた――
「嘘だろ……?」
紫色の光も消え、それはマインドを支配した事を表すものだった。
「マインさん? これは一体……!」
すぅと降りてきたガンドレアクは、さっきのは嘘のようにマインの前にゆらゆらとただ浮いている。
そんな異様な光景に唖然とするギルド長の息子は、よく分からないけどやりましたね! とマインの方を向いて笑いかける。
「あ、ああ! やった、やったぞ!!」
俺がやったんだ! と笑ったマインは目の前のガンドレアクを見て再度安堵し、目を瞑ったその時だった。
グシャ――
「がはっ………………………」
直後口から血を溢れさせたギルド長の息子の首は、体から切り離された、
紫紺の短剣の一閃によって――
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