幼い少女の冒険譚5【エンシェントゾンビのカコ】
いやリンの回想なっが!!!
ごめんなさい……。ちょっと楽しくて……つい………。もう少し続きますが、面白い筈なので……。
僕は人を殺す為に生まれたモンスター。
『グボォォ……』
何処で生まれ、どうやって生まれたのかも分からないただのモンスター。
だから今日もこの森を彷徨う――
『グボォォォォ』
森は深く、毎日同じ景色が目まぐるしく僕の視界を襲う。
そんな僕は今日、初めて水面を見つけた。
『グボォォ……?』
ゆらゆらと揺れる一匹のモンスターが写っている。これが僕か。
『グボォォォォ』
なんとも言えない歪な石で出来た体に、顔も何処か怒っているように見える不細工な僕。
つけもしないため息を吐いた僕は水面を後にする。
『グボォ?』
そしてしばらくした所で、聞いたことも無い声を聞いた。
「本当にこんな所にモンスターなんているの?」
「うむ。わからん!!」
「はぁ……」
反射的に茂みに隠れた僕は初めての生物に警戒をした。
『グボォォォォ』
それと同時に心が疼く。
ニンゲンヲコロセ――
自分とは違う意識が僕を襲う。
『グボォォォォ…………!!』
苦しい、こんな気持ちは初めてだ。
『グボォォォォッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!』
「い……!! ほ、ほらいたじゃねぇか!」
「あんなの勝てっこないわよー!!」
直後僕は茂みから飛び出し、初めて見るニンゲン? に向かって咆哮をあびせた。
「ま、待て! 俺の力はここでしか試せないんだっ!!!」
「ちょ、本気で言ってるの!?!?」
「あたりめぇだぁぁ! マインドリンクッッッ!!!」
『グボォ!?!?』
それは一人のニンゲンによるものだとすぐに分かった。怪しい紫色の光を手から発したニンゲンはやったか! と笑みを浮かべる。
が、僕の心は止まらない――
『グボォォォォッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!』
「嘘だろ!?」
「本当にやばいってぇぇ!」
一瞬沈みかけた意識を取り戻した僕は、ガムシャラに手を振るう。
右手を地面へ、左手を近くにあった大木へ、ドスンドスンと地ならしを鳴らす僕を見て戦いたのか、ニンゲンはこれはもうダメだ! と走り出す。
ニガサナイ――
本能で走り出した僕は、涙目の一人のニンゲンに狙いを定めた。
「ちょ、やめ――」
「リナァァァァッッッ!!」
髪の長いそのニンゲンはぺたりとその場に座り込みいよいよ涙を流す、その姿を見て激昂した髪の短いニンゲンはくそがぁぁ!! とこちらに飛びかかってくる。
『グボォォッッッ!!!』
知らない僕が冷徹な声で告げる。
コロセ――
無我夢中で上にあげた右腕を振り下ろそうとした時、僕が、僕自身が考え、一瞬腕を止めた。
『グボ……』
なぜそんなことをしてしまったのかは分からない。ただ僕は話せる相手が欲しかっただけなのかもしれない、一人はとても寂しいから――
直後、
「マインドリンクッッッッッッッッッ!!!」
固まった僕は大量の紫の光を浴びせられ、簡単に意識を手放した――
「ツギウマレルトキハ――」
お読み下さりありがとうございます!!
次回【エンシェントゾンビ】が……。




