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幼い少女の冒険譚4

メリークリスマスです!


 グシャ――


 そんな音がランの耳に響き渡った。


「嘘……でしょ…………」


 【エンシェントゾンビ】の攻撃により舞い上がった土埃のせいで視界が霞む中、ランは枯れた細い声を絞り出す。


「リ……リン?」


 痛む体を無視し、ランはゆらりと立ち上がる。

 足が痛い、殴られた右腕が痛い、岩壁に強打した背中が痛い、それでも、


 失う痛みは何よりも痛かった。


 自分の命よりも大切と声を大にして言えるランにとって、それは死ぬよりも辛いことだった。


『グボォォォォッッッ!!』

「……だまれ」

『グボォ!?』


 すかさず襲ってきた【エンシェントゾンビ】の顔面に浴びせた無数の水刃は、ランの血を代償に乱舞する。

 手からは当然とばかりに大量の血が溢れ出し、ランはだらりと腕を下ろす。

 魔力が無い魔道士の成れの果てだ。


「リン……」


 魔力の代わりに体を代償にしたランは、魔道士失格ねと苦笑いを浮かべる。

 そんな事もうどうでもいいけど、とフラフラする意識を無理やり起こしながら一歩一歩リンに近づいたランは、思わず足を止めた。


「――え?」


 土埃が晴れ始めランの視界が元に戻り始めた時、その奇妙な姿を見てしまったからだ。


『ボクハ……モウダレモキズツケタク……ナイ』

「どういう……ことなの…………」


 それは衝撃で気絶してしまった大切な(リン)を守る【エンシェントゾンビ】の姿――


『ボクハ……ニンゲンガ…………スキ……ダカラ』


 そう言って粉々に砕け散った左腕を捨てた【エンシェントゾンビ】は、ニゲマスヨと、リンを右腕で抱え走り出す。

 

「ちょっと……て、考えてる場合じゃないか……」

『グボォォォォッッッッッッ!!』

『グボォォォォッッッ!!!』

 

 背後から襲ってくる【エンシェントゾンビ】から距離をとるように跳躍したランは、リンを抱える【エンシェントゾンビ】を追った。



~~~~~~~~~~~~~~~~~


『モウダイジョウブ?』

「ありがとう……もう痛みは消えたわ……」


 クリスタルに包まれた小さな部屋に隠れたランは、謎の【エンシェントゾンビ】に治療をしてもらった。


『ゴメンネ……ボクノセイデ……』

「いや、大丈夫よ……。こうしてリンが生きているのもあなたのおかげだし、もちろん私もね」

『ゴメンネ……アリガトウ』


 カタコトの言葉を発する【エンシェントゾンビ】は、深く頭を下げる。

 リンはというと大きな怪我はないもののまだ気絶しており、今はランの膝で横になっている。


「で、あなたは一体何者なの?」

『………………………………』


 人間を助けるモンスター、ましてや話せるモンスターなんて聞いたこともない。と、核心に触れた質問をしたランに対し、少しの間黙りこくった【エンシェントゾンビ】は、ジツハ……。とポツリポツリと話を始めた――


お読み下さりありがとうございます!!

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