魔技
「ごめんなさい、ごめんなさい……」
「もういい。早く俺達の家から出ていけ、お前はもういらないんだよ」
「……っ!」
ナナミ、歳にして十六。
ご飯も別で、寝る場所も別。家族との絆なんて一切なかった。
「ごめんねナナミ。うちに魔法使いは必要ないの……」
「……ごめんなさい」
丁度誕生日を迎えた今日、ナナミは冒険者になるための素質を身につけていた。
特殊魔技 魔剣創造。
それは家族柄剣しか握って来なかったナナミに、終止符を打つものだった。
「はぁ、お姉ちゃんはもう中層まで進んでるのに、アンタはやっと冒険者になったのね、ほんと弱い、やっとなれたと思ったら破壊の技とか……使え無さすぎ」
テリラ十五歳。
彼女もまたサリラの後を追うように冒険者になっていた。
「ほんとアンタって出来損ない、それでも同じ家族なのかしら」
「……っ!」
そんな攻撃的な発言も許す両親が憎かった。
剣王と剣姫。
この二人の肩書きのせいで魔法使いとして目を生やしたナナミの将来は、曲がること無く真っ直ぐと暗闇へ沈んで行った――
【――魔剣製造
剣を壊し魔力の剣に変える。一振りで灰になる。この所有者による通常の剣の攻撃は半分以下の火力になる。】
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その後ナナミは、宛もなく彷徨った――
「あ……あぁ…………」
何も持たずに彷徨い続けて一週間。
たまに通る馬車に声をかける勇気すらわかなかった。
もう全てがどうでもよかった。何もかも無くなればいいと思った。
死にたいと簡単に思えた――
「私……何のために産まれたんだろう……」
正路を外れた足場の悪い山道を歩きながら、自分がいつ何をして、自分が何をしてきたのか考えた。
「何も……してないや……何も…………」
悪い事良い事。どちらもしていない空っぽな人生だった。
まだ五歳の時はご飯もみんなと同じものを食べていた。
それでもナナミは逃げた、隠れて、隠れて、隠れて、隠れ続けた。
「あ……1回だけ……1回だけあの子と遊んだんだっけな……」
それはタレ目の女の子、サリラ。
一度だけクローゼットに隠れているところを見つけられ、外に連れ出されたことがあった。
無垢な彼女はナナミにも優しく接し遊んでくれ、一瞬だけ友達になれた気がした。
それでも――
「私がその手を切ったんだ……」
家の近くにある森の中で遊んでいた時に、二人は山賊に襲われて一度命を失いかけている。
剣術などもちゃんと覚えている訳もなく、戦うすべもない二人は呆気なく捕まったのだが、
「あの時の傷……まだ痕残ってるかな……」
サリラの腕が軽々しく折られ荷袋に詰められそうになった時、ナナミは反射的に使ったのだ。
魔法を――
風を操るその暴走した魔法は空間を切り裂き、山賊の男達の腕を容易く切り払った。
その後は言うまでもなく逃げ出した二人だが、ナナミのその魔法は近くの木をも巻き込み、
「あの子の右手に落ちて……」
大木はベキベキとなぎ倒れ、尻もちをついていたサリラの右手を粉々にした。
あの時の叫び声は忘れられない。
タレ目から溢れ出る雫。遠くの方から聞こえる男たちの阿鼻叫喚。
「その時私は初めて」
笑ったんだっけ――




