ヤッタコトアルノ?
「3日……だと……?」
それは俺とリンの魔力回復にかかる時間、そして地上に帰還するまでの時間を現実的に表したものだった。
それに……。と顔を曇らせたルカは俯きながら口を開く、
「三階層で異常事態が発生してて……」
――異常事態。
それは第六エリアなどとは関係なく起きた出来事らしい。
内容としては至ってシンプル。異常に強化されたモンスターの出現、そして、大型モンスターの出没――
それを聞いてハッとしたミルクは、あの【ギフトビー】もそのせいだったのかも……と、左腕を押さえる。
「あの【ギフトビー】の強さは異常だったし間違いないね……それに、大型モンスターって中層でやっと出るくらいなんじゃ……」
異常事態にしても度が過ぎる、と怪訝な顔を浮かべるミルクに対し、ナナミは、だから私達が来たんだよー! と両手を上げる。
そんなナナミの言葉に反射的に誰もいない方向を向いた俺は、全力で叫ぶ。
「クソがッッッ!」
「ええ!?なんで!?」
「いや……なんでもない……」
三つ編みをはね上げるナナミに謝りながら俺は床に寝転がる。
いやだってさ!?コイツらがまさかの問題連れてくるフラグだったとは思わないじゃん?
【ガーデンインフィニット】がダンジョンにいる。つまりなんらかの問題がダンジョンで発生していると考えてもいい――
思いっきり巻き込みフラグじゃん!?
「ま、まぁ、あれだよな? ルカ達ならちゃちゃっと倒せるだろ? それに大型モンスターにだって会うかも分からないしさ!」
そう言って作り笑いを見せる俺に対しルカは、今のパーティで大型モンスターに会ったら五分五分かなぁ……。としなやかな指を顎に当てる。
やめろ! 嘘でもいいから大丈夫だよきゅるるん! とか言ってくれッッッ!
「ぷぷ……リクへっぽこ、ださい、こんな男でごめんなさいしないの? ほら早く、守ってくださいリン様っていいなよ……ぷぷ」
「てめ! ふざけんなって言いたいけど、そのドSっぷりも悪くないだろう!!」
「……リクくん気持ち悪い」
「その言葉はちょっとキツいっすミルク先輩……」
隣でクスクス笑うリンに食ってかかるも、謎の性癖に突き刺さり頬を蒸気させる俺に、ミルクはえぇ……と人をゴミのような目で見てくる。
その目も悪くねぇ!
「んてことで! 早く回復させる為にも、みんなでお食事回収クエストと行きましょう!」
「そうだね、リクさんとリンはここで待ってて? ミルクさんも休んでていいんだけど……」
「行きます! 私もちゃんとお手伝いします!」
「だよねぇ、じゃあ私とナナミとミルクさんで食べ物取ってくるから、待っててー」
そう言ってナナミの提案に槍を持って立ち上がったルカは、食料調達クエストと題してミルクと三人で部屋を後にした。
ダンジョンに食べ物なんてあるのだろうか……。
そんな素朴な疑問が浮かぶが、ここ数日まともにご飯を食べていないことを踏まえると、最早食べれればなんでもいいと思えてしまう……。
お腹を鳴らしたまま横たわる俺に、美味しいの取ってくるからね! と乳を揺らすミルクにニヤケながら手を振った俺は、キモッと蔑んでくるリンと共に、大人しく三人の帰りを待つことにした――
「リクは……ヤッたことあるの?」
「…………」
うん。大人しくは待てないね?




