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弓の力を信じた先に


「…………」


 俺は言葉を失っていた――


 ダンジョンというその恐ろしさ、性質、人知を超えるその力達に絶句した。

 この世界に五つあると言われているダンジョン。その中の二つは、俺が転移した先である大都市カーリディアにあるそうな。そしてここは西のダンジョン。第六エリアがある事からミルクは割り出せたらしい。


 西のダンジョン三階層第六エリア――


 それはどの冒険者でも想像がつかない領域。完全なる運の世界。

 ある者は宝石を大量に手に入れ喜び、ある者はいるはずのない(・・・・・・・)魔物に瞬殺された……と。

 何があるか分からないそこは上位冒険者ですら容易に近づかない場所。俺達はそんな所にいるらしい……。


 防具も武器もまともにない中――


 現在の持ち物はミルクの神具。それに【ギフトビー】のドロップアイテムである一角の針(ギフトニードル)のみ。一応武器として利用することは可能な為、俺が持つことにした。

 これで使い勝手の悪い二つの武器が揃ったが、防具の面に関してはガッカリするほど心もとなく、無防備に近い。というか無防備。

 それに、モンスターの出現は誰にも予想ができない、空間に突如としてあらわれる神秘とも取れるその出現は、冒険者皆が口を揃えて息を飲むという。


 背後で出現されて背中をやられたら一撃でアウト――


 特に今は前方以上に後方の警戒をしなければならない。という基本的な教訓を教えられた俺は、分かったと深く頷いた。


 そして最後に教えられたものは、


 生命の糸の存在――


 モンスターそれぞれのどこかにある命を繋ぐその糸を切れば、一撃で仕留められると教えてくれた。


「んで、これからどうすんだ……」


 第六エリアの恐ろしさを知った俺は恐る恐るミルクに尋ねる。


「まずは安地(セーフティエリア)を目指そう……」

安地(セーフティエリア)?」

 

 またまた初耳ですぞと首を傾げる俺に対し、ミルクは簡潔に説明した。


「絶対にモンスターに攻撃されない場所だよ」

「なんだその神エリア!」


 一階層事にある安地(セーフティエリア)は、冒険者が休憩をとるのに使うのだそうな。

 弱点としては、冒険者がその内側からモンスターを攻撃してしまった時、そこは安地(セーフティエリア)ではなくなり、その階層の安地(セーフティエリア)の場所が変わってしまうということだ。

 まぁ基本的に大人しくしている分には、攻撃もされないし、安心して休憩は取れるよとミルクは言葉を続ける。


「それに今は二階層に安地(セーフティエリア)を通って行けるから、中間ポイントとして使えるしね」

「なるほど……」


 そう言って早速ここを出ようと催促するミルクに対し、もう行かなくてはならないのかと顔を暗くする俺は、ガッツリ頭を抱える。

 それに対しミルクは、第六エリアを早く抜け出して第三エリアに行かないとさすがに危険すぎる、と現実を俺に叩きつけ、続くように顔を曇らせた。

 ちなみにエリアというのは、電卓板を思い出せば簡単に想像がつく。数字の数は階層事に違うが、三階層は一から六まであり、六と隣接している第三エリアか第五エリアに行かなくてはならないのだ。それに二階層への階段は第二エリアにあるため都合がいい。


 俺の心は曇り続ける――


「帰りてぇ……でも……」


 俺達は今絶望的状況、ただそれだけ。目的は生き延びること、絶望なんてしてる暇はない。どんな逆境でも前へ進まなくてはならない……どんなに辛くても……前に進まないと。


 俺は無理やり気持ちを高ぶらせ、こんな顔じゃダメだと頬を思いっきり叩く。

 それと同時に曇らせた顔を払拭させた俺は、ジンジンする頬を抑えながらミルクに明るく笑顔を見せた。


「よし、じゃあやってくれ! まずはミルクがここをぶっ壊さないとな!」


 覚悟を決めた俺はそう言って、期待してるからな! と再びミルクから距離を取る。

 そんな俺を見て触発されたのか、どことなく曇っていたミルクの顔も明るくなり、うん! と力強く頷いた後、その手に持つ黄金の弓を胸の前に構えた。


 このダンジョンに来てからもう何分たったのだろうか――

 一時間にもきっと満たないその時間に、俺は永遠の長さを感じた。


 まじで俺外に出られるのかな……。てか外に出たら、二度とこんな危険な目に遭わないように自由気ままに暮らしてやる……。


 そんなほのぼのライフへの願望を胸に、俺はミルクを見守ろうと振り返った直後、


 莫大な力によって広間(ルーム)が震えた――


「ウインドアローッッッ!!!!!」

「うぉぉぉぉぉぉぉお!?」

 

 前触れもなく矢を放ったミルクのワインレッドの髪は、風に身を任せるように舞い踊る。


 暴風矢――


 台風とも思わせるほどの強風と共に放った矢は、後方で離れている俺の元まで届く。


「いけぇぇぇぇっ!!!」


 真っ直ぐ細道(ロード)に向けて飛んでいく矢に向け俺は期待を胸に声を荒らげる。


 いいんだ! そのまま大量に積まれた岩石へと向かってくれ……っ!


 るわけもなく。


「やばいっ!!!」

「ぬぬぬぬ!?」

 

 ミルクの焦る声を残したまま矢はゆっくりと進行方向をねじ曲げ、細道(ロード)の左側に突き刺さり、壮大に崩壊させた。


「このヘタクソぉぉぉぉッッッ!」

「ごめんてぇぇぇ!!!」


 状況を悪化させたミルクに怒鳴り散らかした俺は、はよもう一回しなさいっ! と指示を出す。


「今度こそやってやるんだからっ! はぁぁぁっ! ――ファイヤーアローッッッ!」

「なんでそんな危険なやつ使うの!?」


 風だけにしとけばいいものの、炎矢を召喚したミルクは、渾身の威力で瓦礫に向かって放つ。


「よしっ! いける――」


 先程の矢よりも安定して飛んだように思えたその直後だった。


 ベチャッと現れたそれは(・・・)、スライムのような口をニヤリと歪め、笑った――


「オイルースライム!?」

「なんだそれっ!」


 矢の進行方向に現れたそんな火に弱そうな名前のモンスターに見事に火矢は当たり――




 豪炎と豪風を撒き散らしながら爆発した――

お読み下さりありがとうございますー!!



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