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勇者と魔王とゲームについて知った!

ゲームの中に入り、次の戦闘のために装備を整えようと鍛冶屋に移動しようとするミズにひとりの男が話しかけてきた。


「おい、そこのちびっ子」


このゲームは人が多いため、ミズは自分が呼ばれた事に気づかずにそのままスルーしてしまった。

だが男は諦めずにもう一度大きな声でミズを呼ぶ。


「おい!そこの青の髪のちび女!」


ミズは自分の事だと言う事に気付くが少し動きが止まる。

「えっ、何?」と思うミズに、男は少しずつ近寄っていく。

「やっと話せるなー」と男は思っていたが、ミズはありえない程のスピードで男の背後に回り込み、男に初期武器を向ける。


「私の事を青い髪と呼ぶな……次言ったら許さないよ」


ミズは至って冷静だったが、本当に人を殺しかねないまっすぐな声に男は少し身震いした。


「わ、分かったって!俺はそんな悪い奴でもないし、そんな事知らなかったんだよ!ただ聞きたい事と話したい事があるんだよ」


ミズは「えっ……」と固まり自分の行動を頭の中で思い出し、慌てて男に謝る。

「ごめんなさい!」とミズが謝ると、男はとても優しく「別にそのくらいじゃ怒らないよ」と言う。

正直、この男の身長はそんなに高くはない。

だいたい170cmくらいであり、顔も普通。

だが、いくつかおかしい所があった。

まず1つは武器や防具が圧倒的に強そう、確実にここにいるレベル帯の装備ではないし、強いて言うならミクより強そうな武器だ。

そして2つ目は、さっきから周りの人達がこちらを見ている。

ミズがさっきやった暗殺術は確かに、他の人が見たら驚くが身長のおかげでバレる事はない。

つまり彼らはこの男に注目しているということだ。

ミズは少し恐怖心を覚えながら男に聞く。


「あなたは誰なんですか?」


男はあまり答えたくなさそうにしぶしぶ答える。


「あんましここで名乗ったら暗殺者とかでるから嫌なんだけど、まぁいいか。俺はクルフリードっていう名前でこの大陸の王だよ」

「えっ?王……?」



この展開はよく王道であるけど……

私に取り柄なんて……

あっ……今日たしかツイートしたわ。

このゲームを始めてこの大陸にいて、今ここにいますよって。

SNSって偉大だなー、100万回の搭のおかげでもあるな!

私、このまま幹部になっちゃたりして……それは最高すぎる。


ミズの考えはあっていると言えばあっている。

でも間違っていると言えば間違っている。

なぜならこのゲームは基本王道っぽいが、このゲームの趣旨は趣味である。

この意味をまだ知らないミズはクルフリードから思わぬ言葉を聞く。


「ミズって名前でゲームを始めているらしいね、実は君にお願いがあって来た」


胸に期待を膨らませたミズは元気よくバレないように「はい。なんでしょうか?」と答える。

そしてクルフリードの口が開く。


「君には大魔王になって欲しい」

「は?」


とりあえず驚くミズ、もちろん周りの人達の中にも「こいつ、本当に王なのか?」と思う人が出てくる。


「いやー、それはどういう事ですかねー?私にはよくわかりません……」



いやいやいやいやいやいや……

おかしいでしょ、大魔王って敵じゃん!

しかも魔王なら100万歩譲っていいとして、大魔王とかもうラスボスじゃんかよ。


ミズはクルフリードに再度聞く。

なんのためにそんな事を言っているのか。

よほどの問題でもあるのだろう。


「なんで私に魔王になってと言うのですか?」


そう言うと、クルフリードは驚いた声で言う。


「ミズさんはこのゲームがどんなゲームか知らないの?」

「いや、普通のバリバリ攻略ゲームでしょ?」


クルフリードは何言ってんだこいつ?みたいな感じで見てくる。

正直、今の話を聞いただけではおかしいのは明らかにクルフリードである。


「いや、違うよ。このゲームの名前をよく読んだ?趣味のためにあるゲームって書いてたでしょ?」

「いや、 それは知ってるけど……」

「じゃ分かることない?俺は大陸の王だけど、別に王になりたい訳じゃないんだよ。俺は勇者になりたいんだよね」

「だったらなればいんじゃないですか?」

「このゲームは、敵が存在しないゲームなんだよ。さっきも言ったけど趣味のためにあるゲームなんだよ」



まじでこいつ何言ってんの?

レベル5の変なスライムいっぱいいたじゃん。

強かったけど……

どういう事なの、まさかとは思うけどあのスライムは人なの……?

そんなわけないか……


だが、ミズの予想は的中した。

そうこのゲーム、実は全て人間で作られているのである。

意味が分からないと思うが、簡単である。

このゲームでは、ミズが戦ったスライム、鍛冶屋、受付など、全てがユーザーで出来ているのである。

では、なぜ最初にスライムになる機能や鍛冶屋になる機能がないのか。

なぜゲームの情報がネットに出ているのに、初期ユーザーが全て人間で作られているゲームという事を知らないか……

それは至って簡単な事であった。

クルフリードはこのゲームの仕組み話した後、このゲームについて話す。


「……これは言っていいのか分からないけど、このゲームのユーザー数は1億。ネットに書かれているユーザーは1000万人、実に10倍ほどの誤差がある。このゲームは1000万人がユーザーであり、残りの9000万人はbotユーザー、つまり会社側がゲームに参加しているんだよ」

「何それ……じゃあのスライムも会社側が出しているbotユーザーって事……?」

「そうだ、そしてもちろんユーザーも鍛冶屋やスライムなどになれる。一定のレベルになったらな……だが、その一定のレベルは100以上、そこからゲーム転生と言ってゲームの中だが別の種族などに転生し、レベル1から遊べるってわけだ。後、時々ダンジョンに、明らかにレベルが違うやつがいるが、元はダンジョンなんてなかったんだよ。ある人がダンジョンをクリアするのが趣味だった、このゲームは趣味のためにあるゲームだ。その人はダンジョン機能を作った、作り方はまだ俺のレベルでも解放されてないから分からないがな。そしてそのダンジョンにbotユーザーやユーザーが入り、仲間同士で殺し合ったり、主従関係になったり、初期ユーザーを殺したりと、レベルアップのためにあらゆる手段を取った。だからレベルがおかしいスライムとかがいるんだよ」



何それ……

趣味のためにあるゲームって。

本当にやばいゲームじゃん……

ダンジョンを作りたいからダンジョンを作るってレベルが上がれば好き放題って事なの……?

なんなのこのゲーム……


ミズがこのゲームについて考えていると、クルフリードは「すまないがこの話はおおやけにしないでくれ。俺にも立場がある、あの100万回の搭をクリアした君だからこの話をしたのだ。そして最初に言った大魔王の話をしようか」と言ってくる。

クルフリードはミズを近くの喫茶店に連れ、1人で長々と話した。

ミズはそれを聞いて、このゲームがクソゲーだと言う事を理解した。

クルフリードが言うにはこの世界は狂っているらしい。最初は健全なゲームだったらしいが、のちに勇者になりたいと言う者が現れ、勇者転生のレベルまで達した。このゲームで勇者になれた者はその1人だけだ。

その勇者は圧倒的スキルなどで一気に強くなった。

だが、その勇者はこのゲームを次第に自分の物にしようとしたらしい。

何をしたかはクルフリードにも分からないが相当やばかったらしい。

そして勇者に立ち向かえる役職は1つしかないという。

それが大魔王である。

大魔王は1人のみ、魔王は12人、この役職は勇者の天敵であり、唯一倒せる役職らしい。

最初はクルフリードがどうにかして勇者になろうとしたが無理だった。そんなとき、あの100万回の搭をクリアしたミズがこのゲームをやるとツイートを見て知り、ミズならこのゲームを救ってくれると思い、相談に来たらしい。

そして最後に一言、クルフリードがミズに言ってきた。


「俺はこのゲームが好きなんだ。でも俺じゃこの世界を救えない……もう俺は大陸の王という役職についてしまった。だから無理なお願いだが、どうか……どうか、このゲームから勇者を倒してこのゲームを平和にしてくれ!頼む!」


悩んだ。

ミズはこのゲームを友達と楽しみたかった。

初めての友達との共同作業は楽しかった。

でも、人が困っていて助けないのは気が引ける。

しかもこれは友達が前作から遊んでいた、とても大切なゲームだ。

こうしてミズは勇者を倒す事に決めた。


「クルフリードさん、私は勇者を倒すよ。困っている人達のために……」



どんな手段を使ってもね……

私は攻略ゲーマーだ、でも最弱でコミュ障の雑魚攻略ゲーマーだ。

でもそんな攻略ゲーマーでも必要としてくれる人はいる。

まぁ私の事を強いと思ってるからかも知れないけど、でも私を頼ってくれた。

だからそれに全力で応える。

だって私は攻略ゲーマーだから……


こうしてミズは大魔王への道を歩き始めたのである。


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