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another side 遠視
「あ!」
カエラスが声を上げた。
アングラはもう、ヘッドフォンをつけるのをやめていた。ローテーブルに置いたヘッドフォンからは勝手に音楽が流れたままだ。
「どうした、カエラス嬢」
アングラが聞く。
カエラスは、両手をヒラヒラと意味なく動かしながら、慌ただしく説明する。
「あ、あのですね、ホテルはずっとボヤけたままなんすけど、そこからトキテが出てきました」
「ホテルはまだ見えない?」
振り返ったロッソが聞く。
「はい、ホテルは見えません。どーしますか」
どうする、というのはボヤけたままのホテルを監視するか、トキテを監視するかである。
カエラスの遠視は、一ヶ所しかできない。早くしないと、トキテが見えなくなる、とカエラスがまた手をヒラヒラと動かしている。端から見ると、溺れている人のようだ。
「どうする、旦那」
「ホテルがボヤけてるなら、シールドを置いて行動してるんだろう。カリンがこの間にジャンプして行方が分からなくなる可能性もあるけど、そしたら、どっちにしろトキテを迎えに来るはずだ。トキテを監視しよう」
アイアイサー、とカエラスは敬礼のポーズをとった。




