トキテ、考える
「となると、聞き込みは辛いから、情報屋をあたるのがいいんじゃない?」
「いや、でも、金ないよ」
トキテは先日のやり取りを思い出していた。ロッソみたいに上手い交渉をする自信がない。
「一番良いのは、街にある防犯カメラの映像を見て、ロッソを探すことだけど……」
トキテが思いついたことを言ってみる。
カリンはすぐに首を振った。
「国に属してない自治体の街だから。防犯カメラだって少ないし、アークだから捜査させろって訳にはいかないでしょ」
「アークは民間だからなぁ。国際機関なら、捜査権行使とかできるんだろうな」
「昔は国際機関化、狙ってたらしいけどね。やっぱ、超能力者集団は風当たりが強いよ」
アークは今や、有名な巨大組織である。しかし、民間機関であるため、権限はないに等しい。国際警察と協力して捜査を行う仕事が一番多いため、世間では超能力者の警察という認識がされている。なので、一か八かでアークの名を出して捜査することはできる。会社としては、そんなことをしたエージェントは懲罰に値するが。
とにかく、情報が遮断されてしまったトキテたちには、それくらいしか方法がない。
もし、ロッソがいなくなったのが、何者かの仕業なら、恐らく相手は超能力者だ。そして、こちらを監視している。シールドを張った今、何か動きがあれば、こちらから動かなくてもシッポが掴める。しかし、待っても獲物が掛からない網に、意味はない。
「囮……」トキテはぽつりと言った。「相手がこっちを監視してるって仮定での話だけど、相手を釣るには囮が必要だよな?」
「そう、だけど……」カリンは怪訝そうに頷いた。「誰が囮になるべきかって大問題だよ」
「まぁ、俺かカリンだけど、どっちの囮で釣れるかってことだよな」
「そう。相手の狙いがわからない」
もし、トキテで釣れるなら、トキテが動くべきだ。カリンが狙いなら、そもそもカリンの瞬間移動の能力を無効化させなければ捕まえられない。そこはロッソを人質に使うのかも知れないが、それはトキテ相手でも同じ効果が得られる。
問題はセキヨウだ。可能性は低いが、セキヨウが狙いの場合もある。しかし、セキヨウを囮にするわけにはいかない。
最善の手を考えるのは難しい。今あるカードで、考えるしかないのだ。




