表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
SHADE  作者: 真木 雫
17/45

トキテ、悪い方向に思考を巡らす

 気付いたら朝だった。

 とは言え、空が仄白(ほのじろ)んできているだけで、まだ日も顔を出さない早朝だ。粗悪な寝床なので、寝辛さから早く目が覚めてしまったらしい。

 トキテは上体を起こすと両腕を目一杯伸ばした。そして布団を()ぐと、目覚めに水でも飲もうと立ち上がる。

「あれ?」

 部屋を見渡してロッソがいないことに気付いた。また夜通しコンピュータ(いじ)りでもしていたのだろうか。そのときはそう思い、あまり気に留めなかった。

 この宿は、辺境にあるにしてはまともだった。

 おそらく、この地域を縄張りにしているギャングだかマフィアがいて、そこが経営しているのだろう。街の破落戸(ゴロツキ)は一切手を出してこないが、料金が破格に高い。それでもここを選んだのは安全性ゆえだ。そして何より、辺境地ではお目にかかれない立派な食事がついている。

 朝食の時間になると、トキテはいつものようにロビーで女性陣を待っていた。

「おはよう」

 いつものように、五分遅れでカリンとセキヨウがやって来た。

「あれ?ロッソは?」

 カリンが尋ねる。

「さあ?カリンは知らないの?」

「知らないって言うか……、昨日のケンカ以来、顔合わせてないんだけど」

 と尻すぼみになりながら、カリンが言う。気まずそうに、視線が泳いだ。

「……おかしいな」

 トキテの呟きに、カリンは「え?」と首を傾げる。

「昨日、ケンカの後、ロッソはカリンに話に行くって部屋を出てったんだ。しばらくして戻って来て、今度は『ちょっと時間かかるけど、気にしないで』って、アタッシュケース持ってまた出てった。俺もそれ以来、ロッソを見てない」

 三人の間に、沈黙が流れた。

 昨日の話がトキテの頭に過ぎる。

 ーーーエージェントが行方不明

 ーーー急な帰還命令

 当てはまる条件、似た状況に、悪い予感がした。

「ちょっと来て」と言って、カリンとセキヨウを連れて部屋に戻る。トキテはそこで、昨日、ロッソから聞いた話を二人に聞かせた。

 終始、黙って聞いていたカリンに「どう思う?」と聞くと、意外にも行方不明のことは知っていた。

「スタッフで何人か、いなくなった人がいてね。アークってさ、慈善活動している企業だから内情、良く思われがちだけど、こと能力に関しては実力至上主義だから。実は、スタッフにはあまり居心地よくないんだよ。だから、こそこそと噂話が飛び交うの。誰某(だれそれ)がクビになった。次は私かもってね。まさか、エージェントも行方不明とは知らなかったけど」

「その背景にカーロフ派が関わってるとかは?」

「昨日、ロッソに聞くまで知らなかった。スタッフの方はクビだと思われてたしね。エージェントがいなくなるのは只事じゃないけど、スタッフは元々入れ替わり激しいし、こっちにはエージェントの情報ってそんなに入らないから」

「じゃあ、」とトキテは本題に入る。「ロッソがいなくなったのをどう思う?」

 カリンは黙って床を見つめた。そしてポツリと言う。

(さら)われた、が第一候補」

 それはトキテが考える可能性とも一致し、尚且つ考えうる可能性の中で最悪なものだった。

「ただ、あいつは普通の人間(ノーマル)だから、攫うメリットはないけど、色んなことに首突っ込むから」

 そこでカリンは口を(つぐ)んだ。

 普通の人間(ノーマル)だから。

 それはトキテも考えた。なぜ攫う必要があるのか。その発想に至ると答えは簡単だった。

 ロッソは何かに首を突っ込みすぎた。それで攫わなければならなくなった。そう考えるのが自然だった。

 だとしたらーーー。

 ここから先は考えたくない。

 攫った相手がわからない以上、すべては推測だ。

 ただ、カリンもトキテも、ロッソが単なる散歩に出ていて、ひょっこり帰ってくるなんていう、楽観的な考えは持てなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ