ばれんたいん。
しばらくぶりです。遅くなりましたがバレンタイン話です。誤字・脱字等ありましたらお伝えください。 では、ごゆっくり。
「バレンタインデー…か……。」
ふぅ。
僕はため息をついた。
正確にはバレンタインデーだった、だが…。
彼女はどこに行ってしまったのだろうか。
彼女のことだから、そんなことすっかり忘れて、ゲームしたり真面目に勉強したりしているのかもしれない。
…別に欲しかった訳じゃない。
……断じて。
確かに甘いものとか大好きだし、チョコレートなんて本当にこの上ないぐらい好きな部類にはいるし、いつも部屋にはチョコ置いてあるし、貰えたら少しくらいは嬉しいかなぁ〜なんて思うけど!!
……言ってて虚しくなってきたよ…。
はぁぁあ。
深めにため息をつく。
気分転換に近所のスーパーにでもいこう。
スーパーがいい。
コンビニはちょっと高めなバレンタインにあげる用のチョコが置いてあって僕に買って欲しそうにじっと見つめてくるに違いないからだ。
近所のスーパーで、白いダースとチョコチップクッキーとそれからミルクティーを買おう。
それを食べながら、独り寂しくテレビのバラエティーでも見ようじゃないか。
可でもなく不可でもないようなトレーナーのうえに、よくわからないもこもこしたジャンパーを羽織る。
僕は彼女と違って、ファッションとかにあまりこだわりがないから、詳しい名称とかは解らない。
まぁ、わからなさすぎだけどさ。
ジャンパーのポッケに財布を突っ込んで自転車のカギをひっつかむ。
おっと。
テレビとストーブも消して…。
戸締まりを確認…っと。
僕は自転車に跨がって家を出た。
━━━━
がしゃん。
自転車の鍵をかけて、カゴからスーパーの袋を取り出した。
バレンタインデーが過ぎたせいなのか、白いダースはいつもよりかなり安い値で売られていて、予定より多く買って来てしまった。
すこし重めのそれをぶらぶらさせながらポストを覗く。
無理矢理曲げて入れられているダイレクトメールを引っ張り出してポストを閉じようとした。
あれ。
ダイレクトメールが居なくなってすこし広くなったポスト内には、電気料金の明細書とすこし膨らんだ紙袋が。
僕はそれらを引ったくるようにして、出ていくときに鍵をしめわすれた玄関のドアを開けた。
どたばたとリビングに入り、自分を落ち着けるためにもと、ストーブとテレビを付けた。
ふう。
一つ息をはいた。
ダイレクトメールをダイニングテーブルに半ば叩きつけるようにして置いて、電源の入っていない炬燵に入る。
白いダースたちは炬燵の上で待機だ。
茶色いどこにでもありそうな紙袋はすこしだけチョコの匂いを漂わせていて、僕はにやついた笑顔になる。
中を覗いてみた。
チョコケーキと白い画用紙。
チョコケーキは見て分かるぐらいしっとりとした出来栄えで紙袋のマチぎりぎりの横幅だ。
きっと僕がこういうのを好きだとわかっているんだろう。
これだけあれば満足できそうだ。
そして、白い画用紙。
手のひらよりすこし大きめのそれは二つ折りにしてあって上面には青い水性のボールペンでなにか書いてある。
…英語の筆記体。
おそらく『ハッピーバレンタイン』。
見慣れた彼女の優しい文字。
この青い水性ボールペンは最近の彼女のお気に入りでことあるごとに使っているものだ。
中を開くとシンプルだが可愛らしくシックなハートや黒ネコのシールがセンスよく貼られていて、彼女らしいなぁなんて笑ってしまった。
シールと文字は下半分にのみ。
『遅くなってごめんなさい
チョコケーキです
うまくできたから感謝してたべるんだぞ☆
なんてね(笑
ホントはちゃんと当日にできてたんだよ!
ただにーさまととーさまが食べちゃって…(´・ω・`)
でも2回目だから味はバッチリ!
…のハズ…(苦笑
ホワイトデーは3倍返しだよ!!
楽しみにしてるから♪』
なんか…泣きそうだわ……。
持っていくのを忘れていた携帯には僕が家に居ないこと責める彼女からのメールが入っていて。
『ごめん。
ありがとう。
愛してる。』
送信ボタンを押して、ケーキにかぶりついた。
恥ずかしいから、彼女からの返事の内容はあまり考えたくない。