チュートリアル(後編)
《では、これよりチュートリアルを開始します》
「うおっ!?」
急に機械音声のような声が響き、私はかなりびっくりした。
箱に手を置いた後、一瞬視界がブラックアウトしたと思ったら、今私がいる部屋に移動していた。
なぜ移動したかわかるかと言うと、今度の部屋は正方形だったから。そしてさらに、床には毛足の長い赤色の絨毯が敷かれていたから。
私がほへーって感じでフカフカの絨毯を踏み踏みしていると、また音声が響いた。
《まず最初にステータス鑑定を行います。中央に出現した水晶に触れてください》
そう、音声が響くと何もなかったはずの部屋の中央に、反対側の景色が球体で歪んでいることを除くと、はっきりと見えるほどに透き通った水晶が浮かんでいた。
「ステータス鑑定ね…おお、すごいファンタジー!」
私はそう言いながら水晶に手で軽く触れた。すると、水晶が眩しい光を放った。
「のわっ!」
あまりの光の激しさに私は思わず顔を背けて目を閉じる。
「もしかしたらこれはチートチャンスなのでは!?」
転生・転移系の小説ではこういうステータス鑑定的な事をする水晶が強い光を放つほど強いのはお約束だ。そして私も今私が触れた水晶が強い光を発していた。これは期待が高まる。
光が弱くなると、私の頭の中に情報が流れ込んできた。
「わわっ!?」
その情報量に頭痛がして、一瞬クラッと来たが、私は水晶から手を離さないように堪えた。
頭痛が治ってしばらくすると、また機械音声が喋りだした。
《ステータスの鑑定が終了しました。ステータスオープンと念じる、もしくは唱えることで、あなたのステータスを閲覧することができます》
「ふむ…やってみよう。ステータスオープン!」
私がそう唱えると、目の前にブン、と音を立てて黒い板が出てきた。わあすごい。
「どれどれ…?うわお…」
ステータスを見た瞬間私は絶句した。なぜかって?色々ととんでもなかったから。下のが私のステータス。
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名前:吉野 果穂
種族:天人
LV:200
クラス:代行者
称号:転生者、転生者ハンター、快楽自殺者
ステータス:
STR(筋力)200
INT(知力)300
DEF(物理防御)250
MDEF(魔法防御)250
AGI(敏捷)220
スキル:転移(LV10)、全属性耐性(LV10)、状態異常耐性(LV10)、全属性攻撃魔法(LV10)、防御・回復魔法(LV10)
残スキルポイント:500
取得可能スキル:欺瞞、身体強化、夜目、状態異常魔法、弱体化魔法、結界魔法、飛行、時間操作、空間操作etc.
注)スキルの最大LVは10です。
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むむむ…どこから突っ込めばいいのだろうか。まあ、一人で突っ込んでもさっきみたいに虚しい結果で終わることになるだろうからやめておこう。
それにしても……称号の快楽自殺者とは何なのだろうか…快楽殺人者の反対的な感じなのか?
私がこんな風に称号について悶々としていると、今度は勝手にブン、と音を立てて黒い板が出てきた。おっ、今度は神様からのメッセージのようだ。どれどれ…?
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神から一言
無事につけたようで何よりじゃ。お主には使命のこともあって簡単に死んでもらうわけにはいかんからの、かなりチートにしておいたぞ。
ああそれと、今頃疑問に思っとるじゃろうからここにいくつか答えを記しておこう。
まずな、狩るべき転生者や、転生者の見分け方、送還の仕方等々は、マニュアルオープンと、唱えるか念じるかすれば出てくるマニュアルに書いてある。いくつか重要な重要な情報もあるので、一度読むことをおすすめするぞ。
それと、称号の快楽自殺者じゃがな、それはお主が何度か自殺サイコー!などど思っておったからついたものじゃ。狂人思考の賜物という訳じゃな。
長くなってしまったの。二度目の人生を転生者狩りの使命を忘れずに楽しんでおくれ。それと今お主がいるそこは、半神域のような感じの場所での、色々と事情があっての、あまり中にお主をいれておきとうない。じゃからの、これを読み終わったぐらいで勝手にお主が転送されるからの。ではの。
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そこまで読んだところで足元に魔方陣が白い光を放ちながら広がってきた。
「えっ!?ちょっと、まっ…」
私は抗議の声をあげたが、全て言い切るまえに、私の意識はここに来たときと同じように融解していった。
今回のステータスはもしかしたら今後変更するかもしれません(・・;)。