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チュートリアル(前編)

 目を開けると、そこは神殿だった。

 見渡す限り床も壁も柱も全て純白の石材で構成されている。

 ただし、天井だけは神話の一節か何かが描かれていて、そこだけは白以外の色があった。しかし、かといって周囲の純白から浮いているわけではない。その天井画自体が何か見る者を無条件に圧倒するようで、荘厳な空気が漂う神殿に何の違和感もなく溶け込んでいた。


「どこだろ、ここ…」


 不思議とここが危険な場所ではないと思えたので、周囲を探索してみることにする。

 私は今、不思議な部屋にいる。部屋の広さはまあまあ広く、円形になっている。直径は20メートルくらい。

 私の回りには等間隔でなにやら彫刻が彫られた柱があって、その柱がつくる円の中心に私はいる。

 私の足元には柱がつくる円の範囲いっぱいに魔方陣が広がっていて、ここはさながら召喚の間といったような感じだ。

 私の目線の先には両開きの大きな濃い茶色の木製の扉があるので、とりあえずそこから外に出ようと歩き始める。

 服装は私をここに送ってくれた神様の神域に居たときと同じなので足は裸足だが床は冷たくない。が、そんなことに今の好奇心全開の私は全く気付かず、ペタペタと扉目指して歩いていく。


「おっ重っ…」


 扉に着いて早速取っ手を持って押してみたがとても重く、全然動かない。そのまま根気強く押しても…全然動かない。


「むむむ…押して駄目なら引いてみよ…とか?」


 私がそう言って今度は扉を引いてみると、スーッと、呆気ないほどに簡単に動いた。


「……。そりゃそうだよね。こういう場所ではだいたい押して入るものだもんね。ははは……」


 虚しい。さっきの私の苦労は何だったのだろうか。扉を押している間顔が凄いことになっていた自信はあるので、誰かに見られなかった事だけが唯一の救いだろうか。涙が出てきそうだ。


「ま、まあ気を取り直して出発!」


 扉の先は長い廊下だった。窓が無く、蝋燭などの照明もないが、廊下は燐光に照らされており、明るい。だが、先に見える扉まで、ずっと同じ景色が続くので、これがもっと長かったら、私は確実に距離感を狂わされていただろう。

 ぽてぽてあるき、先に見えていた濃い茶色の大きな木製の扉に着くと、今度は失敗せずに開けて私は部屋に入った。

 今度の部屋は最初の部屋とは純白の石材で構成されていること以外のほとんどが違った。まず、部屋の形は長方形で、さらに、一番奥の壁に何か板が掛かっていて、その下に漆黒の直方体の箱があるだけの、壁に彫刻もないシンプルな部屋だった。

 とりあえず私は壁に掛かっている板を見ることにした。近寄って見てみると、板は銀色の金属製で長方形の四辺に蔦と花のような彫刻が施されており、中央には何やら文字が刻まれていた。


「えっと…なになに?“これよりチュートリアルを行います。この板の下にある箱に手を置いてください”ふむ…ゲームか!」


 一人でついつい突っ込みをしたはいいものの答えてくれるものなんていないので、相変わらず辺りは静寂に包まれている。


「はい…」


 自分で作った状況だが、この状況に耐えられなくなった私は、さっさと指示に従うことにした。

 箱に触るために屈むと、傷ひとつない光沢のある漆黒の箱は私の顔を映した。それに、ここに歩いて来る間ずっとあった違和感が答えとなって私の頭に思い浮かんで来た。


「え…私、顔が変わってる…それに、胸も大きくなってる…………やったー!神様ありがとう!」


 そう。私はここまで歩いてくる間、なぜかずっとバランスがおかしいと思っていた。それは転生前の私よりも今の私の胸が大きくなっているからだった。転生前の私の胸はBぐらいだったのだが、今はCか、ぎりぎりDくらいはある。やったぜ。自殺サイコー!

 それに、私の顔の輪郭や、パーツの配置も変わっていた。箱の色が漆黒なので、目や髪の色はわからないが、パーツの配置を見る限り、かなりかわいくなっていると思う。 

「よーし!やる気出た!チュートリアルにレッツゴー!」

 身体が良い方向に変わっていたことを知って、テンションが一気に上がった私は、勢いよく箱に手を置くのだった。


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