小学生編1
『本日の午前11時、始まりますのでぇ~。』
日本語を喋るハイヒューマン、今だに慣れない。あの日から世界の状況は一変していたが、この学校というシステムは変わらないらしい。先生と一緒に赤い人間がやってくる事以外は。
『はい、6年3組の皆さ~ん、復習しましょうか。いいですかぁ、1番大事な事はイマジネーション、想像力ですよ~。体力や運なんて必要ありませんから。もっと肩の力を抜いて~、普段やるゲームや漫画みたいに楽しんで下さいね』
脳の活動領域を広げる事ができる、進化できる人間を探す。という建前で、行われる実験。俺達、日本国の小学生は記念すべき第一回のモルモットという事だ。
頭に注射をうたれ、電波の範囲内でゲームをやるだけらしいが。ニュースによると、範囲内では夢を見る。
夢という表現は、実際は間違ってるそうだが、まぁクラスの皆で夢を見て、共有し、遊べるもの…らしい。
人間が通常、長い夢を見ても30秒程度の話しらしいが、このゲームでは1時間で1年を体験でき、なおかつその夢を現実世界から見る事も可能。そして、これが何かのギャンブルでもある事も放送されていた。
病気の者や、引きこもりの子供、動けない子供まで強制的に参加させられ、植民地になった実感はあるが、夢を見るだけなら…そんな甘いことを今この時は思っていた。
『あと少しで11時になりますねぇ。安心してください、皆さん強制的に入りますので。いや寝てしまいますので~。そのまま机の前でおとなしくしてて下さいね~。…10、9、8、7…3…2…』
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『…おい…起きろって…』
『ん、、、よしあき君…おは…よう…』
どうやら、寝てたらしい。机の上で寝てしまったこの身体の痛みがなんとも言えない。クラスの大半は起き出している様子だ。
『なぁ、先生もいなくなってるし、これが夢の中というやつか』
『わかんない(笑)起きて夢の中ってのも斬新なんだけど…』
『つうかさ、黒板のあれイタズラ?』
よしあき君に言われ黒板を見てみる
■■ヒント■■
勝利条件・3つの宝玉収集
50.50差別なしシナリオ
夢の中ですが死亡しますと現実世界でも死亡してしまいますので気をつけて下さい
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『う~ん、早く起きた よしあき君のつまらないイタズラかなぁ』
『つばさちゃ~ん、、、ゲーマーの分際で生意気でちゅね~!あんなに俺、字が上手いわけないっしょ!』
よしあき君にヘッドロックをかけられる。よしあき君はクラスでも1番のデブ………じゃなくて体格が良くて、本人はふざけているつもりでも結構痛い…
いつもの休み時間の延長というか、それと一緒のようでトイレに行こうとかクラスメートの話し声が聞こえる中…
『つ、つばさ~‼よしあっ君‼ 見て!見て!これ見て!』
あわただしくやってきた、クラスメートのたけし君は何やら興奮している…
『では、コホン。。。行くよ?。。。地獄の業火よ~……いや……地獄の番犬ケルベロスよ~。我に仇なす者を~なぎはらいたまえ~!』
胡散臭い呪文と、たけし君の詠唱っぽい動きにあっけに取られる…
その瞬間。たけし君の右手の30㎝ほど上に拳くらいの炎が…
あまりの驚きに時が止まる…
『すっすっスゲェ!!!何それ!』
『うっひっひっ。ハンパねーっしょ、ハンパねーっしょ。いやいやこれ手品じゃねーし。ほら、ゲームの中に入るみたいなもんって言ってたやん?やってみたらできたわ(笑)俺、どうやら伝説の魔法使いという設定なんじゃないかな(笑)(笑)』
『いや、その前にソレどうすんだよ?アヂ、アチィって‼』
たけし君がふざけて、よしあき君に炎を近づけて遊んでいる。現実離れした光景に、クラスメートも何事かと注目。
『クッソー、なんだよ~それ~!んじゃ俺も~!ケルベロスぅうぅぅ!』
たけし君に対向した、よしあき君の詠唱。出るわけもないはずが……一瞬…少し出た。
よしあき君の右手からライターの炎みたいなのが一瞬……
真顔になるよしあき君…
青冷めた よしあき君を見て、たけし君も悪フザケをやめる。
どうやら炎は任意で消える?みたいだ。
『なんなん、、、これ、、、』
『イマジネーションが足りないな。フム、弟子はとらない主義なんだが…』
驚きに何も言えず、固まっている よしあき君と僕………
このショッキングな事態に動じていない たけし君も……なぜか空気を読んで固まっている。
『…夢の中……なのかな…?』
『………いや、アチィし…これが夢なら何が夢やら…』
『普通じゃあ、ねーわな…ニュースでやってた実験の成功って話しじゃねーの?』
クラスメートも若干ひいてる、そんな時、廊下から女の子の悲鳴が。その悲鳴、ドラマでしか聞いた事のない切羽詰まった声。
誰もが驚き、ドアの近くにいた男の子がドアを開けて確認した瞬間、血だらけのクラスメートが走って飛び込んでくる。
『美香!大丈夫⁉やっばい、これケガすご、、』
『か、、、怪物‼怪物‼ほのかちゃん……食べ…られた』
非常にまずい。あまりの出来事に逆に冷静になれる。
クラスメートが二人でトイレに出ていって、一人が血まみれになって帰ってきて、、、たけし君が炎で、、、
あわただしくなるクラス。そのドアは開けられている状態で…
いつのまにか身長が1メートルもないオジサンが立っていた。
誰もが悲鳴をあげた時、オジサンの横から口元を赤く染めた大きな犬が教室に駆け込んで来る。
ただのオジサンじゃない…生理的に受け付けない顔をして短剣を持っている姿はゲームのゴブリンと類似している。
犬もまた、日常で見る犬とは違う。前足の爪の長さ、口からはみ出てる牙は1メートル近くあり、セイウチと犬が合体したような異形…
僕は、 自分の世界が終わった事実 を、ただ呆然と眺めていた。