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もし〇〇が仲間になったら(〇〇式異世界英才教育〜憎まれっ子よ、世に憚れ〜)  作者: 平泉彼方
第1章 7歳までの軌跡(〇〇式英才教育基礎編)
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37 いざ、出撃(その4)

 読者の皆様更新遅れて申し訳ないです。行間は後日直します。


 さて、それでは今週の不憫をどぞ!




 扉をこじ開け入り込んだ巨大な金庫は、魔道具としてはまぁまぁの性能があるようだった。


 入ってすぐの床と壁面には痺れを起こす魔術式が描かれており、そのすぐ横には踏んだら即効で黒焦げになる物騒な魔術式があった。内部は所狭しとこうした魔術式が大量に張り巡らされていたのだった。


 仮に術式を読んだ上で解除できる人でも連れてなければすぐにでも侵入者を撃退できただろう…ただ、魔術師に対して警戒しなさすぎなのではといささか疑問にも思った。もしかすると、魔術士のレベルが私の考えているものとは大分誤差があるのかも知れないが。


 まあ使っている金属が特殊だったので、魔術師にはそもそも内部へ侵入できないのかも知れないが。


 考えても仕方がない。せっかく侵入したわけだしとりあえず物色し始める。今回の目標は、おっさんの保証書回収と不正に稼がれたお金の回収。前者はもちろんだが、後者はさっき混乱に陥った裏賭博場の幽霊由来の依頼だったりする。



「契約内容はえっと…ティアラを取り返してほしいだったか?」



 その幽霊は、中年の女性の姿をしていた…少しくたびれた顔をしていたが、それでもかなり美人だった。色彩は水色の目に薄緑色の髪、金色が混じっていたので少し前の私に近い色だった。体型も巨乳通り越して爆乳で、現在のネグリジェ姿で街中を歩けばたちまち前かがみになる男が見られるだろうことが予想できた。それくらい顔も体型も素晴らしい。眼福です。


 名前はグレイス・ロシュティー・キュルレ・ヴォン・フォンディーヌ。フィンディーヌ家第23代目の夫人だった人である。多分今だと48代目あたりだったはずだから、ひと世代もふた世代も前の人。


 中年期に入ってすぐ夫を亡くしたが、その悲しみで体調を崩して後を追う形になったとか。そして夫が生前互いに死んでも再び会えるよう呪いをしていた結果死後一緒に過ごしていたと。そんなリア充さんでした…


 さて、そんな彼女が夫と離れてここに1人いる理由は何も夫婦げんかしたとかそんな単純な話ではなかった。どうやら彼女の見目を気に入った変態が死霊術師に依頼して彼女を受肉させた上で自分の愛人にしようとしたらしい。幽霊なので子供もできないし、ちょうどいいと思ったのだろうと。


 そして彼女と夫をつなぐ呪具を子孫が騙された結果奪われ、家の財産とともになぜかこの街の金庫に入れられていたとか…どうやら教会か絡んでいるとも。



「しかしティアラか…ん、これか?」



 探索術式を掛けてみると、あっさり見つかった。他にも別の幽霊が見つかった場合は返して欲しいと先ほど依頼して来た品がいくつかあった。もちろん没収。



「さて、これらを持ち出せばいいか…なら後は契約書。」



 ん?これは一体なんだろうか…別の契約書とそこに書かれた契約内容が気になり少し読んでしまった。そして読んですごく後悔した。これあかんやつだと。見なかったことにしようとしたが、もう遅かったご様子。契約のせいで自由になれない亡者にまとわりつかれている…だから彼らの事情を見せてもらうことにした。



「霊視【過去】…なるほど、な。」



 …ふむふむ、これはすごくアウトな内容だまさしく。財産以外にも妻子を強奪してしまおうとは、しかもその後飽きたら娼館に押し込めると。計画の段階だがこれでは確かに彼女も逃げたくなるだろう…しかも計画立案者が幼い自分の婚約者とその父親ときたか。息子が婚約者を嫌っているからという理由でこんな下衆なことをするとは漢の風上にも置けない。


 もっとひどいのは、すでになんらかの事件が一度起こっていること。そうでなければあそこで私と会うこともなかっただろうに…本当なら今すぐ攫ってやりたい、そのためにも実力をつけねば。


 依頼の前金は勿論、契約書ごと証拠品として没収。というか、すでにこれだけ恨みとそれに付随する呪いがかかっているとなるとちょっと、いや、かなりひどい状況になっていることがうかがえる。正直な話、相手の酷さにドン引きした。



「しょうがない、サービスしておくか…」



 ついでに報酬としてこの辺の金貨ももらってしまおう。どのみち呪われていて使えない、ならば私が有効活用せねばという謎の使命感が見た瞬間生まれたので。呪解は割と簡単にできる仕様になっていたが、それでも思ってしまう。それにしてもここに置いてある金貨はどれほどの悲劇を経てここに集結したのだろうかと。


 呪い返しの要領で呪いを掛けたい相手へと呪いが行き届くようにする…子供や若い女性、それからカップルと思しき者達から老人まで。様々な人がありがとうと消えていくのが見えた。呪いの代償で魂が消滅したようだ。


 そうして呪いの解けた金貨や銀貨、宝石類をごっそりと抜いて行った。もちろん呪いのかかっていないものに関しては一切手出していない…だから山のように存在した財宝のほとんどが鞄の中に消えたのは仕方がないことなのだろう。そうだ、私は悪くない。別に盗んでいない、当然の対価としてもらったものなのだから。



「…故に、そういう目で見られるのは間違っている。」



 呆れたような、恐ろしいものを見るようなそんな目で取り返した保証書を目にしたおっさんと案内人に見られる。


 おっさんのためにやってあげたというのになんという理不尽。なんという横暴。私だけを悪い火事場泥棒もとい強盗扱いするとは…さては保証書持ってトンズラする気だったなこの人。


 そら確かに今日会ったばかりのましてガキンチョを信頼する人は少ないかもしれないが、それにしたって有言実行したわけだし一度は命を救っているのだから。むしろ感謝してもいいと思うのは間違っているだろうか。


 まあいいや…そのぶん情報毟り取ればいいし。



「さてと。軍資金も十分、打撃も十分だから会場行くか。ディエゴさんに連絡よろしく。」


「了解です!」



 いよいよウォルターさん取り返す段が来たようだ。全く手間かけさせやがって…本当なら一晩泊まった宿屋の亭主ということで無視しても良かったのだがこれもまた一つの縁。救えるものを見捨てて後味が悪い思いをするのは前世(まえ)だけで十分だ。


 さて、資金も立場も舞台も揃ったので行きますかね。






 オークション会場は賭博場とつながっている。


 さすがは教会の買った領地の地下を掘り出して作成されただけはあり、人が軽々何千何万と収容できるサイズとなっていた。このためだけに、繁華街の丸々一角から教会へかけての道筋すべてを買収したらしい。


 その中でも特にVIP用の部屋は、広さはもちろんだが非常に凝って作られていた。


 使用されるカーペットは北のとある部族からしか入手できない超高級のとある時期しか取れない山羊毛を使用したもの。それが発色の難しいとされる薄紫色…菫色に近い色彩に染められている。踏むのが惜しくなるほど感触が良く、おそらく地べたに座っても快適に過ごせるんだろう。


 壁や天井は真っ白で会った。純白を発色させるには特殊な加工が必要であり、しかも魔術式で掃除を定期的にしなければ維持できない。


 そんな部屋に置かれている家具も、黒檀と一部香木で作られた高級品…特に木がそれほど大きく育たないことで有名な香木で作られたチェストは、なぜだか神聖な雰囲気と少し悲しげな雰囲気が出ていたのだった。



「これは、また…無駄に金がかかっているな。」


「…そうでしょうね。」



 そこへ突如現れたのは、平民の色彩をまとっているにもかかわらず高貴な雰囲気を醸し出す年端もいかない少年。そしてその背後に控えるのは表側の賭博場を取り仕切っていた有名人物とその直属の部下。さらに少年は2本角を持った漆黒の馬を連れていた…仔馬らしくサイズは小さかったものの、幻想種らしく堂々とした振る舞いをしていた。


 呆気にとられてすでにその部屋を利用していた“やんごとなき”身分の人々はぽかんと案内される様子を黙って見ていた。



「それにしても今回は満席、ね…他よりここはましなのか?」


「申し訳ございませんぼっちゃま。」


「そうか、お前が言うならそう言うことなのだろう。仕方がない。」



 フンと少年は傍若無人な風で言葉を切る。そうして部屋に付属されていた椅子の一つへ優雅に腰掛けた。そしてしばらく案内人とその部下を眺めてため息を一つ。



「…ここは客人をもてなすこともできないのか?」


「し、失礼いたしました!!」



 部屋に付属されていた給仕の女性は慌てて茶器を用意し、お茶を入れて行く。少年の見目や立ち振る舞いがあまりにも優雅で美しかったために見入っていたようだ…同室している悪党たちもそれは同様であった。


 少年はだるそうに再びため息をつく。だが、それが妙な色気を伴っていたことに本人は気づいていない様子だった。



 その直後、悪党の1人はバカなことを給仕に聞いていた…この少年はどこの家のものか、そして出品されないのかと。家出少年か家族とはぐれた少年ならば、別にさらってしまっても問題ない、むしろ保護したと後で報告すればなんとでもなる。


 そんな認識の貴族は数秒後、目前の光景に青ざめることになった。



「お、お待たせいたしました」



 音を立てないようにお茶のセットを用意した給仕。地球で言うところのヴィクトリアン風の給仕服に身を包んだ女性は体型も顔もそれなりであり、さらに礼儀作法もしっかりしている様子だった。おそらくそのためにこの場で給仕することに選ばれたのだろう。元貴族ではないかと言えなくもない様子であった。


 そんな彼女はしかしこのような裏側で働いている…その事実から、彼女も何かしら人に言えない事情などを抱えていることがうかがえた。


 少年は優雅にティーカップの持ち手を片手のみでもち、一瞬飲もうとする…だが口をつける前に止まった。そして被虐的な表情を浮かべて女性給仕を見つめた。



「君、毒味はしたかな?」



 給仕はえ、と声を上げる。その表情は驚愕に染まっていた…まるで、何を言われたの検討もつかない様子でオロオロしだした。周囲もまた、たかが平民に子供が何を言っているのだと…そこで彼らは違和感を覚える。


 平民の色彩、端正な容姿、優雅な立ち振る舞い、傍若無人な態度…極め付けに彼をこの場に連れてきた人の様子。


 その様子から彼らはどうしても想像してしまう。まさかこいつはお忍びで訪れた高貴な身分の人…その子供なのか、と。あるいはもしかするとどこぞの王族で年齢特有の無駄な正義感を発揮してこの場に来て取り締まろうとしている、と。


 だが後者についてはすでに心配ないことがすぐにわかった。


 次の瞬間パシャンと音を立てて紅茶を給仕に向かって掛けた少年…その顔には加虐心と侮蔑的な嘲笑が浮かんでいた。恐ろしく黒いその表情には正義感や義勇心なんてものは一切存在しないのだと一発で理解させられた。



「…どうやら見事に私を舐めてくれたらしいな。指定毒物…しかも媚薬ときたか。一体どうしてくれよう。」



 紅茶のかかった給仕の女性は息を急に荒げ始め、顔も真っ赤に上気していた…目も潤み出し、明らかに発情してる状態になった。その様子から、どうやらお茶に強力な媚薬を仕込まれたのだと察した。そしてそれが入っていることとその効能を知りながら給仕へ掛けた、と。



「さて、自身の責任は自身の身で存分にとるべきだ…ディエゴ、こいつは好きにしていい。しかるべきところへ連れていけ。二度と私の目に触れさせるな!」


「かしこまりました。」



 裏社会で恐れられていたディエゴと呼ばれる人物は次の瞬間その女性を部下につまみ上げさせた。女性はそのまま連れて行かれてた…媚薬で意識が懸濁している状態のまま闇へとそのまま消えて逝くのは、果たして幸福か不幸か。ただ、意識があったら少年の凍てつくような恐ろしく美しい笑みを最期見ることになっていただろう。



「さてと、私にもし万一にも舐めた真似をした相手がいたら容赦なくしかるべき処置を偶然することを私は許可するよ。偶然と私が言ったからには偶然になる、だから徹底的にやれ。」


「は、」



 静かな声だったが、やけに通る声であった…少年特有のその高い声はしかし、恐ろしい力の片鱗が見えていた。先ほど邪なことを考えていた貴族は震え上がる体を無理やり押さえつけ、借りている部屋へと戻って言った。他にも数名、そんな人たちがいた。



「…情けない、戦の前に逃亡とは。」


「まったくその通りですな。」



 少年の凜とした声に答えたのは、入室してから笑顔を一切絶やさなかった老人…穏やかな表情にそれに見合う優雅な仕草なのだが、見る人が見ればおそらく恐れるのだろう。いい年をしているのに隙がまったくなかった。


 少年は警戒心を隠しつつ温和な表情を作る。老人もまたにこやかに笑みを深めた…だが、それに比例して部屋の空気は緊張と冷気に包まれて言った。


 その張り詰めた緊張感は次の瞬間霧散したのだった。



「ではいよいよ、本日の目玉商品を紹介したいと思います!!」







【おまけ】



「さて、自身の責任は自身の身で存分にとるべきだ(こんなことを恋人のいる姪にやらせやがって)ディエゴ、こいつは好きにしていい(多分嫌われたから別に私に仕えさせなくていいよ)。しかるべきところへ連れていけ(とりあえず今は恋人のところに連れてってやれ)。二度と私の目に触れさせるな(半獣族的に恋人の異性ハニトラに使うのアウトでしょ?!)!」


「かしこまりました(先ほどつけていた案内が恋人なので問題ないです)。」


 実はこんなやりとりが裏であったりなかったり。

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