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もし〇〇が仲間になったら(〇〇式異世界英才教育〜憎まれっ子よ、世に憚れ〜)  作者: 平泉彼方
第3章 8歳後半、顧問魔王な強化合宿(〇〇式英才教育標準編)
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125 化け物とは一体

 読者の皆様大変お待たせいたしました。


 沈没船なので、今回は例のアイツが出てきます。それでは今週の不憫をどぞ!

「で、でで……」



 寒い。そして煩い。



「こ、こっちに来るな!ヒィ」



 なんだよ……本当に煩いな。なんなんだ。

 目を醒ます。そして顔面へとアップしてくる見事なザビエル禿。後頭部に綺麗な円形が映り、そこへ私の顔が写っている……久々見る西洋人の顔。日本人時代の顔の方がイケメンだた気がする。

 それにしても目が醒めてしまったではないか。しかも目覚め早々禿かよ。



「どうしたよ?」



 騒がしいガドエルさんの頭を避け、顔を覗き込むとヒィと土気色の顔を更に悪くしながら指をさした。そしてその先は例の洞窟。



「……ああなるほど。」



 そこには確かに化け物がいた。

 手足は多分秋刀魚や鰯製。胴体は鮪や鰤、それからなぜか淡水魚である鮎や鮒、鯉が混ざっているのだが……これぞすみわけか。それともツッコミ待ちか。

 まあいい。他にも蛸や烏賊が顔面や髪を作っており、他細かいパーツに海老、蟹、貝、海月、海藻類等が使われていた。タニシっぽいものがあったことはスルーしておいた。

 やつは確かに人の形をしていたが、だが人ではなかった。その証拠に四つん這いで移動している。一度立ち上がってからもう一度地面へ両手を着けてそしてダッシュしてこちらへ向かう。

 立ち上がる意味とは一体?

 いや、確かにその分その巨体がでかく見えるが。あるいは目前の相手へ伸し掛るため一瞬立ち上がるのならば有効だろう。だが今は離れている上伸し掛る相手はいないはず。

 生暖かな目で見ていると、洞窟周辺の何かに阻まれ再びスタート地点へ。気にせず再び立ち上がり、スタートダッシュする化け物。また壁にぶつかる戻る無限ループ。

 ……やはり、人間ではないらしい。



「確かになんかいるけど……そんな怖くないな。」



 念のため洞窟入り口に貼っておいた結界は確か強度それほど強くしなかったはず。せいぜい弾性力をちょっとだけ付け加えただけで、その分脆かった可能性もある。

 それを超えられない程度なら、実力は察しレベルか。



「それに本当に怖い奴っていうのは……」



 ちらりと腹を出してグースカ寝ている魔王を指差す。すると、なんとか同意しようと頷くガドエルさん。ただ、やっぱり殺された際の恐怖が残っているのか震えたままである。

 もう一度化け物を見ると、頭を作っている蛸が一部ひしゃげて緑色の液体をダラダラ流していた。その一方で眠る魔王……次の瞬間、ライおかわりくれと寝言で呟く魔王。そしてよだれを流して満足げに頷く魔王。

 ま、まあ今はそんな怖そうに見えな「吾の焼きそばパン奪いやがってこのやろぉぉぉおおおお!!!!!」


ヒュン…………ドゴーン、ガガガ……


 恐る恐る上方を見上げると、青空が見えた。だが徐々に穴は塞がっていく。ダンジョンの自己修復機能か。

 ズピー、とご機嫌な顔で再びイビキをかき始めた魔王。寝返りを打って我々の逆方向へ体ごと向けていた。満足したのか、ウンウンと頷きながらグヒヒと不気味な声で笑う魔王。

 冒険者たちの寝息が聞こえる静寂が戻った。まるでダンジョンを貫通したレーザー光線が無かったかの如くとっても平和。というか、崩れる音へ誰も反応しないとか冒険者としていいのだろうか。

 思わずザビ…ガドエルさんの方を向く。オサレな顔で固まっていた。近寄ってもしもししたが、リアクションがない。よく見れば白目むいていた。



「幽霊ってそういえば気絶するんだっけ?」



 それにしても実体化できる程度に戻ったのか。よかったな。あともう少しで魂の修復終わりそうな様子。



「さぁて、朝ごはん作るかな。」



 魔王の災害はなかったことにして、とりあえず雑魚の衝撃音をBGMに昨日の仕込みを取り出し調理を開始した。




◆□◆◇◆□◆◇◆□◆◇◆□◆




 片付けを終えてから、洞窟の中にいる雑魚をどうするか魔王へ目を向ける。魔王はというと、ヤレというサインを送ってきた。

 朝からビクビクしている冒険者達は無視して、例のアレを取り出す。



「許せとは言わないが……」



 そして自分の禁を破って例のアレを投げた。結界強度を高め、念のため全員へ配ったマスクが装着されているか見た。よし、大丈夫そうだ。

 シュー、と霧状の何かが散布されるのを目視しながら、絶対にアレが結界を通さないよう結界強度を念のため一段上げておく。フィルター代わりなので衝撃には弱いが、空気は通さないほど密度は高目に設定している。

 これも修行。だからいざとなったら魔王がなんとかしてくれる……筈?


 散布型カメムシ爆弾は洞窟を形容し難い茶系の色に染め上げていく。遠くの方でギャーと叫ぶ声が聞こえ、ドサ、ドサ、などと次々倒れていく音が響いた。



「恐ろしいが有用……あれはどこで売っている?」



 そう尋ねてくるのはユリウスくん。

 やっぱり有用だと思うよな。魔王や親父はただただ恐れるだけだが、道具は使ってこそ意味を見出すのだから。共感してくれた人初めてかもしれない。

 けど販売しない。試作品だということもあるが、危険すぎるから。



「だめ、あげない。」


「いくら積めばいい?」



 食いさがるユリウス坊っちゃま。

 ケ、これだから財産持ちが……て、よく考えてみたらこいつ散財したばかりだから意味無かった。なら出世払いとか借金か?



「どのみち無理なものは無理。」



 やめておいたほうがいいぞ〜、やばいから。

 遠い目で語るのは魔王。ガラス瓶みたいな密閉できるものがない場合の大惨事を覚えているからなのか。それとも使おうとして自分に掛かったトラウマ経験か。


 そろそろ洞窟全体に行き渡っただろうか……大丈夫そうだな。



「ライ、トイレとダイ◯ンの術式を用意しろ。」


「はいはい。」



 なお、ダ◯ソンは家の掃除で魔王も覚えた圧倒的な吸引力の例のアレである。

 それらを結界内部へ設置する、遠隔操作で。宇宙でアームを操作するような感覚だが、慣れればなんともない。前世でやった経験が今世になって活きるとは予想外だったが。

 人生とはわからないものである。



「さてと、【起動】っと。」



 ブーンと音がしたと思うと、一点へと集中するように茶色の竜巻が起こる。あれは相当臭いだろう。それが、う◯ちやお◯っこを飛ばす術式でどこかへ転送されていく。申し訳ないけどどこかは知らない。マジごめんなさいとしか言いようがない。



 その日、ある王立学園の卒業パーティーで行われかけていた婚約破棄騒動は謎の異臭騒ぎによって中断された。王侯貴族の揃う場所だったこと、殺人的な悪臭だったことから暗殺ギルドと教会の関与が疑われ、現在捜索中。この事件により隣国同士の政略結婚破棄が回避され国は助かったが、一生消えないトラウマを一部若人へ残した。

 余談だが、政略結婚を壊そうとしていたとある教会孤児院出身の女子生徒は異臭騒動後に跡形もなく消えた。誑かされていた男子生徒数名は一部記憶が欠損していたことから、違法魔導具及び薬物使用の疑いが掛かっている。現在異臭騒動の件も含め重要参考人として捜索されている。



 そうしてしばらくしたら、洞窟内が綺麗になった。



「ライ、ああいう劇物使う場合は必ず排出先を作るべきだ。覚えておけ。」


「はい、わかりました師匠。」



 満足気に頷く魔王。そして、私の結界を造作もなく消してさっさと進んでいく。私とギルも同様に進んでいたが、背後から追随する足音が聞こえないことへ気づいた。

 振り向くと、固まっている冒険者達。



「置いてくよ。」



 そう声を掛けると途端、はっとして慌てたように小走りする冒険者。仰向けに倒れていた例の雑魚は哀れ、全員走るのに夢中で踏みつけているのに気付いていない様子。

 追いついた頃には顔の中心から凹んだ蛸の体へくっきり足跡が刻まれていた。



「ほら、雑魚が転がっている内にさっさと行くぞ。」



 魔王に檄を飛ばされ進む我々。道中倒れている雑魚の数に戦慄しつつも蹴り飛ばし、踏みつけ進んでいった。

 さてさて、この先が楽しみである。



 やっぱり沈没船といえば、例のパイレッ◯・オブ・*****のアイツだと思うのですが、皆様はどんなことを想像しました?

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