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もし〇〇が仲間になったら(〇〇式異世界英才教育〜憎まれっ子よ、世に憚れ〜)  作者: 平泉彼方
第1章 7歳までの軌跡(〇〇式英才教育基礎編)
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9 勇者ではない一般人による、魔王城攻略チャレンジ(2019/5/4改稿)

 読者の皆様どうもこんばんは。それでは今週の不憫第二弾です!





 私メリーさん、今魔王城の中「ゲゲゲェ!!」……逃走中。


 などと開幕早々ふざけなければやっていられない気持ちである。

 だけど実際問題、ふざけている場合ではない悲しい現状。


 背後から迫って来る鬼の様な連中。いや、本物の『鬼』。

 棍棒と虎柄パンティーが似合いそうな図体の巨大な角と牙生えた奴等。体色は色々。目ン玉数も豊富。尚、言葉は通じず威嚇してくる最近流行らないこれぞ典型的オラオラ系(錯乱中)


 秋田名物みたいに『悪い子は居ネェがァ?』という声も無ければ、出刃包丁やきりたんぽを常備している訳でもない。ここ赤子も観光客もいない。

 子供はここに約一名居るけど、現在絶賛逃走中。本気の殺気と鈍器振りかざされたら、そら逃げるしか無い。


 よくよく考えたらなまはげさん流石に懐へきりたんぽを入れてはいなかった。そうだったよな?……入れていたら犯罪になる、食中毒的な意味で。

 思い出したら無性にきりたんぽ鍋食べたくなって来た。この無茶振りから帰ったら久々きりたんぽ鍋(偽)作るか。小麦のみで(※実物は米粉使うみたいです)


 さて、現実逃避も程々にしておこう。


 幸いな事に鬼共の頭はそれ程宜しくない様子だ。単純な障害物であれば容易に引っかかる。さっきも壊れて取れかけのドアを避けられず、小指ぶつけて悶えていた。その鬼へさらに後ろから来た鬼がぶつかりドアの角へ額をぶつけ、そのさらに後ろにいた鬼へと次々被害が出ていた。

 そのドミノ倒し系な珍景へ思わず二度見したが、その間に逃げればよかった。


 一方で、奴らは追いつくと今の私にとってかなり手ごわい。

 まず身長の差ですぐ追いつかれる。コンパスが違うのだ。私がアリンコだとすれば、相手はマンモスだろうか(※錯覚です)。酷い差別社会を実感させられる。

 そしてリーチが長く、筋肉質。いわば、広範囲に向けて強い一撃を放てるということ。わかりにくい人は、ネトゲのレイドボスクラスの敵複数を実力中堅どころが単騎で掻い潜っている様子を想像してくれ。結構無茶な構図だろう。


 さらに悪いことに、奴らは滅茶苦茶五月蝿い。騒がしい。

 今も鬼の喚き声を聞きつけ次々雑魚が集まって来る。奴らの存在自体がダンジョントラップの魔物寄せクラッカーなのかと疑っている。それにしても単独で固い的だが。


 ガーッと大声を上げると、奴らの仲間がワラワラ集まってきた。このままでは押しつぶされる。


 一瞬猫騙しをしてその隙にさっさと天井裏に退場。突然消えたと勘違いして連中混乱し、怒っている。そしてぶつかった者同士の喧嘩まで始まった。徘徊クラッカーがクラッシャーへとジョブ変更した瞬間。これ何度目かの光景。


 そして既に私の存在は忘却の彼方なのであった。


 その間に天井裏から反対側へ降りて先を進む。これが意外にばれない。

 そんな状態に、魔王城、と言うより魔族が心配になった。不作だとは聞いたがこれは不用心。屈強なガードマンがいても指揮者が居らず、侵入者取り逃がした挙句喧嘩勃発(n回目)。その上城の装備壊す。

 この時点で解雇処分の上で器物破損の罰金科せられてもおかしくないはず。


 これならまだ警備を黒Gokkiesや肉Fliesに任せた方がきっとまだ断然マシだろう。一応不快害虫なので、器物破損はしなかった(と思う)。それに侵入者は足音や羽音聞いたら全力で逃げ出す筈。私なら即避難。侵入しようともおわん。


 無能な味方が強いという言葉は正論だという証明か。大丈夫か魔王。こっちは楽出来るからいいけど。


 さて、ここからは暗殺者もといスネークスタイルで行く(何度目かの決意)。万能段ボール自体無いが。銃もスタングレネードもないが。あるのは魔術式、と自作マインゴーシュだが。


 次いでにスニーク出来ないが。


 実は今回もまた例の如く魔王に修行の課題を出されている。

 迷宮の時は状態異常の魔術式追尾されたが、今回はデスサイズ型の武器魔術式追尾。魔物が来る来ない構わず斬撃を放つデスサイズが複数徘徊。魔王城を抜けるまで永遠と追ってくる。しかも時間で増殖するおまけ付き。

 それを上手く躱すか捌くかしながら魔王城最深部へ向かうのが今日の課題その1。


 さて、魔王のデスサイズは当然質量も重量もある。更には魔王直々の眷属? 配下? 契約? しているのか、無駄に禍々しい存在感まで有る。切られたら切り口から呪われそうだ。


 そんな目立つ存在が四六時中追ってくる現在。


 仕方がないことだが、攻撃を受けた段階で居場所がばれる。いくら鈍い魔物が対象でもダメだった。馬鹿とはいえ物音や異物への感知はさすがにできるのだろう。最早隠蔽とか消音とか無関係。やっても無駄。徒労だった。


 何度も言うが、唯一相手が馬鹿である事が救いだろうか。


 特に天井裏への攻撃手段持っているヤツが圧倒的に少ない事が一番の救い。幽霊タイプは全員何故かひれ伏すか消滅、羽虫系の魔物はそもそも例の『地形変えちゃった事件』以来避けられている。変な称号が原因か。

 それにしても虫が何故か殆どいないので、魔王が先に駆除した説が濃厚(魔王の変な清潔癖だろうか)


 飛行タイプの魔物が少ないこの場所で唯一まともな攻撃が出来る連中と言えば、鼠型等の小動物タイプ。だが怯えられて相手から近寄って来ない現実。とても悲しい。寄って来たら即行でテイムするのに。


 魔王のお膝元で魔王に喧嘩売っている様な事を考えるのを止め、延髄狙って来た鎌を振り落とさんと弾く。


 シュオン


 マインゴーシュから火花が散る。そして慌てて私は天井から脱出……次の瞬間ドカンと轟く爆発音。

 爆発の衝撃は魔王城を壊してく。咄嗟に二重結界を空気で作ったが、衝撃波はとまらない。軽い己の体は勢いよく飛ばされ、2・3回転して壁に激突した。怪我は打撲程度。


 でも後一歩遅かったら……背筋がゾワってなった。



 これだから密閉空間で戦いたく無い。

 掃除の行き届かない魔王城は、天井裏は地味に埃まみれ。こんな場所で刃物同士が争うのは自殺行為。火花が散っただけで詰む。粉塵爆発は今日何度目だろうか。


 爆風に巻き込まれた魔物達の惨状(ただしケガのみ、どんだけ頑丈なんだよ……)を眺めながら涙をそっと拭った。


 こんな状況で戦わせる魔王、流石魔王。愛弟子を自分の手で地獄や深淵に突き落とす鬼畜外道。


 そんなキチ魔王にはもれなく今度親父の料理をプレゼント。一緒に食中りするが、それが1番ダメージ稼げるはず。きっと前回みたいに泡吹いて倒れ伏すだろう。ざまぁみやがれ。


 マインゴーシュで刃を逸らしながらそっと自爆特攻を誓った。


 爆風が完全に納まる前に強襲って来る巨大鎌。予想通り過ぎて鼻水が出る。慈悲も容赦の欠片も無い。爆発の衝撃と時間で数が増えた模様。嬉しく無い増量ありがとうございました。



「……無理だ、逃げよう。」



 ええい、三十六計逃げるに如かず。いやこれは逃げでは無い、断じて違う。

 ただの戦略的撤退。


 マインゴーシュをやや大振りで振るって向かって来る複数の刃を受け流し、同時に自分から引き離す。その隙に私は決死覚悟な気持ちで兎に角走った。

 背後に響く不穏な音は兎に角無視し、ひたすら走る。髪の毛が切られるのは仕方が無い。諦めろ。若いし伸びるのだから。命あっての物種だ。


 人生とは常に、『逃げるが勝ち』である。なんか格好良いので今度掛け軸に書くか(錯乱)


 そうこうしていると何処からか湧いて来る鬼。次々と現れては大声をあげた。不協和音な大合唱。鬱陶しい。



「五月蝿い、邪魔」



 迫り来る筋肉の壁を超えて、切って、逃げて……意識を飛ばしながら突き進んで行った。



◆□◆◇◆□◆◇◆□◆◇◆□◆




 随分進んだ先で安全そうな部屋を見付けたので張って用を足っした……鎌は相変わらず狙って来るが、緊急用に親父が込めてくれた結界のお陰で何とかなっている。

 尚、排泄物は垂れ流しではなく魔術使って何処かに転送している。願わくば大海原か活火山のマグマへ投入されていると良いと願っている。


 部屋の片隅に積まれた瀕死の魔物を一瞥……ついでにつま先でちょんちょんしてみる。ピクピクしているが、逆上して起き上がる様子無し。一応徹底的に凹ったが念のため。本数を増やした鎌は結界を破らんとアタックを続けている。流石魔王、容赦が無い。もういっその事親父と同じ【鬼畜】か【外道】等不名誉な称号がつけばいいのに。


 さて、私はこの貴重な休憩時間を使ってある事をしなければならない。



「いい加減出て来たら?」


「………」



 無言、ね。


 ならば実力行使させてもらおう。

 特にイタくしないから大丈夫。ちょっと出てきてもらうだけだ。魔王と違って私は鬼畜外道でないから安心するが良い。魔王と違って(ここ重要なので強調した)


 ポケットを弄って、潜んでいたヤツを出す。



「!?」



 驚いた様子で周囲を見回し、私に掴まれている事へ気付いて慌てる小動物。毛並みは薄茶色で目玉はくりっとしていて、小柄な身体は手乗りサイズ。尻尾は黒くて長く、先っぽがクルンとしているのが地球との違いかも知れない。


 小さな動物は、心臓をトクトクいわせながら先程から背皮を摘んでいる私の手をゲシゲシ蹴っている……警戒心MAXで離せコノヤロウと言わんばかりに。



「?! ……!」



 余りの可愛さに意識が飛びかけた。

 危険だ。とても危険。可愛さが突破し過ぎて劇物で危険過ぎる、まじやばいやばいやばいやばいやばば……


 うむ、言語が可笑しくなるレベルで危険だ。だからこそ、側に置かないと。

 可愛いは正義、これぞ大自然の真理。だからこそ護りたい、その可愛いを。




「取り敢えず『契約』……」




 名前は……タマ、は駄目だそうなので二十日鼠だから波津香ハツカ。安直だけど我ながらいい感じだ。気に入って頂けたので契約した。


 念願の癒しゲット。


 よくよく見たら毛皮に火傷痕が付いていたので慌てて治療した。きっとさっきの爆風にやられたんだろう。可哀想に。

 下手人見付けたら成敗……よく考えてみたら自分だった。



「……私の服に隠れていたとはいえ、よくあの爆風耐えられたな。」



 きょとんと首を傾げてまん丸な目で見詰めて来る波津香。とても和む。和める状況ではないのに、和む。毛繕いして身体スリスリしてくる姿は何だかあどけない。

 まさに地獄に仏、魔王城に小モフ。


 だが私の和み癒しタイムを邪魔する無粋な客達が続々出現。魔王の鎌とか大鬼(オーガ)とか中鬼(トロル)とか色々。プルプル震え、怯えるねずねず。可哀想に。

 丁度結界に罅が入り始めたので、波津香をポケットに隠した。


 そして……右手にマインゴーシュ、左手に魔術(風)製の短剣。



「来い。」



 パリンと音を立てて割れた結界。蹴り上げて魔物へ破片を刺す。刺さった魔物は醜く喚き声と血を撒き散らし、仲間を巻き込んで床に倒れる。先制攻撃は有効。

 その隙に背後から迫って来る大鎌の刃を、石突きを、魔物へと誘導。敵は敵の手で葬らせるのは基本。戦わずして勝つ。特に単騎ならば体力の消耗をどれ程カット出来るかが長期戦等の要。


 私自身はまだ未熟。故に大鎌の刃をマインゴーシュで何度か受けつつもう片方の短剣で魔物へ止めを刺す。


 この程度ならば恐らく親父や魔王なら殆ど動かず仕留めるのだろう。自分の手を殆ど下さず相手を殺す術、それがものに出来た時一人前だと言われた。ところで何の一人前であるか尋ねるといつも目を逸らされるのだが、一体私は何処へ向かっているのだろうか。


 飛ぶ斬撃が鎌から出たのでバク転で避ける。同時に縮地使って硬直状態の鎌へ近付き魔物側へと蹴り入れた。

 魔術で一時的に作られた武器は斬撃等の特殊攻撃放った後は暫く硬直が抜けない。但し魔王ならば硬直時間0.1秒。ほぼタイムラグ無しで攻撃移行可能。筋肉の鍛え方と持っている耐性の組合せの勝利だと豪語していたが実情は不明。

 単なる理不尽(チート)だと思うのは私だけではない筈。

 尚、私はまだ20秒は硬直する。今も短剣で斬撃飛ばせば魔術の代償として私自身が硬直する事となる。この敵陣真っ只中で。



「そこまでする必要性無いがな。」



 バッサバッサと避けられない敵は切り、それ以外の単調な攻撃仕掛けて来る魔物は同士討ちさせた。鎌さえなければ温い敵だ。これが魔王城とか本当に魔王詰んでる。

 これもきっとどっかの魔王が一度壊滅的被害を齎したからだろう。もう魔王襲来は災害そのものだと断言して良い。


 ある日弛んでいると責めて来るかつての先輩魔王、そして現魔王と戦う先代魔王。歴代最強ではなくとも歴代最速をマークする、場合によっては第三宇宙速度を平然と突破する魔王(変態)

 そんなスピード狂兼ストーカーに普通の魔王が敵う筈も無く、ある日壊滅……現在復旧中に爆弾が投下されたと。随分弱体化しているのも納得である。


 本当、御愁傷様としか言いようが無い(合掌)


 気持ちは大分、非常に分かる。多分その一点だけなら分かり合える同士にでもなれるだろう。だが、相手は人種差別の選民思想家だったらしい……異世界にも差別主義利己主義な永遠の厨二病がいるということだ。そんな事実を残念に思いつつ、魔王の所業を本人から聞いて頭を抱えた。


 曰く、雑魚のクセに粋がっている、と。

 曰く、慢心した奴を散々凹して心身共に物理で折ってやった、と。


 豪快に笑いながらどや顔する魔王はもう魔王ではなく覇王(ジャイ●ン)でいいのでは。最早『魔王』の一言ではその存在を説明しきれまい。


 だが現魔王は、相手が魔王で親父じゃなかったことだけはマシなのだろう。


 魔王は確かに鬼畜外道だ。しかしまだ相手の心身折る程度だから優しい。

 教育者・指導者として優秀ではある。厳しい環境に突き落とすにせよ、ちゃんと今までも基礎は大事にしていた。褒めるべきは褒め、締める部分は締める。

 現役時代自ら魔王軍を鍛えて歴代最強の軍を作った経験は伊達ではない。改めて、魔王敵にして良く人類絶滅しなかったと思う。


 一方で親父は元悪霊らしく相手の心身へ立ち直れない致命傷を与える。やることが的確に陰湿。

 ならば、どう陰険なのか。例えば二足歩行生物の男へ『禿の呪い』を掛けた話。それも、ただの禿ではなく死後も禿げ、子孫ももれなく禿げるおまけで付き。長耳に捕まった私を救出する際、あの(・・)長耳族の頭を波平にしたのである。あの集落は多分一生涯、更に次も波平になるのだろう。親父を怒らせた相手が悪くとも、半べそを見て気の毒には思った。


 親父の恐ろしいところは、随分手慣れた様子でやってたことだろう。きっと色々な所でやっていたのか。私も呪われていたらカッパ禿か落ち武者スタイルにでもなっていただろうか。正しく男の敵。


 結局、親父も只の不味飯製造機やMPKである訳ではない。普段見せないだけで、一応凄い実力があるのだった。流石外道。油断させてブスリといくスタイル。

 尚、凄く感心して褒めたらヘッドロックという過激な照れ隠しを発動した。後一歩で私を河原の向こう側へ飛ばす容赦のなさ。おじいちゃ(略)


 回想しながらさくさく魔物の波を超えて行った。もはや作業。次々延髄切り。無理なら頸動脈。どうせこの程度では死なない。結界を次張れるのは2時間後、それまでコツコツレベル上げ。死なないのに倒すだけで魔王城はレベル上がる謎。

 波津香にも経験値入っているだろうし、楽しみだ。


 今度はスライム見付けて一緒に育成してみるか。





 やっとモフモフ第一弾登場。


 次回は魔王様と対面です、宜しく御願い致します。

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