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それは、ある日の休日のことだった。夢華と姫菜が街へ遊びに行くこととなったのだ。


「ひーちゃんまだかなぁ……。」

駅の改札口前。夢華は待ち合わせ時間の10時よりも二時間早い8時頃に到着していた。


あまりに楽しみであった為、今朝は三時に起きた。そこから慣れない化粧を母に手伝ってもらいながら行い、母とともに吟味しながら洋服を選んだ。


「ねぇ、君凄い可愛いね。今暇?良かったら……。」

一人の高校生らしき男子が夢華に声をかける。


「すみません、友達を待っているので……。」


声をかけた男子がその場を後にすると、夢華はため息をついた。今日何度目だろうか。姫菜のことを待っているのに、来るのは見ず知らずの男子ばかり。苛立ちが募る。


姫菜に見てもらう為に時間をかけ、慣れない化粧をし、必死に選び抜いた洋服。見ず知らずの者達にいくら褒められてもまるで心に響かない。恐らく、姫菜に少しでも褒められでもすれば違うだろう。


姫菜のことを思い、夢華が何の気なしに振り向くと、そこには、夢華の苛立ちを更に募らせる者がいた。


「……神崎姫乃っ!?」

そこには、眠そうに目をこすり、とぼとぼと歩いている姫乃の姿があった。


姫乃と夢華は、公園で姫菜を奪い合って以来会っていなかった。あの日、夢華は姫乃にぼろ負けした。運動で負けたことのなかった夢華が、あれほど圧倒的な差を見せつけられたことはなかった。


姫菜の前で恥をかかされた。夢華には、それが嫌で嫌で仕方がなかったのだった。


夢華はギリっと葉を噛み締める。はらわたが煮えくりかえるとはこのことだろう。腹部が熱くなるのを感じ、その熱は徐々身体中へと駆け巡った。


夢華は、気づいたら姫乃を追っていた。



「待って!」

姫乃がその声に振り向くと、夢華が人混みをかき分けながらズンズン進んできていた。


これは面倒くさいことになるな。姫乃は足を止め、ため息をついた。


「ま、まぁここじゃ何だし場所を変えない?」

苦笑いの姫乃。無言で頷く夢華。



「それで何かな?」

数分歩き、公園へたどり着いた。姫乃は苦笑いで夢華に尋ねた。


「もう一回私と勝負して!」

夢華が姫乃をビシッと指差した。


やはりか。姫乃は再びため息をついた。寝不足で、家でゆっくりしていたかった姫乃であったが、訳あって仕方なく外へ出ていた。ただでさえ気分が乗らないのに、こんな厄介事に巻き込まれた。姫乃にとっては、所謂厄日というやつだろう。


「仕方ない……か。うん、そうだね、仕方ない。」

姫乃がそう呟き、目を閉じると、まるで別人のように、雰囲気が変わった。


転がっているサッカーボールを手に取る。恐らく近所の子どもの忘れ物だろう。


今までの眠そうでやる気のないものから一変、夢華をジッと見つめ、いつでも行動に移せるようなピリピリした雰囲気へと変わった。



結果は以前と変わらなかった。姫乃の圧勝。夢華はまたしても勝てなかった。



「も、もう一回……。もう一回!」

フラフラの夢華。


「もういいよ、止めよう?私飽きちゃった。……それより貴女誰かを待ってたんでしょ?時間大丈夫?」

退屈そうな姫乃。その姿が夢華を苛立たせた。しかし、それと同時にしまった、と思った。時計はすでに10時を過ぎていたのだ。



「ゆめきゅん遅いなー。」

一方、姫菜は待ち合わせ場所である駅に到着していた。

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