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「おはよう!ひーちゃん!」


「おはよう、ゆめきゅん。」


翌日、登校した夢華と姫菜は今まで以上に距離が縮まっていた。それは周りからも一目瞭然であった。そして、主に百合がそれについて冷やかしをした。しかし、姫菜と夢華は特に気にすることはなかった。


今までより仲良くなったね。

ポチの声に笑顔になる姫菜。それを見て夢華も微笑む。



二学期が始まる。憂鬱であった気分もどことなく晴れていき、姫菜は油断していると笑顔がこぼれそうになった。


「黒木姫菜さんはいる?」

廊下で姫菜が聞いたことのある声がした。


姫菜が廊下を見ると、生徒会長である雛子と副会長の由香がいた。


廊下で二人の対応をしたクラスメイトが姫菜の方を指す。それを見て雛子が教室へ入ってきた。


「今ちょっと良い?」

雛子が姫菜に言う。


「は、はい。」

突然のことに慌てる姫菜。そんな彼女を上から下までじっくりと吟味する雛子。


異様な空気に野次馬が集まる。百合は何やらメモを取り始める。校内新聞の記事にでもするのだろう。一方の夢華は雛子と由香を睨みつけていた。


「急にごめんね、詳しくはまだ言えないけど喧嘩しに来たわけじゃないから安心して。」

夢華の視線に気づいた由香が姫菜に言う。


「今日の放課後暇?生徒会室に来てほしいんだけど。」

腕を組み、雛子が言う。


その姿に、自身よりも小さな身長であるが、姫菜は威厳があると思った。一方の夢華は姫菜に対し、上から目線であることに不満があった。


「わ、分かりました。」


「あら、貴女良い子ね。そっちの子は偉く喧嘩腰なのに。」

チラリと夢華を見る雛子。



雛子と由香が去ると、夢華の機嫌が露骨に悪くなった。姫菜がそれを抑えながら過ごしていると、あっという間に放課後になった。


さて行くか。姫菜が席を立つと、百合がすぐさま駆け寄った。その顔はほしいおもちゃを目の前にした子供のようにキラキラしている。その顔を見て、姫菜はついてくる気だな、と思い苦笑いした。


そうしてる間に、教室の扉が勢い良く開く音がした。姫菜が見ると、そこには真顔の夢華がいる。姫菜は、相変わらず美人だと感心すると同時に、この子もついてくる気だなと思った。



少し廊下を歩くと、生徒会室に着いた。扉をコンコンコンと三回ノックをする。すると、生徒会所属の生徒が出てきた。同じ学年ではあるが、姫菜達とは面識のない生徒であった。


「はーい。……て、黒木さんと白河さん!?ど、どうし、どうしたんですか!?」

慌てる生徒。同級生にも関わらず敬語になってしまった。


「あ、えっと、会長に呼ばれてて……その、会長いますか?」

つられて敬語になる姫菜。



「お、おぉー黒木さん……となんだ、あんたもいたんだ。まぁいいや、入って。」

前半を笑顔で、後半は呆れ顔で言う雛子。


「わ、私も入りたいなーって……良いですか?」

空気気味の百合が苦笑いする。


「うん?貴女は?」


「えっと、お姫……黒木さんのクラスメイトの赤井百合です。出来れば新聞部の取材も兼ねてお邪魔したいんですけど駄目ですか?」


「へぇ、新聞部。」


「良いんじゃない?もう許してあげたら?」

奥にいた由香が会話に入る。


「ま、そうね。一年生だから関係ないもん。さ、貴女も入って。」

雛子のその言葉を聞くと、百合の目が輝いた。


三人が生徒会室に入ると、奥にある席へと案内された。百合と夢華で姫菜を挟むように座り、由香と雛子が対面に座った。


「それでひーちゃんに何の用ですか?」

席に座るや否や夢華が言う。


「まぁまぁ。ところでさ、学校慣れた?」

雛子が三人に笑顔で言う。今までの雛子なら敵意むき出しなはずだったが、今回はまるでない。


適当な世間話をし、場が温まったところで雛子が今までと違い真顔になった。


「ねえ、黒木さん?」


「は、はい。」


「貴女、生徒会長する気ない?」


「……え?」


「ま、今すぐに答えを出せとは言わないから。立候補する気があるなら私が推薦するね。」


「え、は、はい……。その、考えておきます。」



姫菜達三人が去った生徒会室。


「……うーん、どうなんだろ。」


「保留……多分今はやりたくない方が気持ち的には大きいだろうね。」

雛子と由香が話していた。


「黒木さんが生徒会長なら白河さんが副会長に推薦するんですか?」

プリント整理をしていた一年生が尋ねる。


「いや、あの子は私が嫌いだし向こうも私のこと嫌いだろうから推薦したくない。」

プイッとそっぽを向く雛子。


「あ、あはは。」


「でも黒木さんが生徒会長に立候補すれば白河さんも動くんじゃない?」

由香が言う。


「……そうだよねー……。」



姫菜、生徒会長ってのやるの?

生徒会室から出た姫菜は下校していた。ポチが好奇心から姫菜に尋ねる。


「やんないよ。私なんかが出来るわけないし……。」

口元を隠し姫菜が答える。周りに人がいないのを確認し、小声で早口で言う。もう慣れたものだった。


ふーん。じゃあなんで保留にしといたの?


「そ、その場で断ると角が立つでしょ?」


……あはは、そっか。

呆れ気味のポチ。

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