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賞味期限、提出期限、郵送期限……。人には様々な期限がある。また、自身の生命も同様に限りがある。これに関しては、人に限ったことではない。全ての生物に与えられたもので、これが尽きた時、その者の一生は終わる。
それは人や猫のみならず、女神も例外ではない。
その女神は、ある女子小学生に恋をした。人間と女神というだけでもタブー視されているが、さらに同姓だということで、女神は周囲から孤立してしまった。
それでも彼女の恋を諦めたくなかった女神は、思い切った行動に出た。
少女が中学校に入学するタイミングで、同じく自分も入学しよう、そう考えたのだ。
「あれ、もしかして貴女も友達いないの?」
人知を超えた彼女の力を持ってすれば、情報の改竄などいともたやすいものであった。事実、周りの教師に怪しまれることなく学校に侵入することが出来た。
「え、あの……それは、その……。」
「いやー、私県外から引っ越してきたから友達いなくてさー。あ、私真亀まさ、よろしくね。」
こう言っておけば周りの生徒を誰一人知らなくともおかしくないだろう。それに、こう言っておけば彼女なら友達になってくれるかもしれない。女神は、我ながら良い考えだ、と思った。
「は、はぁ。」
「ね、名前は?」
「黒木……黒木姫菜です。」
ずっと憧れていた人間。遠くから見ることしか出来なかった黒木姫菜がそこにいた。
ようやくこんなに近づけたのだ。彼女のために生きよう。たとえこの身体が消えて、彼女の中から自身の存在が消えようとも……。




