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「な、ななな……何しとんじゃボケェッ!!」

数秒の停止の後の怒号。普段のみさからは想像のつかないような物であった。


突然の大きな音にビクッと反応する姫菜。バチンという更に大きな破裂音の際、一瞬目を瞑ってしまった。再び目を開くと、押し倒され、目の前にあったはずの夢華の顔が無くなっていた。


覆い被さっていた夢華がいなくなり、姫菜が起き上がることが出来た。起き上がると、夢華が横腹を抑え、ゴロゴロと転がりながら、言葉にならない声を上げて悶絶している。


一方のみさは、痛がるような素振りを見せながら右手を振っていた。どうやらみさが夢華の横腹を殴ったようだった。


「こ、これはどういうこと!?」

そう言いながらみさはジロリと夢華を睨む。


「ちょ、ちょっとスキンシップしてただけ。」

痛みが引いたのか、その場に座り込む夢華。相変わらず横腹は抑えている。


「最近お姫へのストーカー行為が無くなったと思ったらすぐこれだ!油断してたよっ!」

ヒートアップするみさ。リビングに入ってきた時よりも息が荒く、額からは汗が噴き出している。


「人には我慢の限界があるから……その、たまにはひーちゃんに触れないと……。」


「約束したでしょ!もうお姫に大変な思いさせないって!それなのに……っ!?」

夢華への言葉の途中でみさは尻餅をついてしまった。


「み、みさっち!?」

慌てて駆け寄る姫菜。


「……ど、どうしたの?」

夢華はその場で少し心配そうにみさに声をかける。


「だ、大丈夫。多分急に大きな声だしたからだと思う。……ごめんね。」

苦笑いで答えるみさ。


よく見ると、目の下には薄っすら隈が見える。それに、姫菜がみさに近づいた時に気がついたが、みさの雰囲気が少し変わったような気がした。



と、取り敢えずソファーに座らせて何か冷たい物を飲ませたら?


ポチの助言に従い、姫菜がみさに肩を貸す。そして、ソファーに座らせた。その後、姫菜は飲み物を探しに台所へ向かう。


麦茶をコップに注ぎ、みさの元へ戻ると、みさはソファーの肘置きに頭を乗せ、今にも寝てしまいそうであった。



「……寝ちゃったね。」

数分後の夢華の言葉。その視線の先には穏やかな表情で寝息を立てているみさの姿があった。


「そ、そうだね……。」

みさの介入により有耶無耶になっていたが、再びの危機が訪れた。



数秒の静寂。


「ねぇ……。」


「な、なに……?」

姫菜は後ろに一歩下がる。



「そ、そんなに警戒しなくても……。ちょっと傷つく。」

シュンとする夢華。そんな彼女の姿に少し罪悪感を感じた姫菜であった。


いや、でも彼女の自業自得じゃない?

心を痛め、オロオロする姫菜にポチがズバリ言った。


確かにそうか。姫菜はポチの言葉に納得した。


「……今日はもう帰るね。また明日来て良い?」

懇願するように夢華が言う。


「あ、うん。また明日。」

トボトボと落ち込みながら姫菜宅を後にする夢華。姫菜はそんな彼女を玄関まで送り出した。


玄関の扉を開け、夢華を送り出した直後、それはやって来た。一瞬のめまい。本当に一瞬の出来事で、それほど気分の悪くなったわけでもなかったため、姫菜は気にしないでいた。



姫菜は、リビングに戻ると、誰もいないリビングでソファーに座り、くつろいだ。


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