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16

ある日の放課後、生徒会室に女子生徒の咆哮が木霊していた。その声は、廊下まで響き渡り、二年生以上の生徒は、またか、と苦笑いし、一年生は何事かと慌てていた。


「あー!むかつくー!」

声の主は、生徒会長である雛子であった。


雛子の手元には、最近発行された校内新聞が置かれている。それらを机にぶちまけ、雛子は叫んでいたのだ。


「雛ちゃん、そんなに散らかしたら駄目でしょ?」

散らかった校内新聞を片付けながら由香が言う。普段のクールな印象とは打って変わり、同い年のはずなのに、どこか、年上のお姉さんのような雰囲気であった。


「けど、ゆっちん!」


「けども、でももありません!片付けなさい!」


「うっ、はーい……。」


由香が喚く雛子を一蹴し、散らかされている校内新聞を片付けさせる。感情の赴くまま猪突猛進する雛子を唯一静止させることの出来るのが、由香であった。彼女達は、幼稚園からの付き合いで、お互い気心知れた仲だった。



雛子が不満があるのは、校内新聞の記事の内容だった。夢華、夢華、たまに姫菜。それに比例し、校内でも夢華と姫菜の話題で持ちきりになっていたのだ。新聞部に、自分の記事を書くなとは言ったが、夢華と姫菜にばかりにスポットライトが当たるのは面白くなかった。



「やっぱ、白河さんにはもう一度、黒木さんにも釘を刺しに行かなきゃね。」

校内新聞を綺麗に片付けると、雛子がそう言った。


「違う、そうじゃない。」

雛子が言い終わるか終わらないかというところで由香が早口で反論した。


「じゃあ、どうすれば良いのっ!?」


「どうもしないの、ほら、早くこの書類に目を通して。」


「もう見たもん。」


「あぁそう?なら今日はもう帰って良いんじゃない?帰りにアイスでも食べて行く?」


「あ!アイス良いねー……ってそうじゃない!」

雛子の渾身のノリツッコミ。


「騙されなかったかー……で、何が不満なの?」

このままアイスに釣られて忘れてくれると思っていた由香であったが、その見立ては間違えていた。仕方がないのでもう少し話を聞くことにした。


雛子の幼馴染である由香には、もう分かっていた。こうなってしまっては満足するまで諦めることはない。ただ、今回は特に面倒なことになる気がしていた。


その反面、面倒なことにならなければ良い。そんな淡い期待を抱いていたが、もちろん消される。


「だからっ!白河さんと黒木さんばっか目立ってるでしょ!?生徒会長の私を差し置いて!」


やはりか、と苦笑いする由香。


「もー、甲高い声でキャンキャン鳴かないで。頭痛い……。」


「もー!もーもーもー!」


とにかく話題を逸らそうとする。由香の常套手段だ。


「牛かな?」


「違うわよっ!……あれ?何の話してたっけ?」

由香の思惑通り当初の話題が頭から抜け落ちている。


「帰りにパンケーキ食べるかアイス食べるかってので揉めてたじゃない。」


「あれ?そうだっけ?」

見事にはぐらかされた雛子。


ここまでくればあと一押し。


「えぇ、私がパンケーキ食べたいって言ったら、雛ちゃんがアイスが食べたいって言ったじゃない。」


「う、うーん?ごめん。」

雛子は、混乱しながらも受け入れようとする。


「さ、帰りましょう?」


「うん。」



生徒会長は雛子であるが、そんな彼女の手綱を握っているのは、書記である由香であった。それを知らないのは、今年入学してきた一年生と、雛子自身のみであった。



「何が食べたい?」


「うーん、バニラのアイス!」


「ふふ、分かった。今日は私が奢るね?」


「本当!?ゆっちん大好きっ!」


「ふふ、私もよ、雛ちゃん。」

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