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隣世界のリネッタ  作者: 入蔵蔵人
孤児院のリネッタ
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それぞれの終わりと ~城内では

 西大陸のやや南に位置するディストニカ王国の王都ゼスタークは、草原に囲まれたなだらかな丘に広がっている大きな街である。東には稀に魔獣が出現する森が広がっているものの、街は魔法陣の刻まれた高い外壁に囲まれ、オルカ王が歴王に指名されてから新たにつくられた獣人(ビスタ)だけで構成された赤狼騎士団の活躍もあり、ここ40年ほどは王都民の被害は(・・・・・・・)無いに等しい。


 外壁の内側は、北部は第三壁内までスラム化してしまってはいるが、東部から西部にかけて農業や酪農が盛んに行われており、温和(おんわ)な気候が1年中続くのも相まってその収穫量は王都の食事ほぼ全てが(まかな)えるほどである。


 その外壁と住居区を分けているのが第三壁と呼ばれる、外壁に負けない高さの壁だ。

 袋に入った荷を乗せた荷車や(ほろ)の付いた馬車がこの壁をくぐるには第三壁の南門にある大きな魔法陣の審査を受けなければならないので、必然的に商人や要人は王都の正面玄関である南門に集まることになる。


 第三壁内には、西には傭兵ギルドを中心とした傭兵街、南には王都民向けの店舗や、少し高めの魔法具店、そして東には王都民向けの仕事仲介・斡旋所や孤児院、第三壁の警備を担当している警備兵の詰め所など国営の施設が固まって配置されている。


 他にも、第二壁寄りの土地には東から南にかけて魔術師や商人の屋敷など大きな建物がまばらに建っており、その隙間を埋めるように農民の家がびっしりと建っている。数十年前までは西門から北に向けて娼館などの歓楽街もあったのだが、奴隷の廃止や獣人(ビスタ)差別の撤廃などによってほぼ空き店舗になってしまっていた。その跡地に何を入れるかが今後の課題になっている。


 更に内側にあるのが第二壁だ。

 貴族や城で働いている者たちの中には、第二壁から内側を「王都の中」、第二壁から外側を「王都の外」と呼んでいる者もいるが、それは、重要施設や貴族の屋敷が第二壁から内側にあることに由来する。


 第二壁内には、大型の高級商店や高級宿、第二壁から城壁までの警備を担当している魔術騎士団と獣人騎士団の詰め所、王都立図書館、各種精霊神殿、学園、魔術師協会のディストニカ本部、さらに第一壁に沿って貴族たちが王都で過ごすための屋敷や、国に雇われている生成師の家屋などもある。

 第三壁の魔法陣を通過した荷車や馬車でも第二壁に入るには更に厳しい魔法陣での審査があり、第三壁とは違い個人で通過するにも身分証の提示と通行料が必要になる。


 第二壁内の余裕のある建物の配置は、狭い路地を少なくすることによる犯罪抑制の目的もあるが、第三壁内に比べてそこに住む王都民の少なさにも関係している。

 そもそも王都民は大半が農民なのだ。そして、第二壁内で働いている王都民の家も、大多数が第三壁内にある。

 つまり、第二壁内に屋敷があるのは、領地を離れて一時的に王都で過ごしている侯爵以下の貴族と、特に裕福な商人、王都を中心に活動しているランクAの傭兵パーティー、国に請われてお抱えになった生成師、あとは第一壁内や城で働いているお金によほどの余裕のあるごく一部の王都民だけなのだ。


 とはいえ、第三壁内に住む王都民に不満はあまりない。

 第三壁内でも、スリや揉め事はあるが犯罪は少ないし、排泄物は農業のために定期的に集められ、大通りもゴミ拾いの仕事をしている低所得者(スラムの住人)が居て街はそこそこ清潔に保たれている。

 水も至るところに自由に使える井戸が設えてあり、生活排水の水路も整備されている。

 薪は高いが、温暖な気候の為、火を使うのは煮炊きくらいで、近所に一人でも魔法陣が扱える者がいれば5級の魔素クリスタルさえあれば問題ない。


 王都民の子供は第三壁に生まれたとしても希望すれば第二壁内の学校に通うことが出来るし、遠ければ寮に入ることも出来るし、重い病気になれば第二壁内から無償で精霊神殿の神官が診に来てくれる。


 王都民は恵まれているのだ。

 それを理解しているからこそ、不満はほぼ生まれない。――スラムに住む(王都民ではない)人々と、(ヒュマ)の支配する国に反発する一部の獣人(ビスタ)は別としても。


 そして第一壁内にあるのは、国に仕えている魔術師たちの魔術研究所や、兵士の訓練所などの国の重要な施設だ。ここに屋敷を構えていいのは、公爵、そして占術師長だけである。

 城詰めの魔術師や占術師は城内の一角に専用の個室があてがわれているので城の近くに家を構える必要はなく、その家族は貴族でもない限り第三壁内に家がある事がほとんどだった。


 その内側、城をぐるりと囲む城壁の中にあるのが、この国の王であり、精霊王に選ばれし歴王である、オルカ・フルール・ディストニカ王の居城であり、王都の象徴でもあるゼスターク城。


 ゼスターク城の敷地は広く、面積としては第一壁内と同じかそれ以上あるかもしれない。

 城内は、中央と東西南北の5つの区画に分かれており、中央は守護星壁(ガーディアン・ウィル)の設備や謁見の間や王の居住区などがあり、東には騎士団や王都の兵士をまとめつつ外交なども行う軍事本部、西には城詰めの魔術師や占術師たちが詰めて日々研究を続けている魔術本部、南には王都での商いから他国との輸出入などを一手に担う財務本部、北にはその他の雑務を請け負う小さな区画が詰め込まれていて、食堂や購買部などもそこにある。

 それぞれが独立しながらも協力しあって、日々国のために動いているのだ。


 そのゼスターク城の西の棟。城詰めの魔術師と占術師たちが集まる魔術本部の最上階にある占術師長の私室で、占術師長を含めた3人の男女がソファに向かい合って座っていた。


 一人は、白い髭を蓄えた初老の(ヒュマ)

 この部屋の主であり、この国に仕える全ての魔術師と占術師の頂点ともいうべき人物である、占術師長カーディルだ。

 銀糸で細やかな刺繍のなされた黒と紺のローブに、自慢の髭が映えている。その灰色の瞳は全てを見透かしているような錯覚を起こさせ、対峙した者は例え魔獣であっても怖気づき逃げ出すという。

 しかし、見事な白い眉はさっきから下がりっぱなしで、今はなんとも情けない顔になっている。


 その向かいに座っているのは、すらりと伸びた長い足をきちんと揃えて座っている(ヒュマ)の女性だ。腰まである長い黒髪は真っ直ぐで、手入れを十分にしているのかサラサラで艶がある。

 彼女は、カーディルの末娘であるロイスだった。彼女は無地の紺のローブを羽織っているが、きゅっと腰で絞ってワンポイントに淡いピンクの蝶の飾りがあしらってあり、腰から下はとても女性らしいラインになっていた。

 多少目尻が上がっているものの端正な顔立ちで、笑えば花が咲くであろう彼女は今、残念なことに無表情だった。


 ロイスの隣に座っているのは、城詰めの魔術師でありフォアローゼス侯爵家の三男であるテスターだ。

 肩まである銀の髪はいつものようにひとつに纏め、青みがかった澄んだ緑の瞳は面白そうに細められている。テスターもロイスと同じ無地の紺のローブを羽織っているが、これは、この紺のローブが城詰めの魔術師に無償で配られるものだからであった。

 同じように占術師には無地の緋色のローブが配られるが、もちろん式典や外出する時に着て行くようなものではなく、言ってしまえば城の西棟専用の室内着のような位置づけであった。


「消費型の精霊の遺物に、精霊の眷属に、極めつけが、新しい魔法陣だと……?」


 ロイスとテスターにそれぞれ最終報告を聞いたカーディルが重々しく口を開いた。ソファの背もたれに背を預けて天井を見上げ、下がった眉を隠すように右手で額を覆っている。


「侯爵の件が霞んでしまいますね。」


 無表情のまま、ロイスが言う。


「侯爵の件はもういいだろう。王都に魔獣が現れたと聞いたときには肝を冷やしたが、(ふた)を開けてみれば被害は侯爵の私兵一人だけだったのだろう?しかも王都民ではなく、傭兵だったと。」

「魔獣ではなく、王都民誘拐についてです。しかも侯爵はのうのうと領地に帰っただけで、妾の息子が犯人になったとか。」


 その言葉にテスターが眉を寄せて呻くが、カーディルは小さなため息をはいただけだった。


「犯人が誰かなど、もういい。侯爵にしろ警備兵にしろ魔術師協会にしろ、明確な証拠がない限りこれ以上はどうもできん。ここ十年以上、森からの魔獣の被害もなく、大きな犯罪も起きていなかったからな。平和に浸かりきった緊張感のない生活は気の緩みを生むものだ。魔獣は速やかに討伐され、王都民に被害が及ぶことはなかった。それで十分だ。警備兵の処遇については軍部に任せればいい。協会は……放っておけばいいだろう。見習い生成師の監視を強化するべきかもしれんが、それは個々の判断に委ねるべき案件だ。……侯爵本人は、領地に帰ってもうあと数年は王都には戻らないだろう。その間に代が変わるかもしれん。まあ、今回は歴王が見逃すと言ったのだ。次は無い。それでいいだろう。」

「……そうですか。」

「問題があるとすれば、そうだな、魔獣と戦って傷ついたという獣人(ビスタ)の少年の方だ。テスター、本当にその獣人(ビスタ)の少年は、生きているんだろうな?まだ子供だったのだろう?」


 カーディルが視線を向けると、テスターは静かに頷いた。


「はい。僕はあまり見ていなかったのですが、その戦いぶりをギルフォードが気に入ったようで、獣人騎士団に見習いで入団させて騎士修行させるって言ってましたよ。ですから、生きていることは確実です。」

「……そうか。」


 カーディルが、「獣人(ビスタ)の見習い騎士か。」と言葉を漏らす。


「ああ、それと。」


 と、テスターが思いついたように声を上げた。


「消費型の精霊の遺物、ですっけ、それ、心あたりがあるんですけど。」


 次はロイスがテスターの言葉にぴくりと反応した。カーディルは「何?」と続きを促す。


「ロイスの報告を聞くに、それ、第三壁内に出回っていた干し花(ポプリ)のことですよね?売っていた獣人(ビスタ)の少女っていうのは、名前はリネッタですよ。ほら、さっき僕の報告にあった、侯爵に拐われた獣人(ビスタ)の少女っていうのが、リネッタです。拐われた理由はわかりませんでしたけど、僕、あの夜(・・・)、侯爵の別邸に、ロマリアともうひとり、リネッタらしき光を視たんですよね。ロマリア……ああ、生成師の少女ですけど、その子は頑なに知らないって言ってましたけど、でも、あの屋敷にリネッタが居たことは確実です。」

「ふむ。」

「で、リネッタが売っていた干し花(ポプリ)は、精霊の遺物という結果だったんですよね?ギルフォードから聞いた話だと、リネッタは、その干し花(ポプリ)を一気に20も30も作ってたとか。――で、以前、もう数か月も前のことですけど、僕もマニエさんにリネッタの事を聞いたことがあったなって思い出して。報告を聞きながら、どこで聞いたんだっけなってずっと考えてたんですけど……そう、守護星壁(ガーディアン・ウィル)が消失した事を調べてた時に聞いたんですよ。ちょうど守護星壁(ガーディアン・ウィル)が消失した日あたりに、リネッタが孤児院に迷い込んできたって。」

「ふむ……。」

「さっきのロイスの報告にもありましたが、リネッタの保護者は、魔術師らしいですね。で、僕の報告に繋がるんですが、ロマリアの持っている未発表の魔法陣ってのが、リネッタの保護者である魔術師から譲られたものなんですよ。そして――そのロマリアが受け取った魔法陣は、僕が思うに、干し花(ポプリ)を創り出す魔法陣だと思うんです。」

「その根拠は?」

「単純に、ロマリアにもらったんですよ、干し花(ポプリ)を。“孤児院にいる間は、魔素クリスタル生成の合間にこれを売って、そのお金は全額孤児院に寄付したい。”そうですよ。」

「ううむ……。」


 カーディルが呻く。


「つまり、未発表の魔法陣は“消費型の精霊の遺物をつくる”魔法陣で。それを創り出した魔術師は――」

「もしかしたら、守護星壁(ガーディアン・ウィル)の消失に関わっているかもしれない、ということです。あと、」

「まだ何かあるのか。」

「精霊の眷属の話です。僕とギルフォードが見た白い小鳥と、獣人(ビスタ)の少年ヨルモや、侯爵の別邸のメイドが見たというねずみ、――まあ他にも、空と同じ色をした鳥だとか屍肉を漁る赤い犬とか闇に紛れて大きな鳥が飛んでいたとかいろんな噂がありますが――それらは本当に、精霊の眷属なのでしょうか?」

「使い魔は、魔法陣も精霊の力も刻印(スキル)精霊の祝福(ギフト)も使えません。だから貴方も、最終報告に“精霊の眷属らしき小動物”と書いたのではないのですか?」


 ロイスがちらりと横のテスターを見る。テスターもロイスにちらりと視線を向け、小さく頷いた。


「うん、そうなんだけど、でも、もしかしたら、あの未発表の魔法陣を創り出した魔術師なら、そういう使い魔を召喚する魔法陣だって創れるのではないかと思うんですよね。初代歴王様のお言葉に、“魔法陣は全てを生む”とあります。僕達がそこに辿り着けていないだけで、本来は魔法陣でそういうことも可能なのではないでしょうか?」


 カーディルが、髭をなでながら小さく唸った。


「あり得なく、も、ない、が……。お前も知っているだろうが、既存の魔法陣を改善するのは新たに創り出すと同じくらい難しい。そんな簡単に成してしまうような魔術師がいると知れば、どの国も欲しがり、大きな戦争が起こるだろう。しかし、そんな魔術師がいるという話は聞いたことがないし、報告にあった名前も聞いたことのない名前だったな。」


 ロイスが「ヴァレーズ・サニティ・ステライト、ですね。」と書面に目を通しながら答えた。


「はい。その魔術師から、マニエさん宛に手紙が来たそうです。リネッタを連れて王都から旅立つと。魔法陣はロマリアに託すから、ロマリアの好きに使って欲しい、と書かれていたそうです。これにはマニエさんも驚いていました。魔法陣の方は、魔法陣の所有権を持っているロマリアの意志がかたく、さすがに見せてもらうことはできませんでしたが、話によるととても小さい魔法陣で、しかも6級の魔素クリスタルで失敗なく発動するそうです。しかも灯りの魔法陣よりもシンプルなものらしいです。

 僕が思うに、その魔術師を国に引き入れることができれば、この国の魔法陣技術は他国より何十年も先をいくことができるでしょうね。」

「それほどか……。」

「それほどです。」

「未公開の魔法陣なんて聞いたら、第二壁内どころか、城内で犯罪が起きかねないのでは?侯爵も、実はその魔法陣の事を知っていてリネッタを攫ったのかもしれませんね?」


 薄ら笑いの混じったロイスの言葉に、テスターは「まさか。」と鼻で笑い、カーディルは「あの男ならあり得る。」と盛大に顔をしかめた。


「もちろんロマリアには、魔法陣のことは他の子供たちをはじめ誰にも言ってはならないときつく言い聞かせてあります。あの孤児院には協会で仕事をしている子供もいるらしいですからね。ですが、なにぶん入都規制のゆるい第三壁内ですし、孤児院の監視兼警備を増やして、ロマリアには出来るだけ出歩かせないようにしています。干し花(ポプリ)の歩き売りは、以前リネッタがしていたという6日に1度に60束を予定しています。朝にロマリアが干し花(ポプリ)を作り、それを持って他の子供達が第三壁内の大通りを売り歩くような形にしました。材料もロマリアではなく孤児院の少年らが森から摘んでくるようです。孤児院の子供らには、ロマリアがリネッタから作り方を教わったということにしておきました。ああ、城での研究用に干し花(ポプリ)の提供はしてくれるそうですよ。」

「そうか。まあ、それだけでもありがたい。それはそうと、その魔術師が国外に出てしまう前に、どこかで捕まえて話を聞きたいものだな。」


 ぼそりとカーディルがつぶやく。それにいち早く反応したのはロイスだった。


「同意します。今日中に、占術師長の名前で捜索隊を組む案を上に出しておきますね。」

「いや、ロイス、お前そこはまずワシに聞くところでは……ああ、いや、まあいい。捜索する隊員には、魔術師はもちろんのこと、連れの獣人(ビスタ)の少女も“国賓の扱いをせよ”ときつく言いつけておくのだぞ?」

「もちろんです。人選には私も加わります。」


 半ばあきらめ顔のカーディルに、全く動じずにロイスは笑みを顔に貼り付けて静かに頷いた。テスターは、普段の威厳ばっちりな占術師長とのギャップに、笑いだしてしまいそうなのを必死に隠して押し黙っていた。



 こうして、占術師長(の娘のロイス)の指示のもと、魔術師ヴァレーズ・サニティ・ステライトと獣人(ビスタ)の少女リネッタの捜索隊は結成されることになった。


 選ばれた隊員達は、“見つけ次第出来るだけ大きな街に立ち寄らせ、その街の最上級の宿にて国からの使者を待たせよ”という指示に揃って首を傾げた。しかも、待たせている間の旅費は全て国持ちだというのだ。そうして潤沢な資金の元、捜索隊の総勢40名は結成された次の日にはそれぞれ10人ずつに別れて王都を発って行った。


 それと同時にディストニカ王国の全ての領主の館へと手紙が飛ばされる(・・・・・)ことになった。


 “ヴァレーズ・サニティ・ステライトという魔術師を見つけ次第、領主の屋敷にて国賓として招き入れ、すぐに王都に知らせよ。国からの使者が到着するまでは出来得る限り最高級のもてなしをせよ。その魔術師は、混色(まぜいろ)獣人(ビスタ)の少女を連れているが、その少女も国賓の扱いをせよ。”


 そう書かれたその鳥の形をした手紙は鳥よりも速い速度で空を通過し、遠くの領地にも3日も経たずに着いた。

 それは、国内に強大な魔獣やドラゴンが現れた際等に使われる緊急用の通信方法だった。遠い領地ほど等級の高い魔素クリスタルが必要で、1級の魔素クリスタルも数個割ることになった。つまり、それほど重要視されている案件だということだ。


 この手紙を確認した各地の領主達はその魔術師と獣人(ビスタ)の少女を見つけるべく、領地の兵士や騎士に周知させた。そうして国庫に眠っていた高級な魔素クリスタルを何個も消費し、リネッタ包囲網は着々と作られていったのだった。

_________


カーディル

 ディストニカ王国の王都ゼスタークで、城詰めの魔術師と占術師を束ねている占術師長。見事な白髪に、同じく白い髭は彼のトレードマーク。(ロイスはチャームポイントだと言っている。)魔法陣に対して深い知識を持っている。他の占術師とは違い、新たな魔法陣を創り出すことよりも、城詰めの魔術師や占術師の教育に力を注いでいる。オルカ王とは仲が良いらしい。


ロイス

 少しつり目だが、端正な顔立ちに長い黒髪が美しい、カーディルの遅くに出来た末娘。両親にも兄や姉にも溺愛されて育ったのにもかかわらず、わがままな甘えん坊ではなく、父親を溺愛する不遜な娘になった。父親の魔術師の血を濃く受け継いでいるようで魔術師としての素質は高い。テスターより若いが同期で、占術師になる日も近いと言われているが、彼女はどちらかというとカーディルの秘書として働いている方が性に合っているし天職だと思っている。


テスター・リーリア・フォアローゼス

 美しい銀髪の好青年。侯爵であり魔法陣の使えない父と、他国の貴族であり魔術師でもあった母の間に生まれた5人兄妹の三男坊。兄が二人居るが、長兄には魔術師の素質が低く領地で領地運営について父親に直に教育を受け、結婚もしており長男もいて、侯爵家を継ぐことが既に決定している。次男は魔術師の素質がそれなりにあったがどちらかと言えば武闘派で、領地の騎士団を纏める役についている。その中で三男のテスターは魔術師の素質が飛び抜けていたため王都で魔術師の教育を受けることになり、そのままの流れで城詰めの魔術師となった。もうあと5年も経たずに占術師になるだろうと噂されている。

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