表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
隣世界のリネッタ  作者: 入蔵蔵人
孤児院のリネッタ
76/299

24-5 ダスタン

 椅子に座ったまま、いつものようにガツガツと机の脚を蹴る。


 何が、“お父様の言うとおりにするのよ”だ。クソが。

 ぶすっとした面持ちで、椅子の背もたれに体重を預ける。


 確かに、本妻のババアに虐められていた母と僕、そして弟を第二壁内の本邸からこの別邸に移してくれたのには感謝しているが、そもそもあのクソ親父がメイドだった母に手を出さなければ、こんなことにはならなかったのだ。


 “この屋敷を追われたくなかったら”だって?妾になってしまった母は、親父の領地に帰りたがっていたはずだ。本妻のババアだってそれを望んでいたのに、幼い末の弟を使ってそれを引き止めたのは親父じゃないか。


 それに、この屋敷に実際に住んでいる母や(長男)に断りもなく汚らしい獣人(ビスタ)を部屋にまで上げるなんて。この屋敷に住んでいる者として、その獣人(ビスタ)がどういう奴か確認する権利はあるはずだ。


「クソッ」


 思い出してまたイライラする。

 物心ついた辺りから、メイドが“あの男(領主)は、女に見境がない”と言っているのを聞いていたが、子供ながらに、全くもってその通りだと思っていた。聞けば領地にも妾とその子供を何人も養っているらしい。


 本妻のババアがイライラしっぱなしになるのも頷ける話だ。怒りの矛先が妾やその子供に行くのは、表立ってあのクソ親父に盾突(たてつ)けないからだろう。結局全ては親父のせいなのだ。


 そのクソ親父は、なぜか最近ずっと王都に居座っている。領主である親父に代わって今現在領地を治めているのは、本妻の長女と第二夫人の長男だ。その2人はかなり優秀らしく、卒業するのが難しいことで有名な隣国ティリエーシカの学院をストレート卒業したと風のうわさで聞いた。まあ、会ったこともないので本当かどうかは定かではないが。


 領主代理は本妻の長女、ということになっているらしいが、実際に領地を経営をしているのがどっちなのかは分からないな、とも思っている。そもそも、あのババアとクソ親父の間の子供なのだ。いかに頭が良かろうが、あれらの間で育てられた子供の性格が良いわけがない。


 ――それにしても遅いな。


 人差し指の爪を噛みながら、部屋の扉に目をやる。

 待っているのは、商人の男だ。

 表向き親父の商人となっているギッシュは、元はと言えば僕が懇意(こんい)にしている商人だった。


 ギッシュは、どこにでも居るようなただの商人だ。しかし、取り扱っている商品の中には胡散臭い品がいくつかあり、それが僕の目を引いたのだった。


 僕から情報を得たギッシュが親父に取り入って、親父と取引のできる商人になるのは簡単だった。まあ、何人いるかもわからない妾の息子である僕とは違って、親父はお抱え商人を何人も持っているわけで、そのうちの一人になったというだけの話なのだが。


 そのギッシュは、親父が連れてきた奴隷と面識があるらしく、あの獣人(ビスタ)の方の奴隷について、親父が雇った傭兵とギッシュが話していた、と、屋敷のメイドが教えてくれたのだった。


 早速ギッシュを呼びたしたのだが、いつもはすぐ来るというのに今日はやたらと遅い。


 机の引き出しから、ギッシュから買った“干し花(ポプリ)”を取り出して、嗅ぐ。心が安らぐような香りで、僕はこれを気に入っていた。しかし、これは偽物だ。


 ギッシュに聞いて、本物の干し花(ポプリ)をメイドに買いに行かせたが、タイミングが悪かったのか手に入れることはできなかった。ギッシュが言うに、本物は偽物とは一線を画す品質らしい。


 干し花(ポプリ)の、カサカサという乾いた音を聞きながら目を閉じていると、ようやく扉をノックする音が聞こえた。



 しかし、入ってきたのはギッシュではなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ