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隣世界のリネッタ  作者: 入蔵蔵人
孤児院のリネッタ
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8-1 キースと薬草 4

「そういえばキース君、薬草ってどれぐらいで売れるの?」

「んー、質にもよるけど、乾燥させた薬草5本で石貨15枚くらいかな。うちで取り扱ってる下級の回復薬が1本銀貨1枚するから、一本作るのにどれくらい薬草を使ってるかはわからないけど、買い叩かれてはいるとは思う。あ、たまーに、魔獣とかの討伐隊が組まれる前とか、石貨20枚くらいで買ってもらえたりすることもあるよ。」

「銀貨1枚……」


 私はその値段に今日一番の衝撃を受けていた。薬草の売値ではない。回復薬の値段にだ。


「屋台の肉串2本と、回復薬1本の値段は同じなのね……。」

「そこ?!」

「肉串が高いのかしら?それとも、下級の回復薬が安いのかしら?」

「あー、屋台通りの肉串は高い、気がするかなあ。でも、うちの店の近くの宿屋兼食堂をやってるところは、あの串の半分くらいの肉と野菜とパンで銅貨8枚だし、大して変わらないか。でも、美味しそうなのは、屋台のほうだよね。」

「そうね。」


 屋台での食事は店で食べるよりもいくぶん安いと思っていたのだが、どうも違うらしい。王都だから屋台も高めの設定なのだろうか?では、なぜあんなに屋台通りは賑やかなのだろう?やはり、匂いに誘われて集まるのだろうか。


「屋台を出すには組合に入らないといけないんだけど、組合費とか色々お金がかかるみたいだよ。だから高くなっちゃうのは仕方ないんじゃないかな~。」


 商人の息子らしく、豆知識を教えてくれるキース。もしかして薬草を売り歩くのにも、組合への加入が必要なのだろうか?いや、さすがに石貨15枚程度の草を売り歩くのに組合に入れとは言われないか。


 昨日乾燥させておいた花は一束石貨5枚で売る予定だが、薬草は5本で石貨15枚で売り歩こう。売れなければならないのなら薬草はもう少し安くすればいいのだろうが、売れる必要性は全く無いのでこれでいいだろう。


「薬草はそのまま食べたりはしないの?」

「そのまま?うーん……そのまま食べても、魔法の回復薬みたいにすぐに傷が癒えたりはしないと思うよ。体には良いかもしれないけれど、なんていうか、食べられる普通の草と変わんない、と思う。食べたこと無いからわかんないけど。」

「そうなのね。」


 薬草、とは名ばかりのようだ。私はさっき採ったばかりの、かごいっぱいに詰め込まれた薬草の1つをつまんで、かじってみた。


「………。」

「………。」

「食べられないわ。」

「そ、そう。」


 この強烈な苦味が、魔法陣で回復薬になる過程でどうやって軽減されるのか。いつかお金が自由に使えるようになった時にでも試してみたいものだ。


 そんなこんなで王都に到着し、キースは孤児院まで送ってくれた。


「他の魔法陣も調べておくから、また会いたいな。」

「そうね、今日は楽しかったわ、ありがとう。」


 そう答えて笑うと、キースの表情はぱあっと明るくなる。なんというか、子犬のようである。


「うん!じゃあまたね!」


 キースは手を振りながら帰っていった。私は、一応キースが見えなくなるまで見送り、部屋に戻ったのだった。


 薬草は、明日、雨がふらなければ太陽で干そうと思っている。魔法で水分調整した根菜よりも太陽で干した根菜のほうが美味しいのだから、もしかしたら回復薬に使う時も太陽で干したほうがいいのかな、と思ったからだ。

 あと、単にこの3日間で歩き過ぎたというのもある。ちょっと頑張りすぎた気もしていた。もともと引き篭って研究している方が性に合っているのだ。こんなに歩いたのは久しぶりだった。

 なので、明日は薬草を干しながら、ちょっとゆっくりしようと心に決めていた。

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