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白亜の箱庭
その城は、国の成り立ちを象徴するかのような、白亜であった。
城壁も、城門も、円錐形の屋根も、全てが白。
精霊王に祝福されし王と人々の住まう国としての誇りの色。
その城の中でも特に奥まった場所に、小さな小さな秘密の小部屋があった。
壁一面に描かれているのは、精密な魔法陣。その中心に座っているのは銀の長い髪に銀の瞳、そして特徴のある耳をした少女であった。清らな白い布を何枚も重ねたドレスを纏って、儚いという言葉をそのまま人にしたかのような少女の顔は今、柔らかく微笑んで自らの膝にすがるようにして眠っている男を見ている。
その男は少女と同じ銀髪に銀の瞳をした、壮年の男だ。
「可哀そうなお父様……」
少女が、そっと白髪の混じる男の頭を撫でる。その瞳は慈愛に満ちている。
「奪われた力は、わたくしが取り戻してみせます。どうか、今は心安らかにお眠りください……。」
告げられる言葉に、しかし眠ったままの男は目を閉じたまま、何も返さなかった。




