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隣世界のリネッタ  作者: 入蔵蔵人
森の国のリネッタ
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スイッチを切り替えてみよう!

 ギルドの帰り道に屋台で軽い昼食を済ませ、私は自分の宿の部屋に戻ってきていた。


「うーん……」


 ベッドに仰向けに転がり、うなる。


 “人が見ている前で、霊獣化(バーサーク)っぽい戦い方をする。”


 近接戦での実戦経験がほぼない私には、難題である。


 今までは、鳥は魔法で撃ち落としていたし、獣は眠らせたり、召喚獣を使って倒していた。

 そう、何を隠そう私は根っからの後衛職なのだ。


 そんな普段は誰かの後ろに隠れている私でも、付与魔法(エンチャント)を使えば、半分魔獣化している今の体なら相当な力は出せるだろう。しかし、経験豊富な狩人であるシルビアのような動きはできない。獣と対峙したとき、最初にどう動けばいいかすらわからない。


 だから、例えば私が殴りかかったとして、相手に避けられたら最後、体制を崩した私は確実に反撃をくらう。もちろんそこは防御壁の魔法(プロテクトシールド)でどうにでもなるのだが、それは、誰も見てないからできることだ。

 私が攻撃を受けたとして、相手からの反撃を不可視の壁が(さえぎ)ってしまったら、さすがにそれは霊獣化(バーサーク)の力です!という言い訳は通用しないだろう。霊獣化(バーサーク)は、身体強化の魔法なのだ。そんな、魔法陣のようなことは、できない。


 魔法陣のような、か……。


 私の“裏設定”も、話しておくべきだっただろうか。

 ふと、そんな考えが頭をよぎる。


 裏設定というのは、私が魔術師に拾われてからの5年間のうちに、実は特殊な力を手に入れていた……という、ある意味トンデモ設定だ。さすがにそれを話してしまうと大事(おおごと)になりかねないので黙っていたが……いや、まだだ。まだ、話すべきではない。

 その内容というのが、さすがにちょっと無理があるというか、私でも、他人事として聞いたらまず信じないくらい突拍子もない設定なのだ。簡単に誰かにしゃべっていい情報では、ない。

 裏設定というのは、いつか、ここぞ!という時に使うのものだ。まあ、作り話なんだけど。


 そう、まだ、裏設定を使う時ではない。

 何か手があるはずだ。少しでも、シルビアの動きに近いような戦いができる方法が。


「シルビアに近い動き……シルビアのような接近戦……。……ん?」


 と、そこで私はある単純な答えにたどり着いた。

 そもそも、シルビアが戦えばいいのではないだろうか、と。


「ねえ、シルビア。」

(ナに。)

「また、私が中に引っ込んで、シルビアが表に出ることはできる?」

(ンー。)


 とシルビアの声が聞こえたと思った瞬間、ふわり、と体が何かに包まれ、ストンと落ちる感覚に襲われる。私の視界が一瞬暗転し……


(あ。)


 気づけば私は、昨日までお世話になっていた意識だけの世界にいた。シルビアの目を通して、宿の天井をは見えているし、音は聞こえているが、それ以外の感覚はない。


「デキた。」

(どうやってやったの?)

「ガンばる。」

(が、頑張る……)

「ウかぶ?のボル?ふワフわ!」

(……頑張ってみる。)


 私は、さっき感じた落ちる感覚とは反対に、浮上するように、明るい方へと意識を寄せた。

 蛹から羽化する瞬間のような、外の世界を目指すイメージを強くしていく。

 そうして意識が軽くなりはじめ、ふわりと何かが私を包み、黄金色の何かとすれ違ったと感じた瞬間――手足に感覚が戻った。


「あ、戻れた。」

(デキた。)

「何だ、簡単じゃない。」


 意外にもさくっと入れ替わることができて、私はどこか拍子抜けしてしまった。

 体に何かしらの負担があるのかもしれないが、今のところは全く問題がないように感じられる。

 もしかしたら同じようにしていればもっと早く体の支配権(?)が戻ってきていたかもしれないと思ったが、まあ、過ぎたことである。


「解決ね。」

(かいケツ?)

「シルビア、お願いがあるんだけど。」

(なニ。)

「あのね……」


 私は早速、明後日のテストに備えるべく、シルビアにちょっとしたお願いをしはじめた。

今年も、みなさまには大変お世話になりました。

来年も頑張って書いていきますので、なにとぞよろしくお願いいたします。


良いお年をお迎え下さい。


入蔵蔵人

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