表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
隣世界のリネッタ  作者: 入蔵蔵人
孤児院のリネッタ
13/296

3-5 魔素クリスタル 3

「うーん。」


 ロマリアが今日出来たぶんの魔素クリスタルをマニエに持って行っている間、私は魔素クリスタル生成の魔法陣とにらめっこしていた。


 そもそも、魔素は毒だとか、体内ではなく周辺の魔素を小石に定着させるだとかいった間違った認識を改めないかぎり、たぶんロマリアは上達しないだろう。しかし、私がそんなことを言ってもロマリアはきっと信じない。


 ロマリアに魔素クリスタルの生成を教えた魔術師に直接話を聞きたいが、いくら優しくていい人だろうと、魔術師が獣人(ビスタ)である私の話をまともに聞いてくれるかは怪しい。


 ちらりと私は小石が詰まった麻袋に目をやる。

 庭で拾ってきたというその小石はまだまだ山ほど残っており、2~3個無くなっても気づかれることはなさそうだ。


 私は、小石の中の、特に小さいものを5個ほど見繕って、魔法陣の中心に置いた。そして自らの魔素をゆっくり流し込んで魔法陣が発動したことを確認すると、ためしに小石に自らの魔素を当ててみた。


 存在が不安定になった小石には面白いほど魔素が吸収され、みるみるうちに小石は透き通っていき、5分程度でロマリアが生成した魔素クリスタルと同じくらいの大きさに成長した。

 しかし。


「あっれ……。」


 なぜか、一定の大きさに達した直後、5個中3個の魔素クリスタルはパキンと割れてしまった。中の魔素もすぐに大気に溶けて、魔素クリスタル自体が消えてしまう。

 しかも、残った魔素クリスタルは、高価なガラスよりも透き通っていて、ロマリアのものとはだいぶ見た目が違う。


 その2つの魔素クリスタルと数個のロマリア製魔素クリスタルを見比べながら、私はなんとなく、内蔵されている魔素の量によって魔素クリスタルの透明度が変わるのではないかと考えた。

 核の大きさにより込めることのできる魔素の量が変わるのかも、と考えた私は、続けて大きめの小石を5個使って、同じように魔素クリスタルを生成する。

 また5個中2個が割れてしまったが、最初の小さめの小石よりも一回り大きな魔素クリスタルが生成できた。やはり、核の大きさによって違うのだろう。


 そうして完成した私製の魔素クリスタル5つだが、どう見てもロマリアのものにこっそり混ぜておくことはできなさそうである。

 しょうがないので魔素クリスタルはポケットにジャラジャラと入れて、私は残りの時間、魔素クリスタル生成の魔法陣をじっくり観察することにした。きっと、この魔法陣や翻訳の魔法陣も詠唱に翻訳できるはずだ。


 魔素クリスタルの生成が魔法陣なしで出来るようになれば、孤児院を離れてからも一人で生活していけるだろう。

 魔法陣に描かれた模様と古代語を、頭に焼き付けるようにじっくりと見る。本来は獣皮紙(じゅうひし)にでも描き残せるといいのだが、さすがにないものねだりか。


 杖があれば、もうちょっとスムーズ、……に……?


「あ。」


 ここまで考えて、私は、はたと思考を止めた。


 ――私の杖。


 そう、一緒に転移したはずの、私の杖はどこへ行ったのだろうか。

 小さい頃から愛用していて、私の知識を全部使って様々な(魔)改造を施した、私の大切な愛杖(親友)


 マニエもヨルモも何も言っていなかったので、もしかしたら地下にまだ置かれっぱなしになっているのかもしれない。

 今すぐにでも地下に向かいたいが、さすがに一人で孤児院(この施設)を徘徊するわけにもいかないだろう。


 杖のことは後でマニエにでも聞くとしよう、と思考を切り替え、私はすぐに魔素クリスタル生成の魔法陣に視線を戻したのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ