十三話 フユゴモリ様
結局私は、昼までぶらぶらしていただけだった。ハルの様子が気になったのだが、今は長老に話を聞くことの方が大事だった。
シギに案内してもらい、長老の家に着いた。
「ごめんください。」
「はいよ。」
昨日の老婆がいた。彼女が長老だったのか。
「おやおや、佐伯殿。何か用ですかな?」
「今日はスイさんについてお話を伺いたいと思いまして。」
「ではナツ様。私はこれで。」
とシギが出て行った。
「御苦労だった、シギ。」
この長老、ナツが労いの言葉をかける。それにシギは頭を深く下げ、祠に向かった。
「さて、ではスイさんの家系について教えていただけますか?」
「よいぞ。んじゃあまずはスイのことからかの?」
スイよりもスイの先祖について聞きたかったが、まあいい。村の者から見てのスイにも興味がある。
「お願いします。」
「スイはの、神様なのじゃ。代々神の家系での、フユゴモリ様と呼ばれておる。」
「神…ですか?」
「そうじゃ。ここは土地が貧しくての、皆冬は飢えと戦っておる。じゃが、フユゴモリ様だけは決して飢えることが無いからの、我らの心の支えになっておる。」
冬籠もり様か、スイが。まさか崇拝されているとは。まぁ確かに、仲間が飢えて死んでゆく中、一人眠って簡単に冬を越す者を見たならば、それは神と映るのかもしれない。
「ではハルさんは?その…フユゴモリ様とどんな関係にあるんです?」
「ハルはの、巫女なのじゃ。次の神子を産むために、フユゴモリ様自らがお選びになる。そうして選ばれた者は次の長老となるのじゃ。これはの、村に残っている一番古い文献には、江戸時代からずっと続いているようじゃの。もっと昔からあるのかもしれんが。」
なるほど、そうやって何代も何代も、血を絶やすこと無く、スイの家系は続いているのか。となるとだ。冬眠体質は江戸時代よりも前からずっとあるモノのようだ。私の仮説は正しかったようだ。
「しかしのう。もう十年も経つのに、未だに神子が産まれぬのじゃ。それどころかまだハルはスイと打ち解けぬようで、難儀じゃのう。しかしハルも…」
聞いてもいないことを話だした。しかも異様に長い。話し好きなのだろうか。村の者のハルへの態度をみるに、巫女とはかなり偉い存在なのだろう。この人も巫女だったらしいし、あまり話す人が居なかったのだろうか?
そんなことを考えているうちに、日が傾いてきた。




