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国本さん家

 「お母さん、晩御飯にロールキャベツが食べたい」

 母はいかにも麻婆豆腐を作りそうな顔で俺をにらんだ。

 「優奈ちゃん、たまにはテニス以外のことにも打ち込んだら?」

 姉は思春期の乙女のように顔をそむけた。

 「理奈、どんな漫画描いてるのか見せてよ」

 妹はたちまち表情を曇らせ部屋から俺を追い出した。

 「お父さん、僕の将来についてどう思ってるの?」

 「そうだね、まず君は自分の家に帰ったほうがいい」

 父は赤の他人の僕にそう勧めてくれた。

 「君、名前は確か……」

 「真也だよ、お父さん」

 「真也君、君の家はどこなんだ? これ以上俺たちの家にいるなら警察を呼ばなくちゃいけない。家には年頃の娘が二人もいるし、家内にも負担になる。とても迷惑しているんだ」

 「いや、だから僕はこの家の子なんだって。何度も説明したじゃん」

 「本当に……悪ふざけはやめてほしい」



 まず、僕とこの父親の家族との関係がよく分からないので、この家族のことを紹介させていただきたい。

 この家の大黒柱、国本亮二。45歳。

有名ブランドの洋服販売店のマネージャーをしており、同年代のオヤジに比べて服装には気を遣うようで、年頃の娘たちにも好かれているオシャレでダンディな父親だ。

俺の本当の父親もこれくらい若々しければ誇らしいんだけどなぁ。

あいにく僕がこの家庭にやって来たお陰で、隠し子を作ったと疑われ、家族から少し距離を置かれてしまったのには申し訳なく思っている。

次は長女の国本優奈ちゃん。17歳の女子高生でテニス部。

母親の趣味がきっかけでテニスを始め、今では地区大会で準優勝するほどの実力者。恐らく来年はテニス部の部長になるんだろうなぁ。

僕のことを異性として意識してくれているようで、この家族の中で唯一まともに接してくれる心優しい女の子である。なんというか……父親に似て容姿に難点がいくつか見られるが、若さが辛うじて補ってくれているので魅力の方が勝る。

次は次女の国本理奈。学校から帰ってくると部屋に閉じこもって漫画を描いている。15歳の中学生で、今どき珍しく学校にイラストレーター部が無いので帰宅部。決して悪いことじゃない、しっかりと友達もいるようだし。

思春期ということもあって、まるで僕にゲテモノを触れるような扱いをする。最初は傷付いたが妹だと思えば可愛いもので、姉と違い母親の端麗な二重まぶたを受け継ぎ、とても魅力的な女の子だ。もう少し明るく外面を良くしてアウトドアに転換すれば、有意義な青春を遅れるかもしれない。

漫画の実力は上手いとは言いがたいが、少年漫画が好きで、万人受けする絵を描きたいようだ。絵を誉めてあげても毒を飛ばしてくる。しかし僕を異性として見てくれているようなので、単純な性格も合わさって最も懐柔しやすい。

最後に、母親の国本詩織。42歳なのに若々しく、料理の腕もすばらしい。最も多く僕と同じ時間を過ごしているが亮二の隠し子だと疑っているので信頼関係は乏しい。趣味はテニスで、毎週の金曜日は他の主婦の友達とテニスをしている。しかし僕が住み着いてから防犯のこともあって控えている。

買い物の時は僕を家から追い出す。

日本によくある恵まれた家庭。じゃあ次は日本で初めての、僕に降りかかった地獄を語らせていただこう。



僕は南田真也。どこの学校にも通わない16歳の男。趣味はゲームと音楽鑑賞。取り分け珍しい嗜好はない。

しかし僕が11歳の頃、世界が変わってしまった。僕だけが取り残された。

マンションのロビーの玄関から外の景色が見えない。木製のバットにも屈しそうな強化ガラスの向こう側には、真っ黒で無尽蔵な闇が広がった。

学校へは行けなくなった。母は僕が精神病にかかって不登校になったと思い込み病院へ連れ出したが、その闇は当然、僕以外の人には見えないし触れない。驚くのは、その闇から悪魔の使いのようにひとが出てくるのである。もちろんただマンションに出入りしているだけなのだが、何とも恐ろしい光景である。母はぐずる僕の手を引き、闇の方へ導いた。今でも鮮明に覚えている、底も見えぬ井戸にでも落とされるような恐怖。僕はその闇の中へ落ちていった。目も見えない、音もない。寒くて、息も出来ない。そのあとどうなったのか分からないが、目が覚めると僕はマンションのロビーで倒れていた。

12階までエレベーターで昇り、1213号室を開ける。

「おかえり」

何食わぬ顔で母親が出迎えてくれた、まるで精神病の息子などいなかったみたいに。


作者がアホで怠慢なので更新が遅れそうです。

面白いアイデアだったので、思いつきで書いてみました

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