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放課後の若者

作者: アヤッチ

特に物語というものではありません。

青年の性格を話しているだけです。

「今日の話は終わり?」

「……すいません、ありがとうございました」

椅子から立ち上がり、片手で自分の髪をぐしゃぐしゃに掻く白いカッターシャツの

高校2年生の男は、机の下においてある黒い学生鞄を片手で持ち去って、黒板前側の出口へ出て行った。

私はその男の担任の先生をしているが、どうも問題児である。

周りの人間との付き合いができない彼は私の悩みの一つだった。どうもこれが腹に来て、私はトイレに

駆け込みたくなってしまって仕方がない。男か女かわからないような、えらのはった頬をなでた私は

一つため息をついたものだ。彼がどんなところが問題児かというと、色々だった。

まず、人と話せない……とは言っても、自分の好きなことなら好きなだけ言える奴だった。

ただ、熱があるというか、人との距離がわからない奴で、それを問題の種にして、生徒から陰口を

叩かれることも多かった。この学校では大半が無視している、彼もまた無視をしているが、正直言って

そこまで心強い少年でもない。トイレで一人で泣いていることもあった。私はたまに近くを通って

そういう場面を見たことがある。意地だけは強くて、目立ちたがりのところもあったときたものだ。

だが、普段は無口なもんだから、ただの『かまってちゃん』のようになってしまっている。

しかし、彼もまたそれは知っているが、治らない病気みたいなものだからと、笑いのネタにすることも

しばしば。そんな彼とは、話し相手の関係みたいなもので、私へ愚痴りにくることもある。

先生というより、カウンセラーのようになってしまっている。話していてわかることはこのぐらいだ。

この結果、彼には申し訳ないが……人と付き合いやすい性格ではない。ということが私にはわかる。

人との付き合い方が下手な目立ちたがり屋なんて孤立しやすいに決まっている。

人は根が良ければ付き合えるものではない、ということだ。別に彼はいい奴とは言ってはいないが……

普通に悪人とも思っていない。根は知られなきゃどうでもいい話なのだ。

心の底まで人なんて見れるわけもなかろう。しかし、彼は完全に孤立とは言えない。

何故なら、目立ちたがり屋なのだから。人前に出なければ関係もへったくれもない。物好きな奴でもいれば

付き合ってくれる奴もいるとは思う。人なんて10億以上いるんだから。流石にいるだろう。

彼が何千人会うかは知らない。10億以上の何人が彼に付き合ってくれる人物か知らない。

しかしまた、私はその中に含まれている。

彼の理解者とは言わないが、少なくとも、私は彼に付き合ってやろう。彼も明日、黒板前のドアから

入り、私の目の前に座って、彼の言葉に付き合うことになる。

そして、また、逆に

男か女かわからない、下手な絵のような、顔の私にも付き合ってもらうことになる。

今日も私は、教室の椅子の上で、一人きりで呆然としていて、放課後の窓を覗いていた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] クールなところ。 [一言] なんか卒業が近い雰囲気がします。
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