表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/22

おっさん冒険者、カーバンクルになる2-5

 静かな足音が、苔むした石床に吸い込まれていく。ダンジョン中層の終わりを告げる領域。ディラン達は、慎重な足取りで進んでいた。


 ディランは、フィサリスの背負う大きなカバンからひょっこりと顔を出している。

 カーバンクルくらいなら平気だとカバンに詰められてしまったので、仕方なくカーバンクルらしく大人しくカバンに収まっていた。


「この先を曲がった先に群れがいる気配。足音と……土を削る音。おそらくキラーラビットの集団だ」


「キラーラビット?」


 セリスが眉をひそめた。


「鋭い角と牙、そして後脚の跳躍力を活かした突進が厄介な魔獣だ。だが、こちらから刺激しなければ……」


 そのままそっと歩みを進める一行だったが、次の瞬間――


 フィサリスがカバンのバランスを崩し、背負っていた袋のひとつが転がり落ちる。

 ガラリと金属器具の音を鳴らしてしまった。


 ダンジョンに響く、甲高い金属音。続けざまに、耳障りな唸り声と地を蹴る音。


 草陰から飛び出したのは、十数匹を超える銀白の兎型魔獣。


「っ、まずい、群れが……!」


「師匠っ!」


セリスが剣を構え、叫んだ。


「くっ! ティナ、範囲魔法を!」


「アイスストーム、展開っ!」


 ティナが詠唱を唱えると、空間が歪み、冷気が広がる。氷の礫がキラーラビット達を貫き、何体かがその場で動かなくなった。

 残った数体が逃げ去り、ようやく静けさが戻る。


「すまない、助かったよ……ティナ」


「いえ、私達はパーティーですから」


「ごめん……足、引っ張った」


 フィサリスがうなだれる。


「気にするな、俺も知識不足だったみたいだ」


 ディランがフィサリスをなだめる様に言った。


 中層の先。ダンジョンの奥まで進むと、空気が変わった。粘りつくような重い空気と、目には見えない圧迫感。それが「深層」という領域。


「ついに深層ですね……」


 セリスの声に緊張が滲む。

 目の前の通路は、今までよりもずっと荒れていた。地形も入り組み、足場の悪い箇所が増える。


「圧、強い……」

 フィサリスが耳を伏せ、肩をすくめる。

 確かに、空気が重たい。体の内側からじんわりと緊張が染み出してくるような、そんな感覚。長年ダンジョンに潜ってきディラン、その空気の違いにすぐ気がついていた。


「師匠……ここから先って、どんな魔獣が出るんですか?」


「俺の知ってる限りじゃ、ゴブリン・シャーマン、オーガ、あとは大型のアンデッドとか。魔物が混ざる階層だ。魔獣とは違って、連携してくるし、知恵もある」


「面倒……」


 フィサリスが短くつぶやくと、ティナが笑う。


「でも、パーティーを組んでるから、乗り越えられるよ」


「ん、がんばる」


 四人の気持ちは、どこか静かに一つにまとまっていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ