自分自身を好きになる方法
部屋に入れば目に入ったのはいかにも高価なドレスだった。ラベンダーカラーのドレスに散りばめられたキラキラと輝く小さな宝石。
(こんなに高価なドレス…私に似合うのかしら…)
不安を感じながらドレスに袖を通し、鏡の前に映る自分の姿を確認する。
「すごく綺麗です!ユリア様…!」
「ふふっ、ありがとう。」
綺麗だと言われるのは嬉しい。
だけど、これほどまでに高価なドレスは私には不相応なのではと思ってしまう。私にこのドレスは似合わない。私にはこのドレスを着る資格はないの…。
だって、私にはこのドレスと同じ価値はないから……
「ユリア様、そろそろ行きましょう。レオン様もお待ちですから…!」
「そうね…」
私は部屋を出てレオン様の元へ向かう。
「レオン様…。」
私が名前を呼べば振り返るレオン様。
その目にはっきりと映る私の姿。
レオン様は頭からつま先まで逃すことなく全て見る。
「ユリア、すごく綺麗だ。」
私の手を握り指を絡めて褒めてくれる。
「レオン様、ありがとうございます。このような素敵なドレスを用意してくださって。でも、あまりにも高価で綺麗なこのドレスが私には不相応な気がするのですが……。」
私がそう言うと首を傾げたレオン様。
「どうしてそう思うんだ?俺は君に似合っていると思う。君ほどそのドレスに似合う女性はいない。どの宝石よりも君が一番輝いている。ユリア、君は少し自分の存在を否定しすぎだ。」
自分の存在を否定……
なら…自分を好きになるにはどうすればいいの…
「ならば教えてください。私自身を好きになる方法を。」
私がそう言えば強く引き寄せられいつのまにか彼の腕の中にいる。
「ユリア…。」
私…なんて可愛げがないのだろう…。
私は昔からそうだった。
「私は昔からフレイン家の人間なら、その名に恥じぬよう生きろと教えられました。そのためなら私はずっと自分の気持ちを押し殺し、お父様とお母様のために生きてきたのです。」
私はいつも家族のために生きていた…
いや…フレイン家の生きる駒だったのかもしれない。
「リューク王子殿下との婚約もお父様とお母様のためでした。だけどいつしか愛してしまった。でも、その結果は婚約破棄で終わりましたけどね……。」
「…。」
「だから、レオン様。私に教えてください…。自分自身を愛する方法を…。」
苦しかったの…。自分を好きになれない自分に。
そして、フレイン家という公爵家からの呪縛にずっと逃げたかったのかもしれない…。私を自分たちの地位のために差し出す駒の立場から逃げたかったのかもしれない。だから…教えて…。
(どうすれば…私は自由になれる…?)
「ユリア、俺は君のその優しさが好きだ。その優しさに包まれると心が温かくなる。俺もその方法は分からない。俺も自分自身を好きにはなれないから。だが、ユリアとなら自分を好きになるきっかけができる気がする。」
きっかけ……
「だから、二人で見つけないか?俺たちが自分自身を好きになれる方法を。それにもう、ユリアは一人じゃない。君はフレイン家の駒なんかじゃない。君は自由なんだ。君は、俺の世界で一番愛する最愛の妻なんだ。だから、君はもう何も考えなくていい。苦しい時も、辛いときも、どんなときだって俺がそばで君を助けるから。」
「レオン様…」
「ユリア、二人で方法を探そう。」
「…っ。はいっ…!」
私はどれだけ彼の言葉に救われるのだろうか。
彼の言葉は直接耳に届きそのまま心の奥底に入り込んでくる。彼の言葉はいつも重みのある言葉…
自分を愛する…
その方法も二人で探していこう…
「ユリア、ドレスは気に入ってくれるか?」
「…はい!レオン様、ありがとうございます…!」
私は彼の腕の中で一つの幸せを感じた。
もう、隠さなくていい…
自分の気持ちを押し殺さなくてもいい。
ただただ、彼に愛されていたい…。
(そのためには早くあなたを愛したい…心からの愛で満たしたい…満たされたい…)
彼を心から愛せたとき、その時には自分自身も好きになれたらいいなぁ…
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