違和感と胸騒ぎ
屋敷を出た翌日、こんなに早く話が終わると思っていなくて、予定よりも早く翌日のお昼頃に屋敷へ帰ってきた。
お父様は屋敷へ寄ることなく王都に戻り、お母様と共に王都へ向かった。
だが、屋敷の敷地内に入った俺は妙な違和感を感じた。
(なんだ…この胸騒ぎは…。)
きっと気のせいだ。
気のせいであってくれ。
そう思い屋敷の扉を開け中に入る。
だが、真っ先に来るであろうユリアが来ない。
それに部屋に入った途端に違和感に気づいた。
屋敷の警備をしていたはずの騎士団の人間が一人もいなかったからだ。
(一体どうなっているんだ…。まさか…ユリアに何か…)
すると前から走ってくる三人の姿。
あれは、ユリアのメイドのアンナと、ユリアに護衛で付いていたクリストフとスターレフか。
「おかえりなさいませ。レオン様…。」
アンナの顔色が悪い…
「アンナ、どうかしたのか?それに、ユリアの姿見えないが…。」
俺が呟くと三人は膝をついた。
「「「申し訳ありません。」」」
……
「どういう意味だ…?」
俺は悪い予感が頭をよぎる。
当たってほしくないこの予感。
だが、その願いは叶わなかった。
「ユリア様は…誘拐されました…。」
あの数の騎士団がいてか?
優秀な騎士が護衛についていてか?
「ちゃんと説明しろ。」
「はっ!」
そして俺は全てを聞いた。
書斎で窓ガラスが割られたこと。
その後ユリアはアンナと共に寝室は向かい窓も閉め、クリストフが扉に鍵をして誰も入れないようにしたことを。
「そこまでしてなぜだ!」
「屋敷内に大量の催涙ガスが撒かれました。その催涙ガスで屋敷の中へ入った全員が気を失ってしまい…」
「そして、私の持っていた寝室の鍵を持ち去り、そこからユリア様を…。」
(くそっ…)
「アンナ、君はユリアと一緒に寝室にいたのなら何をしていたんだ?」
「私はユリア様と落ち着くためにラベンダーティーを飲んでいました。ユリア様に私も落ち着きなさいと言われて…。そんなとき扉がノックされて鍵が開いたんです…。鍵が開いたのでクリストフさんが来たと私もユリア様も思っていました…。」
「それで?」
「あの日の夜と同じ、黒い布をつけた人が入ってきたのです。私はユリア様の盾になるように手を広げ、ユリア様の前に立ちました。暗殺者は剣を抜いたとき、ユリア様が……ユリア様が…アンナを斬らないで…あなたが用のあるのは私でしょ?関係のないアンナを傷つけることは私が許さない。と…」
(ユリアが…)
「その言葉に反応した暗殺者が私を突き飛ばし、ユリア様の首元に手刀を…。私の目の前で…私も突き飛ばされたせいで…頭がぼーっとしていて何もできなくて…それで…ユリア様の名前を呼んでも…反応がなくて…そして私も首元に痛みを感じて…気づいたときには…もう…」
泣きながら話すアンナ。
俺は自分が嫌になった。
なぜ、こんなときに他国との貿易を…
ユリアを守ると誓ったのに…
(俺は…俺は…っ!!!)
「申し訳ありません…。我々がついていながら、このような失態を…!!」
「ユリア様は言っておりました。大丈夫だから。きっと…なんとかなる…。レオン様がなんとかしてくれる…。きっと…。と。」
「ユリア……。くそっ!!」
俺は握りしめていた拳を屋敷の壁に打ちつけた。
「許さない…。」
「…っ」
「俺のユリアに触れたこと。後悔させてやる…。暗殺者も指示したやつも全員、息の根を止めてやる…。」
絶対許さない…
ユリアを傷つけた奴らを…。
「クリストフ、スターレフ、アンナ。来い。王都へ行くぞ。」
「「はっ!」」
「はい…!」
俺は三人を連れて王都へ向かった。
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