寝ているときは無防備になる。
───レオンside
何か嫌な予感がしたんだ。
ユリアの身に何か起きそうで。
そんなとき、花壇のある庭の方で何か音が聞こえた。
(花壇の方なら…今、ユリアがいるなぁ……。まさか…!)
そう思って俺は走ってユリアの方に向かった。
「ユリア!!」
安心してか涙を流すユリアが見えた。
どうやら俺の予感は当たっていたらしい。
やっぱり、ユリアを狙って暗殺者が来た。
暗殺者は俺の方へ振り向くのが遅く剣を構えることが出来ていなかった。俺はその隙をつき剣を弾いてユリアの盾になるようにユリアの前に立った。武器を失った暗殺者に剣先を向ける。
「お前。誰の差金でユリアを狙った…!」
「………。」
何も話そうとしない暗殺者。
「話すまでこの剣は下ろさないからな。」
すると風で揺れた暗殺者がつけていた黒い布から露わになった口元がニヤッと笑っていたのが見えた気がした。そして、次の瞬間、煙玉のようなものが地面に投げつけられた。一瞬にして視界が真っ白で見えなくなる。風があったおかげで視界はすぐ良くなったが、暗殺者はもう消えていた。
俺は剣をしまい、すぐにユリアを強く抱きしめる。
「ユリア、大丈夫か?」
「だ…大丈夫…です…。私は……でも…」
そう言ったユリアの声、身体、俺に回された腕が震え、涙を流しているのが分かった。
俺はユリアの涙を指で拭いさっきよりも強く抱きしめる。
「すまない。君を守ると言ったのに…俺は…俺は…」
俺は…愛する人も守れないのか…
何をしていたんだ…
俺は…ユリアを守ると言ったのに…
俺の腕も震えている。
(ユリアを失うのが怖い…)
そう思っているときにユリアが俺に回した腕に力を入れた気がした。
「レオン様…自分を責めないで…私はレオン様のおかげで助かったのですから…」
ユリアのその言葉に俺の腕にまた力が入る。
苦しいはずだ…
だが…今は我慢してくれ…。
ユリアが生きている、無事だと感じたい…。
「必ず…必ず暗殺者を見つける…。そして、指示を出したやつも。君を傷つけるやつを許さない…」
俺は抱きしめたままユリアの頭を優しく撫でた。
「ユリア。必ず君を守ってみせる。俺の命をかけて。」
命をかける。
この言葉は軽々しく使うものではない。
だが、これは俺の決意だ。
俺はユリアを絶対に守る。
「ありがとうございます…レオン様…」
まだ震えるユリアを支えながら俺たちは屋敷へ入り、二人の寝室へ向かった。
「ユリア、俺はお父様に今あったことを報告してくる。少し待っていてくれ。」
俺がそう言うとユリアは不安そうな表情を見せた。
(今にも泣いてしまいそうだ…)
あんなことがあったんだ…。一人で待つのは怖いはずだ…。確かに、今はお父様もこの屋敷にいるが、もし、俺がお父様の部屋に報告へ行っている間にこの部屋に暗殺者が来たら…そう考えて不安なんだろう。
俺はユリア安心させるように背中を撫でた。
「ユリア、大丈夫。すぐに戻るから…。」
不安そうな表情なのは変わらないがユリアは、
「分かりました…。待ってます…。」
と言って待つことを選んだ。
俺は少しでも安心してほしくてユリアの頬に一つキスをして部屋を出た。
(ユリア…すぐに戻るからな…。)
───トン、トン、トン
「失礼します。」
「なんだ、レオン。」
「あら?レオンどうしたの?」
そこにはお父様だけでなくお母様もいた。
ちょうどいい。お母様にも話せるから。
「お父様、お母様。少しお話が…。」
「手短に頼むぞ。」
「もちろん、そのつもりです。」
そして俺はユリアが襲われたことを伝えた。
「ユリアさんが…」
「レオン、ユリアさんに怪我は無かったのでしょうね!?」
「はい、怪我はないようでした。」
お父様もお母様も胸を撫で下ろしていた。
「だけど、レオン。これはあなたの失態よ。ユリアさんを守りなさいと言ったでしょ!」
「仰る通りです…」
「まあまあ、エリー。落ち着いて。とりあえず、ユリアさんが傷ついていなくて良かった。だが、気を抜かなよ。まだ狙ってくるはずだ。」
「はい。」
「レオン、ユリアさんをきちんと守りなさい。」
「はい。」
「こちらで犯人探しをしておく。お前も手伝いなさい。そして一応、騎士団をユリアさんの護衛につけることにする。四六時中レオンがいれるわけではないからな。安心しろ。信頼できる人間だけをつける。」
「ありがとうございます。」
…ユリアは大丈夫だろうか…
「早く部屋に帰りたいようね。ユリアさんが心配なのでしょ?」
「…はい。」
「かなり参ってしまっているのね。」
「…はい…。」
「レオン、何をしてるの。早く部屋に戻りなさい。ユリアさんを安心させ、心から守ることが出来るのはあなただけなのよ!早く行きなさい!」
「ありがとうございます。」
俺は急いで部屋を出た。
────────────────────
レオン様を待っていると寝室の扉が開いた。
誰が入ってきたか見えるまで待った。
入ってきたのがレオン様だと分かった瞬間、私はレオン様に飛びついた。レオン様は私を受け止め抱きしめてくれる。
「ユリア、お待たせ…。」
「待ってました…」
私の言葉に微笑み優しく頬を撫でるレオン様。
この手の温もりが私を安心させる。
「ユリア、今日はもう寝よう。」
「…はい。」
寝るのが怖い。
寝ているときが一番無防備だと言われている。
もし寝ているときに暗殺者が侵入したら…
最悪なことばかり頭の中で渦巻いていく。
「ユリア、大丈夫だ。ずっと抱きしめているから安心して今日は寝てくれ。」
…レオン様がそう言うなら…
「分かりました…。絶対…離れないでくださいね…?」
「ああ。約束だ。」
私はレオン様の腕の中で彼の規則正しく鳴り響く鼓動の音を聞いているといつのまにか眠ってしまった。
そんな私が最後に聞いたのは、レオン様からの愛の囁きだった。
「ユリア、おやすみ。愛してるよ…」
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