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暗殺者

夜、夕食を終えた私は一人で屋敷の庭へ出た。

外の涼しい空気を浴びたくて。

それに、エルディアス家の屋敷にも花壇はあって綺麗なお花が咲いている。


お昼に花壇を眺めていたかったけど、お父様たちが来たせいで全く見ることができなかった。


(花にはいつも癒されるなあ…)


アンナにはあとで紅茶を淹れてもらおう。

アンナもここに来たばかりだから色々と忙しくて休めていないだろうし…何日か休暇をあげようかしら…。


そう考えているときだった。


───ザッ…


誰かが地面を踏んだような音が聞こえた。


「誰かしら…。レオン様…?」


だけど返事は返ってこない。


「ジェリス国王陛下?それともエリー王妃様ですか…?」


やっぱり返事は返ってこない。


「アンナ?」


いや、アンナなら用があれば真っ先に私のところに来るはず…だから違うわ…


(気のせいかしら……)


きっと気のせいだと思いまた私は花壇を眺めた。

今日は色んなことがあった。

お父様たちは来るし、レオン様に愛してるって普通に言ってしまったし…


思い出すと顔が熱くなる。


(…私、相当好きなのね…ふふっ)


───ザッ…


また同じ音。

だけど後ろを振り返っても誰もいない。

風は少し吹いているけど…


(風でそんな音が鳴るのかしら…)


また気のせいだと思い花壇を眺めた。

そしてさらに近づいてくる音。


───ザッ…


ようやく気づいた。

これは気のせいじゃない。

私の背後に誰かいる。


身体が動かなくなる私。

ダメ…逃げなきゃ…

動いてよ…私の足…。


(動いて…!!!)


何かが背後から私は振り下ろされるのが影で分かった。だけど、運が良かったのか私の願いも通じて足が動いてなんとか横に避けれた。


(顔が隠されていた見えない…)


顔は黒い布で隠されているせいで何も見えない。だけど、分かるのは背が高く割とガタイがしっかりしている。


(男…?だけど…鍛えている女性の可能性もある…)


私には全く予想できなかった。

私を襲ってきた人は手に剣を握りしめている。

それを見れば私を狙い、私を殺す気なのはすぐに分かった。そして思い出した。エリー様が私を狙って暗殺者が来るかもしれないと…恐れていたことがまた一つ起こった。


(どうしよう…私このまま殺されちゃうの…?)


後ろは花壇。逃げ場はない。


「終わりだ。ユリア・フレイン。」


(もう…お終いだわ…)


そう思った瞬間だった。


「ユリア!!」


その声に私は思わず安心して涙が零れた。

暗殺者はレオン様の声に振り向き剣を構えた。

だけど、走って私のところまで来ていたレオン様に暗殺者の構えは追いついていなくて、暗殺者の剣は素早く弾かれた。


地面に突き刺さった暗殺者の剣。

レオン様は私を庇うように前に出て私の盾になる。そして、武器が無くなった暗殺者に剣先を突きつけた。


「お前。誰の差金でユリアを狙った…!」


「………。」


何も話そうとしない暗殺者。


「話すまでこの剣は下ろさないからな。」


すると風で揺れた暗殺者がつけていた黒い布から露わになった口元がニヤッと笑っていたのが見えた。そして、次の瞬間、煙玉のようなものが地面に投げつけられた。一瞬にして視界が真っ白で見えなくなる。

風があったおかげで視界はすぐ良くなったけど…


暗殺者の姿はもうそこには無かった。


「ユリア、大丈夫か?」


レオン様の腕の中で聞かれた私は静かに頷いた。


「だ…大丈夫…です…。私は……でも…」


手も身体も震え、上手く言葉が出てこない。

心臓は恐怖のせいで鼓動が速く動く。

レオン様は私の涙を指で拭い強く抱きしめる。


「すまない。君を守ると言ったのに…俺は…俺は…」


自分を責めて苦しそうに話すレオン様。

レオン様のその腕も震えていた。


「レオン様…自分を責めないで…私はレオン様のおかげで助かったのですから…」


レオン様の腕にまた力が入る。

苦しいほど…

だけど、今はそれでいい。

それがすごく落ち着けるの…


「必ず…必ず暗殺者を見つける…。そして、指示を出したやつも。君を傷つけるやつを許さない…」


レオン様はそのまま私の頭を優しく撫でた。

そして落ち着いたように私に言った。


「ユリア。必ず君を守ってみせる。俺の命をかけて。」


命をかける。

その言葉がどれほど重いものか理解できた。

私はいつも守られている…

彼に…


「ありがとうございます…レオン様…」


屋敷へ戻り寝室へ二人で向かう。


「ユリア、俺はお父様に今あったことを報告してくる。少し待っていてくれ。」


一人で…?確かに、今は国王陛下もこの屋敷にいるけど…もし…その間にこの部屋に暗殺者が来たらどうすればいいの…私の不安な気持ちを察したのかレオン様は私を安心させるように背中を撫でた。


「ユリア、大丈夫。すぐに戻るから…。」


「分かりました…。待ってます…。」


レオン様は私の頬に一つキスをして部屋を出た。

思い出すとまた震えが止まらない。


(カーテン…開いてる…)


怖くなってカーテンを閉めた。

私は寝室の隅で身を丸くした。


(怖い…レオン様…早く戻ってきて…)


そう願いながらレオン様の帰りを待った。

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