9話 ゴブリン2号が強すぎる。
9話 ゴブリン2号が強すぎる。
ボクが笑っていると、
審判が、
「ワン! ツー! スリー!」
カウントをはじめた。
日本のボクシングなんかと同じで、10カウントで敗北。
「……ぐ……くそ……汚いぞ……17番……」
「汚くないよ。闘技場のルールで、状態異常はありって決まっている。ね、審判」
声をかけると、審判は、『カウントを邪魔するな』という目で、キっと睨んできた。
……怒られてしまった。
そりゃそうだ。
ボクが悪い。
「ナイン! テン! 勝者、猿の17番!!」
そう叫びながら、ボクの右手を高く掲げる審判。
周囲の観客は、パチパチ……パチ……とまばらな拍手をしてくる。
正直なところ、『ボクと20番の勝負なんかどうでもいい』という感じだった。
成績と年齢が近いボクらは、どっちが勝ってもおかしくないし、どっちが勝とうが、最終的な結果に変化はない。
今回の大会の賭けは単勝のみ。
『誰が優勝するか』が重要なので、観客的には、決勝以外の勝敗に意味はあまりない。
チラっと、貴賓室を見上げてみる。
ラストローズ辺境伯は、退屈そうに、あくびを噛み殺していた。
……マジで、何しにきたんだろ、あの大貴族……
★
二回戦の相手は『百足の19番』。
14歳の女子。
短髪刈り上げで、ゴリゴリに体を鍛えているタイプ。
大会に出場する奴隷は、基本『前衛戦闘職』が多い。
「一回戦、見ていたよ……あんたのゴブリン2号、ちょっと厄介そうだね」
「ちっ……一回戦、見学してんのかい。11歳同士の試合なんかスルーして、かつ、油断してくれよ。こっちは、そのスキを狙い撃つ気しかないんだから……」
ボクがタメ息交じりにそう言うと、
いつも通り、審判が割って入ってきて、
「気絶か、10カウントで敗北。なるべく相手を殺さないように。分かった?」
と、お決まりの文句を言ってから、
「それでは、はじめ」
試合開始。
百足の19番は、ゴブリン2号の麻痺攻撃を警戒して、
じりじりと、静かに、にじり寄ってくる。
『ボクがゴブリンを召喚するタイミング』をうかがっている様子。
おそらく、ボクが召喚すると同時、攻撃するスキを与えず、瞬殺でゴブリン2号を殴り殺してしまおうという算段だろう。
なんて卑怯な女なんだ。
もっと、正々堂々と戦えばいいのに。
(魔王の力を使っているお前に、正々堂々なんて言葉は使われたくないだろうな)
モンジンが急に話しかけてきた。
試合の緊張感も相まって、つい、ビクっとしてしまう。
百足の19番が、そんなボクを、いぶかしげに見ている。
(モンジン、びっくりするから、集中している時に話しかけないでよ)
心の中で対話を開始。
モンジンは、ボクの『中』にいる相手だから、口に出さなくても意思疎通はできる。
と、そんな風に、モンジンに気を取られていると、
『スキありっ』って感じで、19番が、グっと距離を詰めてきた。
ボクは、反射的に、
「ご、ご、ゴブリン召喚!」
慌てふためきながら、
『素手のゴブリン』を召喚する。
「素手のゴブリンは、特に能力を持っていないらしいね! 警戒すべきは、こん棒を持っている2号だけ!」
そう叫びながら、『素手ゴブリン』を裏拳で吹っ飛ばそうとする19番。
だが、それに対して、素手ゴブリンが、綺麗なカウンターを合わせていく。
バキッ!
と、素手ゴブリンの右拳が、19番の腹部にブチ当たる。
その瞬間、
「う、ぐっ……」
百足の19番は、膝から崩れ落ちた。
「なっ……なんで……」
「こん棒を持っている方が2号……そう思わせておけば、こん棒を持っていない方への警戒心が減るだろ?」
「……ぐっ……な、生意気なブラフを……」
「こっちも必死なんでね。色々と考えるさ」
そんな風にしゃべっている間に、
審判のテンカウントが終わって、
二回戦も、ボクの勝利で終わった。
★
三回戦は不戦勝だった。
理由は単純。
マパネットを使って、対戦相手に毒を盛ったのだ。
毒といっても下剤系だけどね。
しばらくトイレから出られないようにしてやった。
(卑怯だねぇ)
そんなことをいうモンジンに、ボクは言う。
(卑怯は敗者の戯言だって、昔の偉い人が言っていたよ。勝てば官軍。勝てなきゃゴミだ)
それはそれとして、しかし……
能力を聞いた時から、ずっと、思っていたことだけど、
やっぱ、マパネット、めっちゃ便利。
擬態も、デバフ散布もできるとか……優秀すぎ。
もう、マパネットだけでいいんじゃないかな……
ほんとは、パリピーニャを召喚したいんだけどなぁ……
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名前『猿の20番』
メインクラス『武術家』
サブクラス 『拳闘士』
・称号『奴隷』
《レベル》 【12】
[HP] 【218】
[MP] 【7】
「攻撃力」 【11】
「魔法攻撃力」 【5】
「防御力」 【10】
「魔法防御力」 【3】
「敏捷性」 【9】
「耐性値」 【8】
「魔力回復力」 【1】
「反応速度」 【7】
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名前『百足の19番』
メインクラス『アマゾネス』
サブクラス 『喧嘩士』
・称号『奴隷』
《レベル》 【18】
[HP] 【352】
[MP] 【0】
「攻撃力」 【25】
「魔法攻撃力」 【0】
「防御力」 【12】
「魔法防御力」 【3】
「敏捷性」 【10】
「耐性値」 【2】
「魔力回復力」 【0】
「反応速度」 【11】
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