37話 『殺す』のはやっぱり抵抗感があるね。
37話 『殺す』のはやっぱり抵抗感があるね。
(本来、召喚獣の経験値は召喚士にも入るが……パリピーニャの召喚士は俺になるから、どっちみち、お前には1経験値たりとも入らない)
モンジンの丁寧な解説を受けたボクは、塾生みたいな顔で頷きながら、
「……ボクは命令をしているだけで、実際に召喚しているのは君だからね……そういう扱いにはるのは分からないでもないけれど。……ねぇ、モンジン、今度モンスターが出たら、パリピーニャじゃなく、マパネットを召喚して、殺し切らず、瀕死にした上で麻痺らせてくれる?」
(りょー)
相談しつつ、ボクは先へと進んでいく。
「さて……一番下までいけるかな……」
エンカウント率次第だなぁ……
――などと考えつつ、さらに先へ先へと進んでいく。
その道中で出現した『ホブゴブリン』を、
事前打ち合わせ通り、マパネットで瀕死&麻痺状態にする。
その上で、ボクは、
「こい、ゴブリン」
自力のゴブリンを召喚すると、
「……すぅ……はぁ……」
ためらいの中で深呼吸。
……先ほどの闘鬼の時は、『パリピーニャで一瞬』だったので、
情緒と向き合う暇もなかったが……
こうなってくると、流石にちょっと、感情が揺れる。
相手は人間じゃなく、モンスター。
『だから殺してもいい』とは、なかなか思えないのも現状。
とはいえ、そうも言っていられないのも実情。
色々と思うところはあったものの、
「ゴブリン……そのホブゴブリンを……」
『殺せ』と命令しかけて、躊躇する。
オッサンの時と同じ……ボクのチキンが発動する。
……すでに、さっき、闘鬼を殺しているが……正直、まだ、振り切れない。
さっきは『反射!』って感じだったから……こう、いざ『殺すぞ! 行くぞ!』となると心がバクバクする。
ホブゴブリンは、モンスターだが、造形的に、かなり人間に似ている。
だから、正直、抵抗感がある。
「ホブゴブリン……お前は、マパネットがいなかったら……ボクを殺していただろ? 今だって殺意のある目でボクを見ている。善意には善意で返して……『殺意』には『殺意』を向ける……それがボクの流儀。まあ、お前は、このダンジョンを守ろうとしただけって可能性もなくはないから……その場合、ボクのハンムラビ流儀には当てはまらないかもしれないけど……でも、まあ、うん……」
歯切れ悪くブツブツと、『弱さ』をのたまってしまう。
命を奪うとなると、どうしても色々と考えてしまうのだ。
『殺す』っていう概念は、ある意味で、『金』や『命』より重い……