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センエース~『2垓年』努力した童貞。理不尽に全てを奪われたが、必ず全て取り戻す~  作者: 閃幽零×祝百万部@センエースの漫画版をBOOTHで販売中
第一章 色々あるけど、なにはともあれ、魔王パリピーニャの美貌がエグすぎて理性が持たない。こんな美女がボクの命令に絶対服従とか、ボクはもうダメだ。おしまいだ。

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3話 純粋無垢な美少年。


 3話 純粋無垢な美少年。


 神殿から追い出された帰り道で、

 オッサンが、また、ボクの頭をガツンと殴ってきて、


「お前がシッカリ証言しないから、信じてもらえなかったんだ!! 本当に、貴様は、なんの! なんの! なんっっの、役にもたたんなぁあ!!」


 そう叫びながら、

 オッサンは、さらに、ボクをボッコボコにしようとしてきた。


 怒りで我を忘れているのか、

 いつものような『最低限の手加減』をしている拳ではなく、

 マジで肉が裂けるレベルの剛腕パンチを連打してきた。


 あ、ヤバい……

 これは、へたしたら、マジで死ぬやつ……


 と思った、その時、

 ピタっと、オッサンの暴力が止まった。


 反射的に目を閉じていたボクは、ソっと目をあけてみる。

 すると、オッサンの腕を、ガシっと掴んでいる『女性』がいた。


 宝塚系のイケメン系美女。

 パリっとした鋭い目つきと、端正な顔立ち。

 すらっとした長い手足と身長。

 きらびやかだが、動きやすそうな、軍服っぽい恰好。


 そのイケメン系美女は、

 オッサンに、


「奴隷は、この巨大都市ユウガを支えてくれている大事な労働力だ。敬意を払え。無意味に壊そうとするなど、言語道断」


「か、か、か、カルシーン閣下! ……い、い、いえ、こ、これは、あくまでも、しつけでして……」


 カルシーン閣下。

 『外周西南西区』全体の支配を任されている伯爵位の貴族様。


 それぞれの区は、全部で10エリアに分かれており、

 ウルベ卿は『外周西南西区』の『エリア7』だけを担当しているが、

 カルシーン卿は『外周西南西区』全体を担当している。

 つまり、ウルベ卿とカルシーン卿の間には、

 単純計算で、『10倍の権力差』があるってこと。


 絶大な力と美しさを誇る貴族の中の貴族、カルシーン伯爵閣下様……

 雲の上の相手すぎて、正式に会ったことはないが……

 遠目にお姿を拝見したことは何度かある。


 カルシーン卿は、厳しい目つきで、オッサンをにらみ、


「しつけとは、『学び』を与えること……決して暴力をふるう事ではない。そもそもの話として、平民風情が、私に口答えとは何事か」


 凛と涼やかな声。


 うむ……やはり、伯爵ともなればオーラが違う。

 ウルベ男爵とは、ほんと、えらい違いだ……

 なんにだって、ピンとキリがあるもの。

 カルシーン卿が月なら、ウルベは、黒ずんだハナクソ。


「も、も、もうしわけございません! カルシーン閣下!」


 その場で、綺麗な土下座をする、平民の鏡、ポルの旦那。


 ボクは、この人に飼われた時から、

 ずっと、一生、この人の『愚かしいところ』と『情けないところ』しか見ていない。


 ……突っ立っているわけにもいかなかったので、

 ボクもオッサンの横に並んで土下座をする。

 土下座……転生する前は、一度もやったことがないけど、

 この世界に転生してから、もう、100万回ぐらい土下座している。


 カルシーン閣下は、土下座しているボクの肩に、ポンと手をあてて、


「いつも君たち奴隷には感謝している。健全で安定した都市運営のために、えんの下の力持ちを担ってくれてありがとう」


 優しい声音でそう言うと、

 そのまま凛とした足取りで、その場を去っていった。


 足音が聞こえなくなったところで、

 オッサンが顔をあげて、

 小さな声で、


「ちっ……偉そうに……ただ『生まれ』が良かったってだけのくせに。親が貴族だっただけで、お前自身は何もしていないだろうが。……ああ、くそ、おかしてやりてぇ……あのクソ女……」


 などと、やばいコトをブツブツつぶやいている。

 ほんとに、このオッサンは、ゴミみたいな人間だな。



 ★



 《雅暦がれき1001年7月6日》


 夜が明けて、

 馬小屋のワラの上で目覚めたボクは、

 一度、大きくのびをしてから、

 オッサンを起こしにいく。


 どうやら、オッサンは、『魔王に対する恐怖』とか、『貴族連中に対するイライラ』とかで眠れなかったらしく、目の下に大きなクマをつけていた。


「くそ……今日は、待ちに待った奴隷配給の日だってのに……なんで、こんな不愉快な気分で……くそっ」


 このオッサンは鍛冶屋をしており、

 闘技場などに武器を納めたりするのが仕事。


 人間性はクソだが、腕はまあまあで、仕事はキッチリこなすため、『執行部』からの評価がそこそこ高い。

 平民の中でもランクがあるのだが、

 このオッサンは『B3』で、平民の中では上の方。

 『E1』が最低で『E2』『E3』と上がっていき、一番上は『S5』。


 S5(最高) S4 S3 S2 S1

 A5 A4 A3 A2 A1

 B5 B4 B3 B2 B1

 C5(普通) C4 C3 C2 C1

 D5 D4 D3 D2 D1

 E5 E4 E3 E2 E1(最低)


 合計30段階のランク分けがされていて、

 奴隷もおなじランクが使われている。

 ボクは『C4の奴隷』。

 普通よりちょっと下の奴隷って感じ。


 平民が奴隷を持てる数は『一人がせいぜい』なのだけれど、

 頑張って評価されると2人目が支給されるコトもある。

 ……日本でいうところの、車みたいな感覚かな。

 AとかSの階級の平民だと複数の奴隷を所持する感じ。

 Bランクで二人目の奴隷を獲得するのはなかなかのもの。

 ……このオッサン、本当に、仕事だけはマジメにこなしているんだよなぁ……


「新しい奴隷は、貴様の後輩ということになるが、偉そうに先輩風はふかすなよ。あくまでも、貴様らは奴隷。立場は一緒だ」


「……はい、わかっています」



 ★



 午前中は、オッサンの仕事の手伝いや家事をして過ごした。

 ボクは、そこまでどんくさいってワケでもないのだけれど、

 オッサンは『妙なこだわり』が多い人で、細かいマイルールがやたら多い。

 それなのに、ちょっとでもルールに抵触すると、怒りくるって暴力をふるってくる。

 ……本当に厄介。

 どこにでもいるよね、こういうタイプ。

 日本でバイトしてた時の店長も、こんな感じだった。



 ★



 ……こんなクソしんどい生活にも慣れてしまっているのが、人間の怖い所。

 ……新しい奴隷は、このオッサンと生きていけるかな。

 ――そんなことを考えていると、

 新しい奴隷がやってきた。



「は、はじめまして。『蛇の9番』です。……これから、よろしくお願いします」



 ペコっと頭を下げた奴隷。

 年齢は6歳ぐらい。

 かなりの美形だった。

 くりくりの目に、ツヤのある髪。


 奴隷はもっと小汚いものだけれど、

 このルーキーは、いびつなほど綺麗に整っていた。


 その奴隷を見た瞬間、

 オッサンは、めちゃくちゃキモい笑顔を浮かべて、


「よっしゃぁああああ! 当たりだぁああ!!」


 と、両手を掲げてガッツポーズ。

 ウキウキしながら、


「女だな?! お前、女だな?!」


 と、じゅるじゅると舌なめずりしながらそう言うと、

 ルーキーは、


「あ……いえ……よく間違えられますが……性別は男……です」


「なにぃ?」


 そこで、オッサンは、ルーキーのズボンをグイっとひっぱって、


「……ちっ……男か……」


 『ちん〇ん』を確認するやいなや、吐き捨てるようにそう言った。

 ……が、ルーキーの端正な顔をもう一度確認すると、


「まあ……でも……これなら……」


 などとつぶやきつつ、舌なめずり。


「いやぁ、夜が楽しみだ」


 などと、うきうき声で仕事に戻りつつ、ボクに、


「おい、17番、9番に仕事を教えてやれ。……無駄に疲れないよう、優しくなぁ。くくく」


 きっも。

 ボク、ブサイクでよかったぁ。

 顔が良かったら、あのオッサンの相手をしなきゃいけなかったんだもんな……

 きっつ。

 さすがに、そこまでいけば、自殺もんだわ。


 心の中で、ペっと、ツバを吐きながら、

 ボクは、9番に視線を向けて、


「ここから、大変だな、お前」


「え、なにがですか?」


 何もわかっていない純真無垢な目を向けられてしまった。

 同情はするけど、仕方がない。

 奴隷ってのはそういうもんだ。


 自分のことは自分でなんとかしてくれ。

 ボクはボクのことだけで精一杯なんだ。


 と、そこで、ボクの『中』にいる『火の玉』が、ボソっと、


(そのガキ、今夜は、あのキモいオッサンに無茶苦茶されるのか……地獄だな……)


 この火の玉との共同生活も、半日もすれば慣れてきた。

 火の玉は、たまに、こうやってボソっと喋るけど、それ以外は特になにもできないようなので、さほど迷惑だとは思わなかった。


 ちなみに、この火の玉のことは、今後、『モンジン』と呼ぶことになった。

 本当の名前はどうしても思い出せないらしい。

 あくまでも仮の名前。



 ★



 オッサンは、9番がくるまで、ずっと、『魔王がまた来るかもしれない』とビビッて、ビクビク仕事をしていたけど、

 9番の顔を見て以降は、ずっとルンルンで仕事をしていた。

 性欲ってやつは、恐怖を超えていくらしい。

 その気持ちだけは、分からなくもなかった。


 ――そして買い物も食事も終わった夜、


「9番、来い!」


 馬小屋でワラをしき、寝床を用意していた9番を呼び出すオッサン。


 何のことか分かっていない様子で、


「あ、はーい」


 と、呼ばれるがまま、家の中に入っていく9番。


 その背中を見つめながら、

 ボクは、どうしたものかと考える。


 ……9番は、普通にいいやつだった。

 仕事中も、買い物の時も、食事の時も、

 ずっと、ボクのことを気にかけてくれていた。

 ボクの方が先輩だから、色々と遠慮していただけかもしれないが。



「んー……なんだかなぁ……んー」



 義理もすじもクソもないけれど……

 なんというか、

 普通に、このままだと気分が悪かった。



「……くそ……っ」



 だから、

 ボクは、


「ほうっておけばいいのに……関係ないのに……なんで、ボクが……くそ……」


 自分自身の行動に対して、ぶつぶつ不満をこぼしつつ、

 家のドアを力強く開けて、


「ポル様!」


「……あん?」


 『ズボンを脱ごうとしていたオッサンの背中』が目に飛び込んできた。

 キモすぎる。

 ……ちなみに、9番は、いまだ、なにがなんだかわかっていない顔をしている。

 純粋無垢な顔しやがって。

 バカが……


「なにしにきた、クソバカ。貴様は呼んでないだろうが。消えてろ。しばらくどっかいけ」


「ポル様、やめておきましょう。さっき、ちらっと、カルシーン伯爵閣下様が、その辺を通っているのを見かけましてね。もし、そいつが悲鳴をあげたりしたら、色々と厄介なことになるかもしれないでしょ? だから――」


「嘘つけ、バカが」


 そう言いながら、オッサンは、キレた顔で、ボクに近づいてきて、


「お前、もしかして、9番に惚れたか? ははは、まあコイツも奴隷だから、身の程知らずってわけじゃないが……しかし、コイツを好きにしていいのは、おれの特権だ。黙って、独りでマスかいてろ。……お前の年齢じゃ、まだ、たたないか? はははっ」


 そう言いながら、ボクを蹴り飛ばして、

 バタンとドアを閉める。


 頭を打ったボクは、

 痛む部分をおさえながら、


「……くそが……」


 そうつぶやくと、

 それまで、しばらく黙っていたモンジンが、


(残念だったな。あの美少年を寝取られて。かわいそぉ)


「ボクは女の子が好きだよ。おっぱいが好きだ。でっかければでっかいほどいい。……9番には、おっぱいがない。だから、どうでもいい」


(そのわりには、すごい顔になっているが?)


「……」


 そこで、ボクは、一度、天をあおいだ。

 でっかい龍型の魔王が、上空でホバリングしていた。

 ほかにも空では、火を噴いている魔王とか、意味なく発光している魔王もいた。

 どいつもこいつも、バカみたいに膨大な力を持っている。

 それに比べて、ボクのなんて非力なことか。


「ねぇ、モンジン」


(なんすか?)


「魔王を召喚して」


(……オッサンをぶんなぐるためだけに、貴重な5分を使うつもりか? 考え直せよ、17番。あんなガキ、放っておけ。『お前はお前のためだけに、魔王の力を使うべきだ』と、俺なんかは思ったりなんかしちゃったりするなぁ)


「いいから」


(……はいはい、おおせのままに)


 モンジンが、そう言った直後、

 足元に、禍々(まがまが)しい魔方陣が出現した。


 ……モンジンは、ボクの『中』にいるから、顔とかは見えない。

 けれど、『モンジンの表情とか感情』みたいなものが、

 なんだか、手に取るようにわかった。


 ニタニタと、ボクの愚かしさを笑っている……そんな気がする。


(おいでませ、魔王召喚)


 モンジンがそう言うと、

 前の時と同じで、

 呼びかけに応えるように、

 足元の魔方陣が、

 カァアア!!

 と、力強く輝いた。


 そして、出現する。

 ――前と同じ魔王。

 黒いツノが生えた超イケメン細マッチョの成人男性型魔王。

 改めてよく見ると、すさまじい美形ぶりだ。

 同じ人間とは思えない……あ、いや、人間じゃなかった。


 ……前と同じく、

 魔王は、ボクの足元で、かしこまって、丁寧に、片膝をついて、


「偉大なるマイマスターよ、さあ、ご命令を。決死の覚悟で、あなた様の命に従いましょう」


 そこで、ボクは、いったん、モンジンに、


「ねぇ、モンジン……前の時は、なんだか、長ったらしい詠唱をしていたのに……今回は、なかったね。なんで?」


(あれは、気分で言っただけで、特に意味はねぇよ)


「ええ……そうなの? 絶対に必要なプロセスだと思ってた……」


 ため息交じりにそう言ってから、

 ボクは、魔王に意識を向けて、


「君、名前は?」


「ゼラビロスと申します、尊きマイマスター」


「魔王らしい名前だね。……ゼラビロス、命令だ。あの家の中にいる小さい子供には手を出さず、小汚いオッサンだけを――」


 そこで、ボクは、ゴクっと一度だけ唾を飲み込むと、

 決心して、




「……殺してこい」




「拝命いたしました、マイマスター」


 そう言って、ゼラビロスは、一度頭を深く下げてから、

 スタスタと家へ向かっていった。




00000000000000000000

 名前『ポル』

 メインクラス『鍛冶屋』

 サブクラス 『剣士』

 ・称号『平民』


 《レベル》     【25】

 [HP]      【780】

 [MP]      【9】

 「攻撃力」     【20】

 「魔法攻撃力」   【5】

 「防御力」     【18】

 「魔法防御力」   【7】

 「敏捷性」     【11】

 「耐性値」     【9】

 「魔力回復力」   【1】

 「反応速度」    【3】

11111111111111111111




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― 新着の感想 ―
カルシーン、ドゴスとエーパみたいな名前の配下が居そう。 そういやP2センキーに殺された五人は、センエースに蘇生されないように未来蝉原に回収されてましたね。 全ての前提が今を形成している、ヤバすぎィ。 …
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