88話 迷探偵ラストローズ。
88話 迷探偵ラストローズ。
怪しいところはそれなりにあるものの、
決定的な証拠は何も残していないため、
最終的には無罪放免ということで解放された。
いつだってそう。
名探偵ラストローズは、最後が詰め切れない。
★
『25日』の夕方。
ラストローズ辺境伯が恐れていた事件がついに起きる。
貴族であるウルベ男爵が、『魔王使いのアバターラのせいで、植物人間になった』という大事件。
その後の調べで分かることだが、ウルベ男爵は、ヤクザとつるんで、相当にあくどいことをやっていたとの事。
あまりにひどすぎるため、勧誘する気は一切起きず、
アバターラは、ウルベを、シッカリと拷問した上で、
おそらく二度と目覚めぬであろう植物人間状態へと叩き堕とした。
死体を作成して『殺人偽装』する手も考えたが、『ま、いっか』という精神で、テキトーに植物人間化させたのだった。
アバターラは聖人じゃない。
やばすぎるヤツには、徹底的に命の重さを叩き込むし、どうでもいい相手に対しては投げやりになる。
ちなみに、ウルベ男爵の訃報を聞いて、17番は、
『マジで? よっしゃ。あんなゴミ、植物人間にするんじゃなく、普通に殺せば良かったのに』
ウルベには『ぶつかったというだけで腕を切り飛ばされた恨み』があるので、
たとえ、どんな状態になろうと、ラッキーとしか思わない。
――ウルベが、異常なほど、ボコボコの状態で、植物人間にされているのを見て、ラストローズ辺境伯は、
『どうやら、アバターラは、貴族への恨みがかなり強いようだ』
と判定した。
貴族が狙われたことで、『近しい貴族からの風当たり』や『進捗をうかがう声』が目に見えて大きくなる。
誰だって、『自分が当事者かどうか』で『問題に対する取り組み方』が変わるもの。
『よその国で起きている戦争』よりも、『自分の家が狙われた空き巣事件』の方が、当人にとっては、100万倍以上の大事件である。
ラストローズ辺境伯は、魔王事件の責任者という立場ゆえ、ほかの貴族から『責任』を問われた。
使命感と責任感の塊であるラストローズ辺境伯は、
必死に、真摯に、一つ一つの声と向き合っていたが、
いかんせん、彼も、まだ若いので、
最終的には、忍耐の限界に達し、
理不尽に詰めてくる『セミディアベル公爵派閥の中流貴族』に、
『それでは、あなたが私の後任になっていただけるのか?!! 魔王問題の責任者として命を張ってくれるのか!! 対案を出さず、文句しか口にしないのであれば、黙っていただきたい!』
と叫んでしまった。