58話 仮にこれが映画なら……
58話 仮にこれが映画なら……
メンヘラじゃなくても、ゾーンに入れば、ネガティブの底に落ちていく。
それが人間。
脆い生物。
(仮にこれが映画なら……どうせ、画面の向こうの連中は、こう思っているんだ。『お前なんかどうでもいい。見たいのはセンエースだ』……って)
心の毒が止まらない。
『みっともなさ』で溺れそうになっても、
それでも、『溢れた想い』をとどめることができない。
感情という地獄。
『こんなものはなくなればいいのに』と思いながら、毎日を感情で浪費する。
それが人生。
この世で最も愚かでくだらない時間の無駄。
17番の中で、人生の価値が脆くなっていく。
(……ボクも、画面の向こうの連中と同じだ。……本音を言えば、ボクも、ボクに期待なんて、これっぽっちもしていない。これまでだって、センエースの力を拝借して振りかざして浮かれていただけ。『センエースの力』を『ボクの力だと勘違いしている連中』に褒めてもらって舞い上がっていただけ。改造コードを使ってRPGをしていたみたいなものだ。それでラスボスにボロ負けしたんだから、ほんと話にならないハナクソ以下だ。いやぁ……ほんと……どっっんだけボクは無能なんだよ! くそったれぇえええええええ!!!!!)
実際のところ、『17番でなければいけない理由』なんて特になかった。
大事なことは『センエースが中に入っているかどうか』であって、
『器』の質なんか、どうでもよかった。
器が、どれだけのゴミであろうと、センエースが中に入ってさえいれば、
『ここまでの17番と同じ』か『もしくはそれ以上の結果』を出すことは容易に出来た。
(……ボクが『成したこと』なんてナニもない。何度も繰り返したタイムリープだって、記憶は送れていないから、正直、『タイムリーパーとしての疲労の蓄積』みたいなものはまったくない。もしかしたら、どこかにあるのかもしれないけど、感じてはいない。だって記憶がないんだから)
17番の、『タイムリーパーとして認識』は、
『一回だけ、10日前に戻った』という……本当に、それだけ。
たったそれだけで『動けなくなるほど疲れた』という人間は、流石にいないだろう。
(仲間を集めて鍛えて必死に立ち向かったけど、あえなくゼンドートにボコボコにされて、過去に逃げ帰って、センエースに責任を丸投げした。……それがボクの全部。何もできず、ただ全てを投げ出した敗北者。……あるいは、もしかしたら今の、この感情こそが、『タイムリーパーとして積み重ねてきた重荷』なのかもしれないけど……正直、動けなくなるほどじゃない。ぐちぐちと文句を言うだけの余力は残っている)




