41話 奴隷に人権はないでおじゃる。
41話 奴隷に人権はないでおじゃる。
センの瞳がピキッと硬質に揺れる。
捕食を邪魔された獣の視線。
「調子に乗るなよ、3番。てめぇが強いのは認めてやってもいいが、所詮は奴隷。平民様である俺の前では、人権を失ったマヌケ面の生ごみにすぎない」
吐き出された言葉は、毒そのもの。
3番の翠眼がギラリと光り、場の空気を鋭く切り裂く。
「……それ以上やるなら、あたしが相手になるぞ。98番はただの奴隷だが、あたしは上級奴隷だ。あたしを使役している貴族の視点では、ただの平民よりも、あたしの方が価値は上なんだよ」
「俺は、ただの平民じゃねぇ。超エリートだ」
鼻で笑い捨てると同時に、センは98番の手をぱっと放す。
「うぎぎ」
関節を外された98番は膝から崩れ落ち、呻き声をあげた。
肩で息をし、立ち直ろうとするが、体が震えて言うことをきかない。
センは冷ややかに見下ろし、
「邪魔だ、どいてろ」
冷酷に吐き捨て、容赦なく蹴りを叩き込む。
小柄な体が宙に浮き、地面を転がりながらぶつかる音が響いた。
静まり返る世界。
改めて3番に視線を突きつけるセン。
「この超エリートに上等をかましたんだ。……覚悟はできてんだろうな」
低い声の宣告。
訓練場に、張り詰めた静寂が落ちる。
吹き抜ける風が砂埃を巻き上げた。
「なにが超エリートだ。つい数日前まで、ただの奴隷だったゴミが」
3番の声は風に乗って鋭く響いた。
外の光に照らされた翠眼が、まるで刃そのもののようにギラつく。
センは、
「くく……やだねぇ。まったく現実が見えてねぇ」
いやらしく笑う。
足をずらして砂を踏み固め、拳を構える。
その姿は、広大な空の下で、ただひとり不遜に立つ異形の戦士。
「喜ぶがいい。貴様のような下級戦士が、この超エリートに遊んでもらえるんだから」
「拳のキレは認めるが……存在値はゲロ低いゴミだろうが」
言い捨てると同時に、3番はアイテムボックスから短剣を引き抜く。
刃に魔力が纏い、黒紫の輝きが空気を震わせた。
砂を巻き上げながら、刃先がヒュンヒュンと風を裂く。
「連続・追闇飛斬ランク5!!」
空間が裂け、闇の斬撃が飛ぶ。
しかもその軌跡は蛇のようにうねり、標的を逃さぬよう追尾してくる。
火力そのものはさほどでもない。
だが――
「連続・追闇飛斬ランク5!!」
3番は重ね掛けする。
刃の群れは数を増し、夏の街灯に群がる虫の群れのように、センを無限にグジャグジャワチャワチャと取り囲み、とことんまで刻み込もうと襲いかかる。