28話 月光寺システム。
28話 月光寺システム。
センは、自分の手を見つめながら、
(……経験値を獲得したはずなのに……レベルが……上がらねぇ……)
心の中で、そうつぶやくと、
それまでしばらくの間、
センの中で黙っていた『17番』が、
(ボクの方に経験値が流れてきているよ。……どうやら、ボクらは、『副人格の方に経験値が貯蓄される』というシステムになっているらしい)
(ふざけた状態だぜ。ってことは、お前が前に言っていた『副人格(17番)に注がれた経験値を、俺の肉体に反映させるアイテム』を使わないと、いくら経験値を稼いでも無駄ってことだな)
(そういうことだね)
(そのアイテムは、どのダンジョンにある?)
(ガストリンの地下迷宮)
(99番にとってきてもらった5枚の通行証の中に、ガストリンのヤツはなかったな……明日、速攻で取りに行くか)
★
その後も、センは、黙々とモンスターを殺し、階段を下りていく。
『エンカウントする敵の強さ』が、『上級モンスター』、『最上級モンスター』と、どんどん上がっていく。
だが、
「――閃拳――」
どんどん研ぎ澄まされていくセンの拳は、
相手が最上級の鬼だろうと龍だろうと、関係ないといわんばかりに、
バッタバッタとなぎ倒していく。
レベルアップが出来ないので、
存在値はずっと9のままだが、
それでも、存在値100を超える最上級モンスターを殺すことができている。
『存在値120を超えている上振れ個体』が出てくることもあったが、センは問題なくワンパンで沈めることができた。
存在値120と言えば、現時点での『ゼンドート(存在値115)』を越えている。
『上振れ最上級モンスター』を華麗にワンパンしてみせたセン。
その様を見て、『黒猫の99番』が、目をキラキラと輝かせ、
「す……素晴らしい……17番。あなたの拳は、すでに、ゼンドート伯爵を越えている」
「今のあいつの数字を越えているかどうかなんか、どうでもいい。あいつは『成長型』で、今が最低値なんだから」
ボソっとそう言ったセン。
99番は、まるで、スポーツのスター選手でも見るみたいな表情で、
「ゼンドート伯爵はおろか、ラストローズ辺境伯も……セミディアベル公爵ですら……あなたに勝てるとは思えない。あなたは、それだけの力を持っていて……その上で、魔王を召喚することができ、かつ、心身強靱な分身を操ることもできる……いや、それだけじゃない。現状、あなただけが、ダンジョンをクリアすることができる――」