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インターステラル・スーパーノヴァ  作者: コノハ
第一章 《暴れ狂う日々》
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第一章 #2お買い求めのお品は、いかがでしょうか?

世界が、秩序が、理が、僕が、彼女が、

あの子が、あの人が、あいつが、あの空間が、

あの場所が、あの、あそこの、そこの、俺が













嗚呼――――



















                    死んでゆく



















♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦


「でっけぇ...」


 圧巻、まさにその一言に尽きる風貌を兼ね備えた巨大建築物は俺とペルシアの前に姿を見せる。ここがペルシアの用事のある〘マギア・タベルナ〙店の名前からはマギアをタベルナという理由(わけ)のわからない情報しか読み取ることができないのだが、見るからに武具、魔具が売っていそうな看板を掲げている。


「早めに済ませましょ?」


 そう言われ俺は一歩足を踏み入れた。

 その先には―――。


剣、刀、双剣、双刀、盾、大盾、杖...その他、魔具と武具達


「お...おぉ...」


 男のロマンってやつが眼の前にびっしりと並んでいる。キラキラと装備に目を輝かせている間にペルシアさんが目的地であろう奥へと手を引っ張っていく。


「スイはここらへんで待っててね。すぐ戻るから」


「....!お、おう!」



 ペルシアさんに言われたので、''ここら辺''で待つしかない、そう''ここら辺''からは動けない、ということなのでどんな店だ検討もつかないが眼の前の店に入ってみることにする。


「おっじゃまっしまっ....」


ゴウッ!!


「うぉあっ!!」


「おぉこれはこれは、お客さんかな?不審者かな?すまないねぇ気が付かなくて消し炭にするとこだったよ」


 店に入ってそうそう、消し炭になるレベルの攻撃を仕掛けられた。仕掛けた本人はとぼけ顔で接客する老人、あの攻撃と不審者という用語はさておき。


「不審者じゃなく客なんだが....少しいいか?消し炭のことも....まぁ今はいいや、ここ何屋?」


「ふむ、ここは杖とマントと剣と...まぁ色々売ってるところじゃ。一番扱っているのは杖じゃな」


 杖!!ここは入手したいところではあるが、果たして簡単に交渉できるだろうか?スイ選手!いざ参らんっ。


「杖って....どんなのがあr」


「ほれ、やるぞ」


ポイッ....


「うぁっぷ!何してんだっあくまで商品だろうに...大切に扱うべきじゃないのか店主さんよ...」


「その様子じゃと大丈夫そうじゃな。その杖不可壊じゃから気にせんでも元気ピンピンじゃわ。さっきの無礼と6年ぶりにきた最後の客じゃ。欲しいものなんぞくれてやるわい」


「....店仕舞(みせじまい)すんのか」


「そりゃぁなぁ....いくらエルフと血を混じえた種族であるわしらドワーフとて、半永久的には生きれまい。ほれその証拠にさっきの魔法も若い時と比べれば質が落ちたってものじゃ。昔は暴竜(グルザラフ)なんぞいくら倒したことか....まぁなんじゃここで会ったのもなんかの縁だろう。年寄りのガラクタもらっていかぬか?」


 なんかよくわからない単語も出てきてきたが、ここにあるものをくれる。それだけで美味しい話だ。ここは乗っかっておくとしよう。


「ガラクタつってもなぁ...割とすごそうなものばっかだぜ?ほら俺に投げよこした杖なんて不可壊なんだろ?」


「そうじゃよ、いくら魔法を撃っても壊れん。術によるが、それをレイピアとして使う方法もある。なにせ不可壊じゃ、武具などに変化したら相手はそれを取り上げるしか勝ち目はない」


「んぇ...そのレイピアにする呪文って....そこの本とか魔導書っぽいのに書いてないのか?」


「ん....あぁ、あった気がするのぉ。少し待っておれ、読むだけで習得できるものじゃ。探すのに60年かかったこの世に一つの品じゃよ....ぉおあったあった、どうせわしは使わん持ってけドロボー」


「だから、ドロボーでも不審者でもないっての...つっても読めんのかなこの世界の文字...」


「ほれ、見ろこれじゃよこれ、わしが試しに使ってやろうか。――フォルマ・ラピエラ」


 店主の呪文とともに白銀のレイピアが現れる。神々しく顕現する光は店主の手に収まり。


「ゆくぞ」


 そういって店の出入り口のドアノブに手をかける店主。ドアが開かれ、その先にあるのは――


「外...!?」


「わしの庭じゃ。いろいろ試すときにここにきて試すんじゃ。ほれ、目に焼き付けろ?」


 と店主が眼の前の大木にレイピアを振り下ろす。


ピッ


 風を切る音がした。それだけだ、大木にはなんの変化もない。地面も....そのままだ、特に割れていたりなどはしていない。


「何も起きて....ない」


「よく見るがいい、ほれ、その木に触ってみたらどうじゃ?」


 言われるがままなんの変化も起きていない大木にさわ....。


....ベキッベキベキッ


「!?」


 触っただけ、触っただけだ。それなのに、縦に2つに裂けた。


「ふむ、これだけか....やはり日頃の鍛錬は怠るべきではないのぉ」


「これだけって...十分...いや十二分にすごいじゃないか!!」


「お前さんもできるようになるじゃろ、わしが稽古でもつけてやるわい」


 眼の前の老人はかつての''剣鬼''だと言った。鍛冶仕事や炭鉱仕事に長けるドワーフだが彼は違う道を選んだらしい。


「わしは地下に籠もったり、部屋の中で熱気と闘うよりも外の世界で仲間と冒険に出るのが好きでのぉ。

さっきの暴竜といったわ、わしらのパーティーに依頼がよくきて。そこに出向いては仲間に援護されながらあやつらの首を落としておったわ」


 その行いがこの国に認められ、騎士団に入り、騎士長になり、近衛騎士となり、神聖聖騎士団団長にまで登り詰めたらしい、が異世界でも寿命というものは常につき纏う、その体は使い古され戦場では役に立つことなく前線を退きやがて引退、それからはドワーフの適任の職業とも言える鍛冶や炭鉱などに打ち込み、今に至る、と。


「すっごい人じゃん!?舐めた口聞いてすんませんしたっ」


「ははは、今のわしにできることは店仕舞の支度とお主を弟子に取るか悩むことぐらいじゃわ」


 店主はそう言い俺に歩み寄る。


「わしはかつて剣鬼と呼ばれた、元神聖聖騎士団団長ヴァルス・ザ・エグゼイア。わしの意志、尊厳を継ぐものにお主を鍛え上げたい、どうじゃ?」


「...弱いぞ?武道を幼少期に九年したくらいだし、ここまでで弟子に取られるまでの行動をしていないし...」


「何言っておる、わしの気分じゃ、気分。ほれ、気が変わらぬうちに決めるがいいぞ?」


 ここでこんな大チャンス見逃せるわけもない。この世界に来てまだ間もないし、ペルシアさん待ちではあるが、この世界の頂点とも言っていい人になぜか始まりの地で会えたんだ、乗っからないわけがない。


「俺は桜ヶ丘翠だ。ぶっちゃけ武道を幼少期に9年間しただけで、猫にすら勝てない自信があるけど、よろしくお願いしたいです」


「うむ、猫なんぞわしでも勝てまい。あれこそ生物の頂点とも言えるじゃろうな。来世は猫がいいのぉ」


「剣鬼でも勝てないって猫ってまさかの裏ボス!?!?」


「くだらん考えはさておき、わしの一番弟子じゃ。これをやろう」


 ブレスレット?のようなものを店主から受け取る。金で作られたそれの真ん中には色が変化している宝石のようなものが埋め込まれている。


「それを持っている限りここに自由に出入りできるじゃろう。わしは店仕舞をする、となるとこの場所への出入り口は無くなるのじゃよ。わしは独り身であるがゆえここで暮らしていくつもりじゃ。その宝石を噛めばここにくることができるじゃろう。味は人間の言い方で言えばブローディアじゃったのぉ、まぁ不快な味ではあるまい」


「うわ、知らねぇ食べもん出てきた....まぁこれを噛めばいいわけね?帰るときも噛むってことだろ?俺外に人待たせてるからよ、そろそろお暇するぜぇい。師匠」


「時間なんぞ気にせんでいいわい、ここでの1時間は外の時間に換算して1分じゃよ。その分の経験はお主の脳と体に染み付いているからの。ほれ、さっさと出るがいい。杖も忘れずにな、せっかくじゃ杖入れも用意してやる。ほれ、出るぞ」


 杖入れをもらうべくして出入り口から店に帰る、まだまだ触れていない装備もあるが...ペルシアさんとの約束守らないわけには行かない。


「ほぉれ、フリュシエルの皮で作ったやつじゃ、そんな心配した顔せんでも、ここの品は全部弟子であるお主にくれてやるやつばっかじゃ。わしの庭に物置でも作ってとっておいてやるつもりじゃわい」


「ならいっか、どうやって全部運び出そうか試行錯誤寸前だったけど。じゃ、師匠またくるわ。杖入れありがとさん」


「師匠に対する言葉の割にはさっきから軽いがそのくらいがちょうどいいの。またいつでもくるがいい」


 そう言って師匠の店から外へと出る。剣鬼と呼ばれていた理由を聞くことを忘れていたが...ペルシアさんが戻って来るまで待っておこう。



♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦



「ただいま、すぐに終わってよかったわ。スイ行きましょう」


「わかりましたぁ!」


 ペルシアさんがなにを済ませてきたかはわからないが、〘マギア・タベルナ〙から外に出る。

 奥へ連れて行かれるときは見る余裕もなかったが、よく見てみるとどうやら魔具、武具だけが売っているわけではないようだ。お菓子屋にパン屋、書店もあるようだ。ここ周辺の住人が生活の基盤になっているのがわかる。

 入ってきた扉、ガラスの扉から出て大通りへと出ると。


「あっちの方に生きましょうか、今から竜便に乗って私の家へ向かうわ、運賃は持ってなさそうだし今回限りは私から出します」


「竜便.....」


 異世界らしい単語が出てきた、男のロマン、竜、便というと飛行機を思い出す。竜というくらいだ翼で飛ぶのだろう。どんな竜なのだろうか?火を吹くタイプ?水を出すタイプ?エレキ系か!想像が膨らむ、社会人しつつ想像は得意だ、なにせ、異世界ものを読み漁りにあさり尽くしたオタク(廃人)なのだから。


「今回はこの子に乗るわよ」


 おぉ、ついに竜にご対め....

 俺の中の竜という想像が音を立てて崩れていく。眼の前の光景にあんぐりと口が開いてしまう。

 竜といえば、羽が生えたかっこいいでかいトカゲを想像していたのだが、そんな想像をしていた俺を遥か彼方に置いてけぼりにしていく光景が眼の前に広がっている。


「――羊だろ...なぜモコモコの体毛に覆われてんだ...」


 間違っていないか?竜はもっとこう、ゴツゴツしてて、ツノあって、豪火を吹いて、そういう生物なハズ。


「そのハズなんだがなぁぁぁ!?」


「わ、大きな声出さないでよ。びっくりするじゃないの」


「あ、あぁごめん」


 驚かせてしまった謝罪を終えてとりあえず初めての竜便なるものに乗ってみる。後ろの竜便はちゃんと想像通り、皮でできた大きなベルト(耐熱性なのだろう)で竜の背中に少しした家のようなものが固定されている。胴体のモコモコの体毛はいくら耐熱性だといえいい着火剤になる気がする。戦闘には向いてなさそうな見た目だ。ちゃんと翼はあるが、天使のような、ユニコーンのような翼がその背中から生えている。


――お兄さんもうビックリ、こんな期待の裏切られ方初めてよ?


 もはや竜じゃなくキメラに近しい印象のそれは背中に乗っている乗客を目的地へ運ぶべく空へゆっくりと飛び立つ。空の上で雷に打たれたような表情で固まっていた俺に横のペルシアさんが少し説明してくれた。


「竜が気になる?この竜はね、シードラゴンって言って取扱いが1番楽な種なの、温厚で口からは水が出るのよ?」


 シードラゴン、海だろう、少なくとも陸にはいない響きの名称だ。水なんて体毛に吸われて意味なさないだろうに。そしてなにより、可愛い。こっち()()にちゃんと前を見て飛んでほしいものだ。()だけに―――すみません。なんか悲しくなってきたような...


 自爆をしつつ竜便から外を見てみる、この国はかなり農業が栄えているようで周り、地上を見渡す限り正面の山の麓までに広がる畑が多く見える。と、正面の山に向かって飛んでいくのだが、そこにそびえる大きな城にこころなしか向かっている気が...ペルシアさん、コレハドウイウコトカナ?


「ペルシアさん…いや、ペルシア様?なぜお城が…?」


「? 私の家だからよ?それに、なんでその口調なの?」


 なにを当然でしょ?みたいな顔で言ってるのだろうか、エルフで、お城住まい、俺はどんな人物を救ってしまったのだろうか。そう考えている間に白の大きな広場のようなところに降り立つ。


 近くで見ると本当に立派な城だ、あのモフドラ(シードラゴンのことを指す)がラストスパート頑張ってくれたおかげで早くつくことができた。俺たちを降ろした後近くで草をもしゃもしゃしている、ほんと家畜化している。竜としての威厳はどこへ置いてきたのか。


「さて、はいりましょ?私の家に」


「…はい」


♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦


思いもよらぬハチャメチャに強そうな師匠との出会い。そして、衝撃的なまでの竜便を引く竜の正体。

なにより、大きいお城に住まうというペルシアさん。


次回はなんとモフドラが大活躍したりしなかったりしてみたり?


次話:訪問と膳

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