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7話「すべてが逆転した」

 あれから少しして、アイスライトが他者に命令して放火しようとした件も明るみに出た。

 それによって彼の印象はさらに悪化。それこそ、王家をもってしても押さえ込めないほどの批判が民より湧き出てしまうこととなる。


 そしてやがて、現国王はアイスライトとの縁を切ることを決意。


 それは、彼以外の王族を守るための決定だった。


 ――そしてアイスライトは民の意思によって拘束されることとなる。


 そんな中、私には、あの時彼が主張していたガーネット殺しが嘘であったと話す機会を得られた。


 今はすべてが逆転した。

 もうアイスライトに力はそれほどなく、一方で私には多くいる被害者のうちの一人であるという剣がある。


「アイスライトさんは私がガーネットさんを殺したのだと言いましたが、それは真っ赤な嘘です。むしろ私が殺されかけたのです」


 ようやくこの時が来た。

 少しでも多くの人に私の言葉が届いてくれれば良いのだが。


「あの日、アイスライトさんとガーネットさんは私を呼び出し、婚約破棄したうえで崖から突き落として亡き者としようとしました。しかしその作戦は失敗。そしてガーネットさんはうっかり自ら転落していってしまったのです」


 ずっと、ずっと、この時を待っていた。


「ガーネットさんの死は自滅です。しかしアイスライトさんは私にすべての罪をなすりつけたのです。あのままだったら処刑されていてもおかしくはなかった……何とか助かりましたが。しかし、アイスライトさんは、そういう人間なのです」


 話せば、拍手が飛んでくる。


「よく話してくれた!」

「大変だったな!」


 かけられた声に、涙が溢れそうになる。

 でもそれはこらえた。

 人前で涙するのは私としてはあまり良くないことだと思ったから。


 ――また、後日、侍女も。


「エリカ様はやはりはめられただけだったのですね」

「そんなことだろうと思っていました、貴女がガーネットを殺めるなんて……そんなことないだろうと思って、おかしいなと感じていたのです」


 数人で私のところへやって来て優しい声をかけてくれた。


「ああ、エリカ様……死刑にならず本当に良かった……」

「貴女って優しい方ですものね、わたしたちは知っていますよ。共に過ごしていた日々で貴女が心なかったことなんてなかったですもの」


 ……そうだ、思えば彼女たちは最初から味方してくれていたのだった。


「どうか、どうか、これからもお元気で。エリカ様」

「そうです! 負けてはなりません! わたしたちはずっと味方ですから」

「エリカ様なら絶対お幸せになることでしょう、確信があります」


 ありがとう。


 本当に、それだけだ。


 侍女たちはいつだって私を尊重し大切に扱ってくれた。たとえ当事者であるアイスライトは私を雑に扱っていても。それでも彼女たちは私を一人の人として見てくれていたし、どんな時も寄り添って、優しい心を持って関わってくれていた。


 もちろん今だってそう。

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