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4話「作戦成功、からの」

 ロゼットの作戦は成功した。

 国民の目は今やアイスライトの悪行ばかりに向いている。


「ねえねえ聞いた? アイスライト様の話」

「ええ、聞いたわ。恐ろしいわね……特にあの監禁されていた人の話、怖すぎて途中から読めなかったわ」


 町を歩けば必ず誰かがそれに関する話をしているくらいだ。


「子どもが読もうとしてたから新聞没収した!」

「そうよ、そうするしかないわよね」

「あれが事実なら本当に怖いわよね、そんな人が王子で将来の国王だなんて」

「あり得ないわよね……怖すぎ、権力を手にしたら何やり出すか分からないわ……」


 王家は今、火消しに大忙し。


 そんなある日。


「見つけたぞ、エリカ」

「アイスライト!?」


 道を歩いていたら一番会いたくない人に出会ってしまった。


「いきなり呼び捨てか、相変わらずくずだな」

「……人殺し扱いしておいてそのようなことを仰るなんて、反省の色が見えませんね」

「はぁ!? ふざけるな!! ――と言いたいところだが、今日は広い心を持って許してやろう。感謝しろ」


 はぁ? 何それ? と言いたい。


「それより、頼みがある」

「お断りします」

「聞け!」

「……何でしょうか」

「今火消しが忙しい。大変なんだ、王家も。暇なお前とは違ってな。それで、協力してほしいんだ。火消しに」


 不快感しかなかった私は「お断りします」と言って彼の前から去ろうと歩き出す。目指すはいつも住んでいる建物。あそこへ行けば誰かいるだろう、きっと助けてくれる。そう思うからこそ、そこを目指した。


 理不尽かつ何でもありなアイスライトと対峙するのに一対一では不利だ。


 だがアイスライトはどこまでもついてくる。


 身体を密着させるようにしてついてきて「お前は『伝説の女神』の生まれ変わりなのだろう? ならこの国のために働いてくれるよな」とか「戻ってきてくれるよな? 頼む、この前のことは謝るからさ」とか言ってくるのだ。


 婚約破棄して、殺そうとして、そのくせ自滅したガーネットを殺したのが私であるかのように言って。


 そんなことをしておいて今さら「戻ってきて」なんて、あり得ない。


 どうかしているわ。


 ……そう思わずにはいられない。


 ――そしてやがて建物に到着。


「おい! いい加減止まってくれよ! 話を聞け!」

「もうついてこないでください」

「何だよそれ! 元婚約者だろ!? もっと親身になって話を聞いてくれよ!」


 あまりにしつこくて。


「嫌なんです!!」


 思わず手を払ってしまった。


 アイスライトの顔つきが怒りに染まりきる。


「おっま……いい加減にしろよ!! 調子に乗りやがって!!」


 ――刹那。


「何しているのですか」


 誰かが声をかけてきた。


 ……否、誰かではなく、ロゼットだ。


「ああ? 何なんだお前、こいつの新しい男か?」

「……そうだと言ったら?」

「べつにどうもしないが、この女がその程度のやつだったのだなと思うだけだ」

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