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2話「転機」

 戸惑う私を突き飛ばそうとするガーネット――しかし私はその突き飛ばしを間一髪のところで回避、すると彼女は勢いを押さえ込めずそのまま崖の方へと進んでいってしまう。


「え!? え、えっ……い、いやっ……いやああああああ!!」


 勢いを止められなくなったガーネットはそのまま崖の方まで進んでいって――遥か下、海面へと転落した。


「いやあああ! 助けっ、助け、助けてえええええ! 死にたくないわあああああああ!」

「ガーネット!!」

「アイスライト様ぁ! 助けてください! お願いしますうううう!」


 空に響き渡る甲高い悲鳴。

 けれどもその声は私たち以外誰にも届かない。


 それはそうだろう、今私たちがここにいることを知っている人なんてほとんどいないのだから。


 直後、青い顔をしたアイスライトがこちらを親の仇のように睨んで「お、お前! なんてことを!」と言い放ってきた。さらに「人殺し! 悪魔!」と心ない言葉を続けられる。


 まるで私が彼女を突き落したかのような言われようだ。


 だが彼女が転落したのは私が何かしたせいではない。


 すべての原因は、彼女が私を突き落そうとしたこと――それ以上でも以下でもないのだ。


 けれども世とは理不尽なもので。

 私はアイスライトに「我が愛する人を殺した!」と言われ、婚約破棄のみならず、投獄されることとなってしまったのだった。


「エリカ様がガーネットを殺められたなんて……本当なのかしら」

「嘘よきっと」

「逆ならありそうだけれどね」


 侍女たちは私の味方をしてくれていたけれど、その程度では王子の主張には勝てなかった。


 ――そうして投獄された私の前に。


「貴女がエリカ・アルフィナさんですね」


 一人の男性が現れる。


「はい。……でも、今はもうアルフィナですらありません」

「どういうことです?」

「だって私……育ての親から見放されました。こんなことになるなら引き取らなかったら良かったとまで言われて……」


 そう、これは事実なのだ。


 私が牢に送られることとなった時、育ての親であるアルフィナ家の夫婦から心ないことを言われてしまった。


 そして「もう貴女を子とは思わない」とまで言われてしまったのだ。


 ……味方がいないって辛い。


「そうでしたか。それは……災難でしたね」


 黒髪の彼はそっと手を差し出してくれる。


「復讐、しませんか」


 汚い場所にいつまでもじっとしているのは嫌だ。

 でもどうしようもないからここにいた。

 大人しくして、抵抗しないようにして、そうやって耐え続けてきた。


 でも、もし、外の世界へ行けるのなら――。


「できますか? そんなこと」

「ええ。僕は元々そのつもりで、誰かパートナーを探していたのです」

「復讐のパートナーを、ですか」

「そうです。一人より二人の方がきっと素晴らしい復讐となるでしょうから」

「な、なるほど……そうだったのですね……」


 私は黒い彼の手を取った。


 このまま終わるなんて嫌だったから。


「僕はロゼットといいます」

「エリカです」

「ふふ、それはもう存じ上げておりますよ」

「あっ。……そうでしたね」

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