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10話「今、歩き出す」

「これからもまた一緒に、ですか」


 ロゼットの瞳はじっとこちらを捉えている。

 その目から放たれる視線はどこまでも真っ直ぐで、凛としたものだった。


「駄目でしょうか?」

「あ……」

「駄目なら駄目でも構いませんよ、復讐はもう済んだのですから貴女にも自由になる権利はあります」


 自由になる権利、か。

 私にあるのだろうかそんなもの。


 だって私、結局、何もできなかった。


 ロゼットに力を貸してもらってアイスライトを痛い目に遭わせられただけ――復讐が成功したのだってそのほとんどがロゼットの策によるもので、私がしたことなんてほとんどない。


 なのに自由になる権利だなんて。


 少しおかしいと思う。


 それに、そもそも、私がロゼットの近くにいるのは罰なんかではない。


「どうでしょうか」

「……あの、私、私も……これからも貴方の近くにいたいです」


 ――そうよ、私は自分の意思で彼の傍にいたのよ。


「ロゼットさんが嫌でないのなら、ぜひ、これからも共に……お願いします」


 真っ直ぐな言葉を発するのは少し照れることだ。

 でもここで弱々しくなってはいけない、そう思って――勇気を振り絞り最後まで言った。


「良いのですか?」

「はい」

「ではこれからも、共に」

「……はい!」


 私はその時ようやく彼を見つめた。

 視線が重なる。

 彼は今もこちらが恥ずかしくなるくらい真っ直ぐにこちらを見ていて、目を逸らしたくなるけれど我慢。


「私も、関係をここで終わりにはしたくありません」


 恥ずかしくても、言わなくては。


 大切なことだからこそ。


「それは、良かった」


 数秒間があって、ロゼットは微かに頬の力を抜いた。


「ではこれからもよろしくお願いします」


 彼はそう言って片手を差し出す。


「よろしくお願いします……!」


 その手を握り返せば、一気に風が吹き抜けていった。


「ではこれからもよろしくお祝いとして、今日はハンバーグを作ります」

「えっ、いいんですか」

「ええもちろん」

「ロゼットさんのハンバーグ美味しいですよね! 好きなんです、私」

「それはそれは。気に入っていただけているなら良かった」


 出会いは復讐目的だった。

 私たちはあくまで同じ目的を持つ二人でしかなかったのだ。


 でも今は――それとは少し変わっている。


「まぁ……ロゼットさんの料理はどれも美味しいんですけどね」

「ありがたいお言葉」

「私なんて料理全然できないので……尊敬します」

「料理をするような環境になかったからでしょう? 良いのですよ、そういう人も世にはいるものなのです」


 復讐という目的がなくても、今はこうして共に手を取り合えるのだ。


 絶望も闇も越えて。


 ――今、歩き出す。



◆終わり◆

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