35 第四皇女ともふもふ会。
「ああ、そうだわ。言い忘れていたけれど、明日のお昼過ぎに今度は中庭でお茶会をすることになったのよ」
「明日ですか? 今度は何方とです?」
「ファラーラ王妃様と、第一王子妃のエリーザ様と、ハイド公爵家のプリシラ様と、お嬢様のマリアンヌ様。それから、私の護衛騎士のアリシア様よ」
「殆ど今日と同じメンバーですね?」
「まあ、そうね。ああ、それから。アリシア様がお子様たちをお連れになるそうよ」
「アリシア様のお子様たちと言うと……」
「もうすぐ3歳になる双子ちゃんですって」
「まあ、どうしてアリシア様はそんな小さなお子様をお茶会にお連れになられるのです?」
「セレストをお子様たちに合わせたいのですって」
「「セレストを?」」
でもね。セレストに会いたいと最初に言い出したのは、実は、アリシア様ではないのよ。
私が離宮で、飛竜騎士団第7分隊の皆様を招いてお茶会をしたことを覚えているかしら?
『ローラの料理で公爵ご夫妻を唸らせて、離宮の料理人たちを納得させよう大作戦!』よ。
あの時、新鮮な魚介類をルルーファ王国の港から飛竜で運んで下さった、第7分隊の “スピードスター” ことアーレン・ガンズ様が、私の “従魔” のセレストを見たいと言われたのよね。
それで、ジネットとエルマがセレストを連れて来てくれたのだけれど……。
どういったルートでその話をお知りになったのか分からないのだけれど、今日のお茶会の席で、ハイド公爵家のマリアンヌ様が突然『ルイーズ様が飼われていらっしゃるルーナリオンを見せて頂くことはできますか?』と私に向かって尋ねられて……。
マリアンヌ様は、セレストのことを “シルバーリオネル” ではなく “ルーナリオン” と言ったのよ。
確か、セレストが聖獣だってことは秘匿事項だった筈よね?
第7分隊の方たちもそうだけれど、どうしてこうも聖獣のことを知っている方が、次から次へと出てくるのかしら?
「それでしたら、マリアンヌ様のお父様のヨーゼフ・フォン・ハイド公爵閣下が、飛竜騎士団本部の副団長をされているからだと思いますわ」
「えっ。副団長? そうだったの?」
「はい。ルイーズ様はご存知ではありませんでしたか?」
「いいえ、全然知らなかったわ」
「まあ、ご存知ないのも無理はありませんね。ハイド公爵閣下は、数年前、任務中に事故に遭われて……。それ以来、飛竜には騎乗はされてないようですから」
情報通のエルマの話によれば、ヨーゼフ・フォン・ハイド公爵は若い頃から冒険者としても名を轟かせていたし、飛竜騎士としても大活躍をするような、凡そ王弟とは思えない行動力の塊のような人物だったらしいの。
詳しくは公表されていないようだけれど、公爵は数年前、任務中に事故に遭われて大怪我を負ったせいで竜騎士は引退されたそうよ。
それでも今でも副団長として、騎士団の運営には関わっていらっしゃるみたいね。
「つまり、第7騎士団の行動はハイド公爵には筒抜けと言うことかしら?」
「おそらく、そうなのではないでしょうか」
マリアンヌ様がお茶会の席でポロっと聖獣の話をしてしまったせいで、あのお茶会に同席していた方たちには聖獣の存在を知られてしまったわけで……。
まあ、マリアンヌ様はまだ成人前の14歳ですし、お茶会に参加していたメンバーがメンバーだったので、特に大きな問題にはならないとは思うわ。
と言うのも、おそらくあの場で聖獣のことを “シルバーリオネル” だと思っていたのは、私の護衛騎士のアリシア・ハッセン様とフランシーヌ・ミーレン様のお2人だけだったみたいだもの。
だってそうでしょう?
特にあの場では言及はされていなかったけれど、シンシア・ファッジャー様だって飛竜騎士団の関係者よ。旦那様は、それこそ、ザルツリンド王国飛竜騎士団本部の団長なのだから。
あくまでも無言を貫かれておいでだったけれど、知らなかったってことは……ないわよね。
「まあ、今日のお茶会の参加者は全員、言ってみれば、マキシミリアン陛下とファラーラ王妃様とは非常に近しい関係に位置する方々ですからね。ルイーズ様が聖獣と共に居られると知ったとしても、特に問題のない方ばかりってことなのだと思います」
「ふぅぅん。そうなのね」
◇ ◇ ◇
「もふでしゅ」
「もふでしゅね」
「もふもふですわー♪」
「ぎゃぅぅぅ」
さっきから、もうずーーーっとこんな状態がずっと続いているのよ。
ふふふ。これでは “お茶会” ではなくて、最早 “もふもふ会” だわね。
王宮の中庭にあるガゼボで始まったお茶会は、前日に顔を合わせたばかりのメンバーなこともあって、挨拶もそこそこに、あっと言う間に打ち解けた雰囲気になったわ。
今日のお茶会の趣旨は、ハイド公爵家のマリアンヌ様(14歳)とハッセン侯爵家の双子ちゃん(もうすぐ3歳)にセレストを合わせること。
双子ちゃんがお茶会の雰囲気に慣れた頃に、今回もジネットとエルマがセレストを連れて来てくれたの。今回は手綱を絶対に離さないように、細心の注意を払ってくれていたわよ。
「以前見かけた時より、聖獣様が更に大きくなっているように思えるには……私の気のせいでしょうか?」
我が子2人とハイド公爵家のマリアンヌ様が聖獣のもふもふに埋まっている姿を見つめながら、お母様であるアリシア・ハッセン様が私に尋ねます。
そうよね。そう感じると、私も思うわ。
だって、セレストは今もまだ成長を続けていて、この間まで『狼と同じくらい』と言われていたのが、更に大きくなって、今は『ライオンくらい』の大きさだそうよ。
ライオンって言うのは、私たちが今いるカリス大陸とは別の大陸に暮らす大型の肉食動物らしくて、金色の毛皮を持つ美しい生き物なのだと本に書いてあったわ。
大人の雄には、長い立髪と呼ばれるものがあるのですって。
今、双子ちゃんたちが引っ張っているのが、まさにその立髪に似ている気がするのだけれど……。つまり、もうすぐセレストも成獣になると言うことかしら?
「ルカ様、ニコ様。そんな風に引っ張っては駄目ですわ! 痛いと可哀想ですもの」
「いちゃいでしゅ?」
「いちゃいいちゃい。めよ!」
「ぎゃぅ」
ルカ様ことルキウス君と、ニコ様ことニコラス君はもうすぐ3歳。
彼らの小さな手で引っ張った程度では、セレストは痛くも痒くもないみたいだけれど、どうせなら引っ張るよりは撫でてあげる方が私も良いと思うわ。
「セレストはですね、撫で撫でされるのがとってもお好きなのですよ。ほら、こうすると気持ち良い! ってとっても喜びますよ」
「なでなででしゅ?」
「はい。こんな風に撫でてあげて下さい。優しく、そっとですよ」
一応安全確保のために、私の次にセレストが心を許しているジネットが、しっかりセレストの手綱を握って側で見守っていてくれているので安心よ。
「きもちいでしゅね!」
「ぎゃぅぅぅぅ」
「ぐふふふふ」
普段から小さくて可愛いものが大好きだと宣言しているエルマは、セレストに抱きついているお子様たちを、今にも蕩けそうな笑顔を浮かべながら見守っているわ。
なんとなく、ちょっと危ない人に見えなくもないけれど……。まあ、エルマだし、側にジネットも居るし、大丈夫、よね?
「ご機嫌麗しゅう、王妃様。きゃあ。これはいったいどういうこと! ここは王宮の中庭よね? どうしてこの場所に、そんな危険な魔獣が居るのよ!」
その時。どこかで聞き覚えのある、思わず耳を塞ぎたくなるような悲鳴と金切り声が、突然中庭に響き渡ったわ。
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